反対尋問が不安?反対尋問について私が思うところをご説明します。

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 最近、民事の証人尋問を立て続けに行うことがありました。

 そこで、本稿では、民事の証人尋問のうち、特に反対尋問について、私が個人的に感じているところをご説明します。

 実際に証人として反対尋問を受ける方を想定した記事となりますので、ご了承ください。

 また、以下に記載することは、全て私の個人的な見解であり、実際の証人尋問については、ご依頼している先生を信頼して臨まれるのが一番いい結果となると思います。

 なお、以下の記事では、民事の証人尋問を念頭に記載しております。また、一般の方にわかりやすくするため、証人尋問と当事者尋問を敢えて区別せず、あわせて「証人尋問」と呼び、証人と当事者をあわせて「証人」と呼びます。

反対尋問が不安?

 証人として出廷しお話しいただく場合に、証人が心配される部分は、ご自身に対する反対尋問です。ご自身への主尋問は、ご依頼している弁護士と十分に打ち合わせをして臨むことができますし、相手に対する反対尋問は、基本的にご依頼している弁護士が準備するため、当日証人自身に準備いただくことは基本的にありません。

 これに対して、当日、ご自身に対してされる反対尋問は、事前にご依頼している弁護士と打ち合わせをして想定するとはいえ、何を聞かれるのかわからず、厳しく詰問されるのではないかと不安を感じられる方が多くいらっしゃいます。

 実際には、そのような場面に出くわすことは多くありません。以下では、その理由をご説明します。

反対尋問のイメージ

 一般の方のイメージする反対尋問がどのようなものか、はっきりしない部分がありますが、刑事ドラマで犯人を追い詰めるシーンや、弁護士ドラマでの法廷のシーンをイメージされることが多いのではないでしょうか。

 特に、典型的な刑事ドラマのシーンとして、証拠をもとに犯人を追い詰め、最後は犯人の口から真実が語られる、といったテンプレがあり、このイメージを前提に、厳しい質問をされるかもしれない、責められるかもしれないと不安を感じる方もいらっしゃいます。

 そのような不安を払しょくするため、弁護士から見た、厳しい質問とはどういったものかをご説明します。

反対尋問の目的

 反対尋問での目的は、一般の方のイメージと大きく異なるところです。特に、お互いの言い分に対立があり、相手の主張する内容がこちらの主張する内容と全く異なることがあります。

 先ほどの刑事ドラマのイメージを前提とすると、相手に嘘を認めさせる(相手の立場からすれば、こちらに嘘を認めさせる)ことが目的と思われがちです。

 しかし、一般論として、相手が、言い分を嘘だと認めることはほぼ考えられません。

 そのため、反対尋問の目的は、相手の供述を聞いている裁判官に、その供述が信用できない、と理解してもらうことになります。

 (弁護士向けの反対尋問の解説を読めば、どこにでも書いてある話なのですが、実際には、この点を意識していない反対尋問はしばしばみられます。)

厳しい反対尋問とは

 第三者から見て、証人の供述が信用できない、と感じるのは、どのような場合でしょうか。

 典型的には、証拠や供述の内容に、矛盾がある場合です。また、矛盾とまではいかなくとも、もしそのような言い分であれば、●●をしている(していない)はずである、というのも、信用できないと理解してもらえる場合です(もちろん他にもいろいろとあります)。

 日常生活の例を挙げれば、遅くに帰ってきた配偶者が「残業だった」と説明したけど、酒の匂いがしていたケースを想像してみてください。残業だけならお酒を飲むことはないはずで、言い分が信用できない、と感じられるのではないでしょうか。

適切な質問は、事実を聞く質問

 この典型的な場合を念頭にした、適切な質問とはどういった質問になるでしょうか。

 それは、事実を聞く質問です。ポイントとなる事実を聞いて、その事実が他の証拠や供述と矛盾している、整合していないといったことを示すことで、信用できないと裁判官に理解してもらうのです。

 また、弁護士によって考え方が分かれますが、私は、裁判官にその矛盾を尋問の場で理解してもらうことが、裁判官の心証形成において重要だと考えておりますので、その場で矛盾点を一定程度追求することにしています。このあたりは、追求するかどうかを含め、判断が分かれるところです。

意見をぶつける質問

 これに対して、事実を聞くのではなく、いきなり、弁護士の意見を、事前の準備なくぶつける反対尋問は、よくない質問です。

 そんな質問あるの?と思われるかもしれませんが、意外とよく見かけます。

 詰問口調になることもあり、厳しい質問をしているような印象を受けますが、証人にその意見を否定され、それ以上追及できないため、上手い質問とはいえないでしょう。

 もちろん、手詰まりになって、やむを得ずされるケースはありますが、このような質問が、相手方弁護士から反対尋問の冒頭にされると、私は、ほっと一安心します。

厳しい質問とは

 弁護士から見て厳しいと感じる質問は、事実を聞く質問です。どの部分の事実関係が弱い、若干不合理であるということを理解した上で、主尋問を行っていますので、反対尋問でそのあたりを細かく聞かれるのが、一番嫌です。

まとめ

 反対尋問について、私が個人的に感じているところをまとめました。

 それまで、記憶に従った主張をし、法廷でも記憶に従ってお話しいただければ、何も不安に感じるところはございませんので、ご安心ください。