法学を学ぶ方に向けた、民事裁判の傍聴の見どころ

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 先日、訴訟で地方裁判所に出廷したところ、たぶん大学生ぐらいと思われる方が、裁判の傍聴にいらっしゃっていました。

 私も、法学部生や法科大学院生のとき、何度か裁判傍聴をしたことがあり、ふと懐かしさを感じました。

 そこで、この記事では、法学を学んでいる方向けに、裁判傍聴でこんなところに注目すると面白い、参考になるかも、という点を、ご紹介します。

 私は、現在、刑事裁判を行っていないので、以下はすべて民事裁判のこととなります。

尋問期日の傍聴

 なんといっても、傍聴するなら証人尋問、当事者尋問が面白いですし、裁判の雰囲気を味わうには一番とはいえるでしょう。

 冒頭で手続きを多少行い、その後に、宣誓をして、尋問をするという流れは、一般の方がイメージする裁判に近い部分があります。

 尋問の内容は、証拠を見ないと、なぜその質問を深堀しているのか、ある部分を集中的に聞いているのかわかりづらいと思いますが、見ているだけでわかる部分で、尋問を傍聴する際の見どころをご説明します。

異議

 裁判で、一番イメージしやすいのは、「異議あり」、つまり異議だと思います。

 実際には、証人尋問で出される「異議」のほとんど、特に相手方の尋問に対する「異議」は、民事訴訟法に規定された「異議」(民訴規則117条1項)ではなく、裁判官に対する申立(民訴規則115条3項)であることは、民事訴訟法をよく学んでいる方であれば聞いたことがあるかもしれません。

 特に民事訴訟の尋問では、異議が出されることはそこまで多くない印象です。

 私は、主尋問の誘導尋問が非常に気になるタイプ(民事訴訟では、誘導尋問は原則禁止されており、私は、主尋問で争点に関連する部分で誘導尋問を多用する尋問については、正当な理由がないと解釈し、異議を出しています)で毎回異議を出していますが、相手方から異議が出されることはそれほど多くない印象です。

 また、行き過ぎた誘導尋問や、意見を求める尋問がされることもしばしばあり、適切な異議は、証人(当事者)を守るためにも必要と考えています。

 私が尋問を終えて、法廷の外で一休みしている際、傍聴にいらっしゃっていた(と思われる)方々が、「異議が見れてよかった」旨の感想を述べていたこともあり、実際民事訴訟で、厳しい異議を出し、裁判官の真摯な判断を求めることはそう多くないのかもしれません。

 いずれにせよ、異議が出て、相手方も異議に対して反論し、裁判官の判断を仰ぐシーンは、傍聴における見どころの一つといえそうです。

速記

 尋問が終わると、尋問を書き起こした調書が作られますが、裁判所や尋問によっては、速記官が入ることがあります。

 速記官の入る証人尋問は、レアですので、見られたらラッキーです。速記官は、速記タイプライターを利用して速記録を作成しています。

 裁判傍聴という視点でみれば、速記官の速記の姿を併せて傍聴でき、少し得したと感じられるかと思います。

証拠を示す

 証拠等を示して尋問をすることは、しばしばありますが、民事裁判、証拠を示すには、裁判長の許可が必要とされています(民訴規則116条1項)。なので、本当は、「甲●号証を示します」といって、スタスタと証人席へ歩み寄り、証拠の提示をすることは民訴規則違反です。

 ただ、いちいち裁判長の許可を求める実務慣行にもなっていないようで、少なくとも証拠として提出されているものについては、単に「甲●号証を示します」といえば、問題ない運用のようです(細かい裁判官もいらっしゃるかもしれません)。私は、その場の雰囲気によっては、「示しますがよろしいですか?」と裁判長に聞くこともあります。

 きちんと考えて尋問をする場合、証拠を示すのには、理由があるはずです。実際は、たいした理由なく示していると思われるケースや、何が聞きたいのかわからないと感じられるケースもあります。

 また、弁護士によっては、適切に証拠の提示がされているか確認するため、相手方弁護士が証言台に近づいて提示する際、自分も立ち上がり証言台に近づくこともあります。

 このような、弁護士の対応も、見どころといえるかもしれません。

弁論期日(初回)

