『アタラクシア』金原ひとみ著 不倫が書かれた小説。

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 『アタラクシア』(金原ひとみ著)を読みました。金原ひとみ氏の小説を読むのは、『蛇にピアス』以来の気がします。どんな作風だったかもあまり覚えておらず、新鮮な気持ちで読みました。

 読んだきっかけは、不倫が書かれた小説だったから、です。たまたま目に留まったので、kindle版を購入しました。

 描かれているのは、登場人物それぞれの思いのすれ違いや、夫婦のわかり合えなさや、その中での登場人物の人付き合いです。

 私が不倫や離婚の事件を扱う中で、男性側、女性側それぞれから依頼を受けて話を聞いたり、相手の話や書面を読んで感じることも、この分かり合えなさです。

 双方がわかり合えないを繰り返しながら、最終的に離婚という決断をする。お互いにお互いなりの努力を(少なくとも当初は)重ねていたのに、すれ違いは広がるばかりで、いつか努力しなくなる、というのが、私が取り扱う事件の背景にある、そんなことを考えながら読み進めていました。

 それぞれの人物の心理をきれいにかき分けてあり、夫婦のすれ違いが非常にわかりやすく表現されています。

 私は、ご依頼を受けるにあたり、お客様の考えを、その価値観から含めて理解することを心がけます。

 最近は、おおむね理解できていると思っていますが、この小説は、より深いレベルでそれぞれの心情をとらえていると感じます。私も、より深くお客様の考えを理解したいという気持ちにさせられます。

 結婚されている方や、そうでない方でも、この小説の登場人物のどれかに当てはまる気持ちで読めるのではないかと思います。

 久しぶりに真剣に小説を読みましたが、面白かったです。