モラハラで苦しんでいる方へ、モラハラを理由として離婚する場合のポイントを解説します。

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 モラルハラスメント(モラハラ)が原因で離婚したいとご相談されるケースが増えています。モラハラだといわれているという方から相談を受ける場合もあります。

 実際に、私が取り扱った案件は、モラハラが明確に争点になってない場合であっても、モラハラが関係しているものも多くあります。

 また、弁護士へご相談しても、モラハラされている方への理解のない弁護士にあたってしまい、我慢するように言われたり、一方的にお説教をされてしまったということも耳にします。

 そこで、この記事では、モラハラで苦しまれている方向けに、モラハラと裁判所の考え方や、モラハラにおける離婚の話し合いの進め方についてご説明します。

モラハラの特徴

モラハラの例

 モラハラは、多くの場合、夫から妻へ行われます。

 例えば以下のようなケースをよく聞き、例を挙げればきりがありません。

  •  家事を何もしてくれないにもかかわらず、掃除の仕方、食事に文句をつけられた。
  •  気に入らないことがあるとすぐに大声を出す。舌打ちをする。
  •  子どもがなくと怒る。
  •  稼いでいること(収入が妻より多いこと)でマウントを取ってくる。
  •  指摘すると、謝ったり甘い言葉をかけたりするが、結局治らない。
  •  無駄遣いをしていないのに、お金の使い方に細かく口を出す。
  •  お金の使い方が悪いといって非難する。
  •  自分の思い通りにならないとずっと文句をいっている。
  •  いわれるのは仕方ないが、言い方がきつい。人格を非難される。
  •  ものにあたる。
  •  いろいろ相談しても、上から目線でしか回答されない。

 また、妻から夫へモラハラが行われていると思われるケースも見かけられます。ただし、男性だからなのか、そのような場合でも、夫側から明確にモラハラだという主張がされることは少ない印象です。

モラハラは無自覚(又は悪意なく)に行われる。

 モラハラは、モラハラをする側は、無自覚(又は悪意なく)だと思われるケースが大半です。実際にモラハラをする側の話を聞くと、本人のためにいい(「教育」という言葉を使うこともあります)と思っていったことだといわれたり、怒っている自覚がなかったといわれることが多いです。

 モラハラをする側に、モラハラで相手が苦しんでいるという自覚がないため、改善すると約束しても、実際に改善できないケースが多くあります。

モラハラは、離婚原因になるか。

 モラハラは、法律上の離婚原因に該当し、裁判になった場合に離婚できる可能性があります。

 そこで、以下では、モラハラが問題になった裁判例を見ていくことで、裁判所がモラハラをどのようにとらえているかや、モラハラによる裁判での離婚について考えてみます。

関連記事 法律で認められている、離婚できる離婚できる5つの理由(離婚原因)。

モラハラに対する裁判所の理解

 裁判所は、明確にモラハラという言葉は使わないものの、実質的にはモラハラを認めたうえで、これを踏まえた判断がされることも多くあります(離婚原因としては悪意の遺棄を認定)。

 原告は,被告と婚姻した後,被告に対し,自己中心的かつ支配的な態度で接し,自分の思いどおりにならないと,不機嫌になる,怒鳴る,又は無視するといった横暴な言動を重ね,ときには被告に土下座して詫びるものの,すぐに元に戻るということを繰り返し,被告は,これによって,平成7年以降に罹患した病気による心労と相まって,精神的に追い詰められていった。

(中略)

 以上を要するに,原告と被告は,原告が被告に対して横暴な言動を重ねたことによって別居するに至り,…婚姻費用を全く支払わなくなったこと(悪意の遺棄)が最後の引き金となって,婚姻関係が破たんし,離婚するに至ったものと認められる。

 この事例は、土下座して詫びることを含めて、典型的なモラハラ事案といえ、裁判所は、これがもともとの別居の原因で、その後の経緯はモラハラのせいであるとして、被告に婚姻関係の破綻の責任が有るとして、慰謝料50万円を支払うよう命じています。

