不倫の決定的な写真がない~SNSのやり取りから不倫の慰謝料の請求をするポイント。

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 不倫の慰謝料の請求には、不倫をした証拠が必要だといわれます。

 そして、不倫の慰謝料の証拠の典型例としてあげられるのは、ラブホテルなどに2人で入る写真です。

 しかし、実際には、写真がなくても不倫が認められ、慰謝料請求が認められるケースはしばしばあります。

 そこで、以下では、メッセージのやり取りのみから不倫が認められた裁判例をご紹介し、メッセージのみから不倫の慰謝料を請求する際のポイントをご説明します。

メッセージのやり取りから不倫が認められた事例

 事案の概要は省きますが、具体的にやり取りがされた内容は、以下のようなものでした。

 なお、裁判例は、東京地方裁判所平成29年(ワ)第11153号損害賠償請求事件(L07330346)です。

前提事情

 結婚前に交際していた女性と、結婚して数年たったのちのやり取りです。男性は都内に住んでおり、女性は関東近県に住んでいました。

具体的にされた内容

 ラブホテルを選ぶためのやり取りを2人でした後、実際に女性の住所地近くのショッピングモールで落ち合いました。

 その後、男性から「気持ちよかった!!」というメッセージと、女性から「私も気持ちよかったよ」などのやり取りがされています。

 男性は、数か月後、女性に対して、年内にもう一度性交渉をしたいという希望を伝え、女性から成人用玩具の使用について尋ねられ、これを肯定するやり取りを行いました。

男性からの反論

 男性は、上記やり取りについて、ショッピングモールであっただけであり、性交渉は行っていない、と反論しました。

裁判所の判断の概要

 裁判所は、上記やりとりから、不貞行為があったことは明らかであると指摘したうえで、男性の反論に対して以下のとおり指摘し、これを退けました。

  • 単にショッピングモールであっただけとすると、ラブホテルに関する情報のやり取りと整合しないこと
  • 会うことだけを目的として関東近県まで出向いたという経過は不自然であること
  • 2人のやり取りには、これを冗談であったことをうかがわせる部分は見当たらないこと

ご紹介したケースからわかること~証拠は写真だけとは限らない

 不倫の証拠は、上記のように事後的にやり取りが明らかになり、写真を撮影することが困難であるということもしばしばあります。

 この場合でも、メッセージのやり取りなどがあれば、不倫の慰謝料を請求できる可能性があります。

メッセージのみを証拠として不倫の慰謝料を請求するための重要なポイント

 相手の反論を想定し、これに対して十分に検討すること、このことにつきます。

 今回、男性は、不倫があった(と裁判所が認定した)にもかかわらず、当日はあっただけである、と明確に裁判所の判断と異なる内容を反論として述べています。

 仮に、真実として不倫があったとした場合、男性の反論は明確に嘘となりますが、不倫に関する裁判では、このような言い分が主張されることはしばしばあります。

 実際、写真がないケースでは、様々な反論がされることが考えられますので、どのような反論がされる可能性があるのかを、まずは事前に十分検討し、その上でさらに必要な証拠があれば、請求する前に可能な限りこれを収集する、ということになります。

 思考の実験として、下では、このケースを題材に、男性からされる(可能性のあった)反論を検討してみます。

1 当日は会っただけで、不倫はしていない。

 裁判で主張された反論です。

 今回のケースでは、会う前にラブホテルに関するやり取りを行い、数か月後に再度性交渉をしたいという希望を伝えていることから、不合理だと裁判所は判断しました。

 しかし、例えばラブホテルに関するやり取りがなかった場合や、その後のやり取りがなかった場合などは、単に会っただけ、ということもあり得るかもしれません。

 今回、この反論を想定して、その後のやり取りを含めてあらかじめ証拠を集めておいたのかもしれません。

2 当日、複数人であって遊んでいた。

 他の友達も含めて会っていた、という反論もあり得ます。2人だと思って当日会いに行ったら、他の友達もいたので、みんなで遊んだ、という反論もあるかもしれません。

 ラブホテルに関するやり取りや、再度の性交渉に関するやり取りがなければ、この反論も十分に成り立つ可能性があります。

 やはり、事後的に再度性交渉したいとの希望を述べていた、というメッセージは、重要な位置づけだったといえます。

3 冗談のやり取りで、相手が実在するのかもわからない。

 裁判で、その他のやり取りに関してされた主張です。性交渉に関するやり取りがあったとしても、一応話の筋は通るかもしれません。

 確かに、マッチングアプリなどのメッセージのやり取りのみで、相手がだれかわからない、というケースでは、この反論が認められる可能性があるかもしれません。

 今回のケースは、有名なSNSでしたので、この反論は成り立ちづらい面がありますが、いずれにしても、事前にメッセージの相手方が元交際相手だったことをきちんと把握しておいたことが、不倫の慰謝料を請求するために大切だったといえます。

これらの事前の検討が大切

 先ほどご説明したように、不倫の証拠だ、と思われるやり取りを入手しても、実際にこれをもとに請求する場合には、これらの反論の可能性を事前に十分に検討し、必要な事前の調査が必要となる可能性があります。

 裁判になって、実際に反論されてから、証拠が収集できず、不倫の事実が認定されなかった、ということのないようにする必要があります。

まとめ

 メッセージのみをもとに、不倫の慰謝料を請求し、これが認められたケースをご紹介しました。

 もし、お手元にある証拠が、LINE等のやり取りのみであった、というケースでも、不倫の証明ができ、慰謝料を請求できる場合があります。

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