「面会交流は月1回」の根拠と思われる論文を紹介します。

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 面会交流については、裁判所の運用としてはおおむね月1回程度である、ということがしばしば聞かれます。

 以前、このことの根拠(そのように指摘している文献)はどこにあるのか、ということが非常に気になり、調査したことがあります。

 面会交流事件を取り扱う弁護士の多くは上記内容を聞いたことがあると思われますし、またいわゆる実務感覚としても感じるところかと思います。

 そこで、いろいろと調べて、たぶんこれかな、という文献を発見しましたので、ご紹介いたします。

 なお、この記事は、表題のとおり、面会交流についての文献のご紹介であり、この頻度が妥当か、という当不当の問題には立ち入りませんので、ご了承ください。

論文における面会交流の議論の中心がどこにあるか

 面会交流についての文献を調査していると、まず突き当たるのは、面会交流に関する文献においては、面会交流の実施の頻度(方法、回数)よりも、面会交流の制限についてがテーマとして取り上げられることが多いことです。

 本件で文献を探す手掛かりともなった、『裁判例からみた面会交流調停・審判の実務』(梶村太一著、日本加除出版株式会社)は、そのタイトルから、面会交流について裁判例に幅広く触れた著書であり、参考となる裁判例が数多く乗せられています。

 ただし、全体の構成としては、著者の主要な関心は、裁判例において面会交流の実施をどのような基準で認めるか(比較基準説か明白基準説か)という部分にあるといえます。

 その他書籍を見ても、もちろん面会交流の頻度等については言及がありますが、これを理論立てて、例えばなぜこのケースでは月2回ではなく月1回なのか、1回4時間ではなく2時間なのか、という点について解説しているものは見当たらないと思われます。

面会交流は月1回といわれる話の出所の文献はこれかもしれない。

 しかし、色々な場面で面会交流は月1回程度、と言及されることから、何か元となる文献があるのでは?と思い、引用文献を探しており、最近の文献では、これなのではないか、というものに突き当たったので、ご紹介します。

「面会交流事例の実証的研究」(判例タイムス1292号5頁)

 この文献では、面会交流の頻度について、「その回数や方法について明確な基準はなく」諸事情を考慮し当該事案に適した内容を定めるとしたうえで、

非監護親と子との関係に問題がなく、また、面会交流の合意や実績があり、監護親や子の生活状況が安定しており、子も面接に消極的でない場合には、審判例は月1回程度と定めるものが散見される

と指摘されています。

 また、夫婦関係調整調停を含め、調停において面会交流を定める場合には、月1回とするものが多いことが指摘されており、これは実務感覚にも合致する。

とも記載があります。

 上記引用箇所の注によれば、平成4年頃や平成8年頃の調査の結果を踏まえ、月1回とするものがおおいと指摘されているとのことでした(詳細は本論文をご覧ください)。

 なお、やはり本論文も、先ほどのご説明の例にもれず、審判例の分析においては、面会交流の実施を認めるか否かという点を中心に考察がされている傾向にあります。

まとめ

 面会交流について、様々な考え方があり得ますが、弁護士として、また協議にあたっては、まずは裁判所の原則や運用をきちんと押さえることが肝要であると考えています。

 裁判所の考え方を抑えずに、自分の考えだけで主張をしても、なかなか裁判所に受け入れられず、また協議でまとまることも難しいといえるでしょう。

 面会交流の実施を考えるにあたり、広く読んでいただき、(立場の差を超えて)議論の基礎となってほしいため、ご紹介しています。

 個別のケースについて、どのように進めればいいかについては、無料法律相談を実施しておりますので、あいなかま法律事務所へご相談ください。