『結婚不要社会』(朝日新聞出版、山田昌弘著)を読みました。

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 タイトルに掲げた書籍、『結婚不要社会』を読みました。私が取り扱っている業務である、離婚や不倫に関わる部分も多かったので、読んだ感想や、考えたことを記事にしたいと思います。

 以下は、私のざっくりした読みと理解なので、誤読などあれば訂正いたします。

著者について

 山田昌弘氏は、家族社会学などを専門とする社会学者です。『希望格差社会』など、一般向けの有名な本も多いので、この分野の本をよく読む方であれば、ご存じの方も多いと思います。

内容

近代的結婚

 同書では、近代的結婚の特徴を、経済的共同体と心理的共同体という2つの要素からとらえています。

 お金と、「承認」≒自分の居場所(ややざっくり私の理解でいうと、恋愛や、家族に求められているという感覚)です。

 結婚は、愛情という要素(恋愛結婚)と生活の向上(生活を満たすもの)という要素の2つがあり、これらを満たすものとしてとらえられるようになった、そして、それが社会に不可欠なもの(大人になれば結婚するのが当然)とされたわけです。

 そして、高度成長の時代には、これら2つを結びついた結婚を供給することが可能でした。

近代的結婚が難しくなった

 しかし、社会の変化により、「好きな相手が経済的にふさわしい相手とは限らない」、「経済的にふさわしい相手を好きになるとは限らない」という2つの矛盾が、顕在化するようになり、近代的結婚の2つの要素の結びつきが揺らいできます。

 その結果、結婚が困難になってきた、というわけです。

 同書は、日本の現状について、上記に関わらず、近代的結婚に固執することから、欧米とは違い、結婚が不要な社会ではなく、結婚が困難な社会になっている、と述べています。

感想

全体として

  この種の分野の本は、著者の主張(古い言葉でいうと「イデオロギー」と称されるもの)が全面に出てしまったり、社会学の理論が前置きなく用いられいたりするなど、読みづらい本が多い印象で、そのために読むのをためらう方もいるかもしれません。

 しかし、この本は、調査に基づいた内容を基礎にして書かれており、また近代社会における家族の意義などについても丁寧にわかりやすく中立的に説明がされており、非常に読みやすいです。

 結婚を含む家族論の基本を少し知りたいという方にもお勧めできる本だと思います。

離婚や不倫といった、私の業務との関係

離婚との関係

 女性の方の離婚のご相談では、上記のうち、経済の面に焦点を当てた話が話題にのぼることが多いといえます。

 これに対して、男性の方の離婚のご相談では、「なぜ離婚といわれたのかわからない」、逆に、「これ以上一緒にいられないと思った」など、心理的な面(「承認」)に関する話が多い印象です。

 近代的結婚の特徴として指摘する2つの要素も、男性側と女性側で重視する面が食い違っているのかもしれません。

不倫との関係

 不倫を取り扱っていて感じることは、単に遊びだった、という不倫ではなく、将来にわたって不倫相手と生活したいと考えている不倫の割合が、一定数あることです。

 結婚に対する考え方の変化や、経済的共同体という面が弱まったことなどから、このような変化が生じているのでは、という気がします。

 私自身は、不倫を肯定するでも否定するでもありませんが、現代社会における結婚観を前提とした不倫の意味付けがどういったものかということは、非常に興味深く見ています。

まとめ

 山田昌弘氏の著書は久しぶりに読みましたが、社会学の理論や近代家族についてわかりやすく整理されており、現在の家族論について知ることができた、非常に勉強になる本でした。