上野千鶴子氏の祝辞と『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』

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上野千鶴子氏の祝辞

 先日,東京大学の入学式で,上野千鶴子氏が祝辞を述べ,話題になりました。

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

 内容については,色々な意見があるようですが,以下の部分は,弁護士として様々な方の悩みを聞いていると,特に実感するところがあります。

世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』

 祝辞がニュースになって,昔読んだ本を思い出しました。これが,タイトルに上げている,『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』です。著者は上野千鶴子氏ではなく,遥洋子氏です。

 ケンカの仕方,といっても,議論の仕方が書いてあるというよりも,実際に東大で学んだ生活についてのエッセイで,人文科学系の大学院の学問に関するエピソードなどについて書かれています。

 ジェンダーの観点から見た際,書かれている内容は,1990年代後半の状況が前提となっており,また,芸能界という若干特殊な業界の方の視点から書かれており,著書の中でも上野千鶴子氏の発言で指摘されています。そのため,今読まれると,やや古いという感じを抱かれる方も多いかと思いますし,上野千鶴子氏の祝辞にあるように,まだこういう面は残っているという感想を抱かれる方も多いと思います。

私にとっての一冊

 私にとって,この本は,思い出深い本であり,何度も読み返した記憶があります。それは,ジェンダーの観点の話についてではなく,大学生活に関する話としてです。

 なんとなく大学で勉強していた際,たまたまこの本を手にとって読んでみたところ,「オリジナリティは情報の真空地帯には発生しない」とあり,大量の文献をとにかく読んで,「忘れなさい」といういさぎよさ。

 この本に出会ってから,私は,同じ分野の本を,わからないなりにとにかく大量に読むようになりました。大量に読むことで,見えてくるものがたくさんあり,また忘れてしまっても,自分の中でどこかに生きていると思います。実際,仕事の際に物事を考えるとき,昔読んだ本の思考法や理論を応用していると感じるときもあります。

 「複雑なことを単純に理解しようとしちゃだめ。複雑なことは複雑なまま理解しなさい。」とのことです。

たくさんの本を読む

 今の仕事でも,新しい内容に触れる際や,これまで考えていなかった論点が出てきた際は,たくさんの本を読み,また論文を調べるようにしています。その中で,新しい視点が見えてくることもあると思います。

 せっかく読むなら,一つの分野の本を短期的に数多く読むほうがいいかなと思っています。