離婚届の提出のみで協議離婚ができることとした理由

この記事を読むのに必要な時間は約 2 分です。

 日本では、協議離婚(話し合いによる離婚)が認められており、また、その手続きは市役所等に離婚届を提出するのみでいい、非常に簡便な手続きで離婚できることとされています。

 これは、世界的には珍しい制度のようで、多くの国では、話し合いによる離婚を認めていなかったり、話し合いで離婚できる場合でも裁判所などが当事者の意思を確認する手続きを経る必要があるとされているようです。

 そこで、今回は、なぜこのような制度となっているのかをご説明します(以下の記述は、『親族法』我妻栄著を参考にしています)。

戦前の制度

 離婚届の提出のみで離婚できるのは、戦前の旧民法からの制度のようです。

 もともとは、夫の方から自由に離婚ができ、妻から離婚を求める手段はなかったようですが、旧民法の制定により、協議による離婚と裁判による離婚の両方を定め、夫から自由に離婚ができるという制度を廃止したようです。

 しかし、実際には、戦前の妻の地位の低さから、妻の知らないうちに離婚届が提出されることも稀ではなかったようです。

戦後の改正

 戦後直後、離婚届は裁判所の確認を得たうえでなければ受理されない制度にするという主張がなされ、参議院で可決されたようですが、衆議院が同意せず、成立しなかったとのことです。

 その理由は、以下の2点だったようです。

  1.  協議離婚の数が多かったため、裁判所の実効的な確認手続きを制定することが難しかった。
  2.  確認手続が制定されると、この手続きを経ない事実上の離婚状態が多くなる可能性があり、法律関係が紛糾する可能性があった。

 離婚にあたって、裁判所がどのような役割を発揮すべきか、またはそもそもすべきでないのか、ということを考えたとき、離婚届に関する現行の制度は、一つのあり方なのだろうと思います。