 しかし、一方では、モラハラと思われる事実関係があり、また別居後に全般性不安障害との診断を受けていて、モラハラがあったと思われるケースで、以下のとおり、性格の不一致であるとして離婚を認めないとする判断がされたこともあります。

 原告が婚姻関係の破綻原因と主張する事実は,上記認定のとおり,その存在自体が認められないか,存在するとしても,いずれも,性格・考え方の違いや感情・言葉の行き違いに端を発するもので,被告のみが責を負うというものではない。

 そして,そのような隔たりを克服するためには,相互に相手を尊重し,異なる考え方であっても聞き,心情を汲む努力を重ね,相互理解を深めていくことが必要である。

平成25年(家ホ)第235号 離婚等請求事件 平成27年1月20日

 私としては、このケースでは、確かに裁判所の判断として、「隔たり」について、どちらに責任が有るとはいえず、「被告のみが責を負うというものではない」のかもしれません。

 しかし、そうだとしても、長年の中で克服できなかった隔たりをいまさら克服できるとは思えず、相互理解を深めていくのには無理があるのではないか(だから離婚を認めるべき)と感じています。

裁判所の判断から考える、私が思うモラハラ離婚裁判のあり方

 2つ目の裁判例が指摘する 「被告のみが責を負うというものではない」 という指摘は、実際にお互いの話を聞いたうえで事実関係を評価した裁判所の判断としては、必ずしも誤っているとはいえないのではないかと思います。 

 しかし、長年一生に生活し、対話を重ねてきた結果として、裁判所で、一方がモラハラを主張し、他方がモラハラはなかったと主張する夫婦に「隔たりを克服する」努力を語るのは、ややポイントがずれているのではないかと思います。

 どちらにも責任がないという裁判所の認定であっても、この状況をもとに離婚を認めるという判断があってもよかったと思います。

モラハラの離婚する場合の2つのポイント

 モラハラで離婚の裁判を行うときに、重要なポイントとなるのは2点です。

1 モラハラに関する証拠を集める

 裁判所に対して、モラハラがあったことを理解してもらう必要がありますので、モラハラに関する証拠が重要になります。

 証拠としては、録音やものが壊された場合には写真、日記をつけるなどのほか、通院されている方であれば、病院のカルテに相談内容が記載されているケースがありますので、これを取り寄せます。

 実際の裁判では、家庭内のことで目撃者等もおらず、証拠が残りにくいことなどから、実際にはほとんど証拠がないいケースもあります。

2 モラハラを裁判所に理解してもらう。

 裁判所によっては、モラハラが十分に理解されておらず、性格の不一致と理解しているケースがあります。裁判所の現在の判断としては、性格の不一致による婚姻関係の破綻は認められませんので、裁判所に、モラハラを理解してもらうよう丁寧に主張する必要があります。

話し合いで離婚するために。

 モラハラ事件が長期化することを避けるため、話し合いや調停で離婚する方針で進めることも考えられます。

 調停の場合、調停委員によっては、モラハラに理解がないケースもありますので、調停委員に対して、どのようにモラハラを理解してもらうか、といったノウハウが重要になります。

 先ほど述べたように、多くのケースでは、モラハラをする側は自分の行動に無自覚なので、調停においてもモラハラを感じさせる言動がされることが多く、うまく説明すれば、調停委員に相手方のモラハラがあったを理解してもらい、夫婦生活が続けられないことを分かってもらうことは十分可能です。

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モラハラの慰謝料

 モラハラが原因で離婚する場合の慰謝料は、モラハラが明確に認められたとして、数十万円から100万円程度です。事案によっては金額が大きく上がる可能性や、離婚は認めるが慰謝料は認めないという判断がされる可能性もあります。

 このあたりを踏まえつつ、どのような進め方をするかを考える必要があります。

モラハラで苦しんでいる方へ

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