 初回の弁論は、見どころはほとんどありません。

 ほとんどのケースで、原告側弁護士のみが出廷し、訴状を陳述し、答弁書を擬制陳述し、次回期日が決まるだけです。

 それでも、初回弁論期日を見に行きたい!と考えている方がいらっしゃるのであれば、簡易裁判所の初回期日をお勧めします。

 簡易裁判所の裁判は、事件自体は金融機関からの貸金返還請求訴訟などの単純な事件が多く、大量の件数を同一時間にこなします。そのため、傍聴席では、順番待ちの弁護士らが待機して順番待ちをしている光景が見られます。

 また、被告本人が出頭し、その場でやり取りが生じる事もしばしばあり、地方裁判所の初回期日とは違った独特の雰囲気があります。

 一度に多くの事件を見られることも、法学の勉強といった視点では有益だと思います。

弁論期日(2回目以降)

 2回目以降の弁論期日では、書面の陳述、証拠の取り調べ、争点整理等が進められます。

 提出されている書面を見ていないと、実際の内容はわからないと思いますが、それでも、書面をもとに裁判している雰囲気は、感じられるのではないでしょうか。

 証拠の取り調べ

 証拠の提出は、実際にどのような運用になっているのか、単に教科書等で勉強しているだけではイメージはつかみづらく、見てみるのが一番早いと思います。

 ほとんどのケースで、証拠は写しを事前に裁判所及び相手方へ送付しておき、当日、原本を裁判所で確認し、写しと相違がないかチェックします。

 現代では、コピー機を利用するので、原本と相違があるということはほとんどありませんが、原本の押印をきちんと確認したり、写しでは消えてしまった薄い記載があれば、それが鮮明に映るように写しの再提出を求めるなどがあり得ます。

 ちゃんと確認する証拠もあれば、ざざっとみて終わり、という書証もあります。登記簿謄本や戸籍など、およそ不正が想定できない証拠であれば、そもそも写しで提出してしまったり、原本であっても弁護士はわざわざ確認しない、ということもしばしば行われています。

 争点整理

 提出された書面について、裁判官が質問したり、又は相手方弁護士にこの点を中心に反論してほしいと求めるなど、裁判を進めるにあたって裁判官が各種進行の整理を行ったり、又は弁護士の方から裁判の進め方について意見を述べることもあります。

 これらは、裁判において双方の主張を整理し、争点を明確にし、これについて適切な認否反論を促すことで、訴訟を迅速かつ有意義に進めることにつながっています。

 私は、「こうしたい!」という気持ちが強いタイプなので、意見を求められると、何かしら進行について意見を述べることが多いです。

 傍聴では、弁護士や裁判官のやり取りを通じ、単に書面の応酬だけではなく、その間にどのような争点整理がされているのかを垣間見ることができるかと思います。

弁護士は傍聴席が気になるか?

 弁護士によるのかもしれませんが、私は、傍聴席はあまり気になりません。

 ただ、裁判が始まるまで、どのような方が傍聴しているのかを想像しています。

 裁判で傍聴席に座っている方は、大きく3つのパターンで、

  • 自分の番の裁判を待っている弁護士
  • 裁判の関係者(本人やその知人、企業がらみの裁判であれば企業の担当者)
  • その他裁判に興味がある傍聴人

 (私は、学生の頃、就活の合間にスーツで裁判傍聴をしたところ、たまたま企業関係の裁判で、裁判の関係者に間違えられて、書記官から声をかけられた思い出があります。)

 この中で、気になるのは、裁判の関係者、特に相手方の関係者が来ている様子が伺えると、色々と思惑をめぐらすことがあります。それ以外は、あまり気になりませんし、裁判が始まれば、全く目に入りません(個人差があると思いますが)。

まとめ

 傍聴の見どころについて、私が思うところをまとめてみました。

 裁判は公開されておりますので、特に法学を少しでも学んでいる、興味のある方は、一度傍聴をされてみてはいかがでしょうか。