離婚で気になる養育費。金額の決め方や、もらい方を解説します。

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

 離婚をしたいと考えたとき,お子様のいる方であれば,子どものこと、親権や養育費を非常に気にされるのではないかと思います。

 私が相談した方の中にも,昔離婚しようと思っていたが,子どもが大きくなるまでは我慢しようと思っており,子どもが社会人になったのでご相談に来たという方もいらっしゃいます。

 子どもを育てていくにあたり、特に気になることとし子どもにかかるお金、養育費のことが挙げられます。一説には、子どもを育てるために、1人あたり、2000万円を超える費用がかかるともいわれており、養育費は非常に切実な問題です。

 そこで,以下では,子どもの養育費がどのように決まるのか、どうやってもらえばいいのかを、解説します。

 以下の記述は、説明を分かりやすくするため、支払いを受ける側(通常は母親)の視点から記載していますが、支払う義務がある側(通常は父親)の方にも参考になると思います。

離婚したら、養育費が支払われます。

 離婚した場合、子どもを監護しない親は、子どもを監護する親に対して、養育費を支払うことになります。

 通常は,成人になるまで(成熟するまで)養育費が支払われることとなりますが,協議によって,大学卒業まで養育費を支払うとの合意をする場合もあります。

 2022年4月1日に、成人年齢が18歳まで引き下げられますが、養育費との関係では、未成熟子であるという扱いをするため、従前と取り扱いを代えないとされています。

養育費はいくらになるのか、算定表で見てみました。

 養育費は子ども一人3万円、などといわれたこともあります。お話をお伺いすると、一人3万円と聞いたことがある、だったり、実際に3万円で合意している方もいらっしゃいます。

 実際には、養育費は、子ども一人当たりいくらと決まっているわけではなく、裁判所が定める養育費の算定表を基準として、個別の事情を考慮して決められています。

養育費を決める要素

 算定表のご説明の前に、養育費の考え方について説明します。

 養育費は、双方の収入と子どもの数をもとに決められます。そのため、同じ家族構成であれば支払う方(通常は父親)の収入が多ければ多いほど、もらう側(通常は母親)の収入が少なければ少ないほど、養育費は多くなります。

養育費は算定表に従って決められます。

 離婚について考えたことのある方なら,養育費の算定表があるということを聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 もともとは、双方の家族が生活にかかる費用などをもとに、一から計算していたのですが、その方法だと速やかに判断できないため、簡便に計算できる算定表が作成されました。

 裁判所の調停で,養育費に関する話し合いを行う際に,調停委員が手元に置いて参照したり,実際に裁判官が判断する際に,算定表に従い判断されています。

 そのため、養育費がいくらもらえるかを調べるには、算定表を確認するのが確実です。算定表は,裁判所のホームページでダウンロードすることができますので、ご活用ください。

関連記事 初めて見る方向けの養育費・婚姻費用算定表の見方の解説。

実際の養育費の金額の例

 父親の年収が額面で400万円(給与所得者)、母親の年収は額面で100万円(給与所得者)というケースを想定します。

 この場合の養育費は、算定表に従うと、

 子ども1人(0~14歳)の場合には、4~6万円(ただし下の方)

 子ども2人(いずれも0~14歳)の場合には、4~6万円(ただし上の方)

となります。

算定表ではカバーできないケース

 算定表ではカバーできないケース,例えば子どもが4人いらっしゃるとか,両親がそれぞれ子どもを育てているなどのケースでは,個別に養育費を計算する必要があります。

 また,元夫が所有し,住宅ローンを支払っている家に元妻と子どもが住んでいるケースなど,個別に検討が必要なケースもあり,算定表のみで結論が出ないケースも多くあります。

 そのため,実際に養育費について考える際には,一度弁護士にご相談されて,ご自身の置かれた状況が算定表のみで結論がでないケースに当たらないか,確認された方が良いといえます。

養育費をきちんともらう方法をご説明します。

 実際には、養育費をもらっていないという方もいらっしゃいます。子どものためのお金ですので、きちんともらった方がいいと思いますが、どうせ払ってもらえないという思いや、もらうための手間を考えて、断念してしまう方もいらっしゃるようです。

 そこで、養育費をきちんともらうためのコツをご説明します。

離婚の際にきちんと決める。

 養育費については、離婚の際にきちんと決めておきましょう。とにかく早く離婚したいと思って、養育費を決めずに離婚してしまうと、後に連絡がつかなくなったり、誠実に対応してもらえなくなってしまう恐れがあります。

 養育費を決める際には、きちんと、毎月何日までに、いくら支払うのか、支払い方法をどうするのか(通常は口座への振込)をきちんと決めておきましょう。

書面に残しておく。

 養育費を決めたら、口約束やLINE等のやり取りだけではなく、きちんと書面(できれば公正証書)を取り交わしましょう。

 後にご説明する理由から、公正証書の方がいいといえますが、費用も手間もかかります。

 パソコンで作成した書面にお互いが署名押印する方法でも構いませんので、必ず作成しましょう。

書面を作成しなければならない2つの理由

のちの紛争を予防

 話し合いの内容を、明確にして、後に、金額が違う、などの紛争を防ぐ意味があります。

書面にすることによる心理的強制

 自分で納得して書面に署名押印したことにより、約束したことをきちんと守らなければならないという心理的な強制力が生じます。

 私の印象では、書面を作成した場合は、書面を作成しなかった場合に比べて、養育費の未払いは非常に少なくなっている印象です。

支払わない可能性が高い場合は、公正証書を作成しましょう。

 強制執行認諾文言を記載した公正証書を作成すると、支払いがされなかった場合に、速やかに給料の差し押さえなどができるようになり、養育費を回収することができるようになります。

 実際には、勤務先への差し押さえにより勤務先に養育費の未払いが明らかとなってしまうことが心理的強制となり、支払いが滞ることが少なくなります。

 ただし、公正証書の作成は、公証役場への手数料がかかることに注意が必要です。

話し合いに応じない場合には、養育費請求調停を起こす。

 これまで、相手がきちんと話し合いに応じるケースを想定しましたが、話し合いに応じてもらえない場合も考えられます。

 この場合には、速やかに家庭裁判所へ行き、養育費請求調停を起こしましょう。

 養育費請求調停は、養育費について合意がない場合や、支払われるべき養育費が未払いである場合に、家庭裁判所が双方から事情を聴いたうえで、養育費について話し合いを行う手続きです。

 調停では、双方の収入を確認したうえで、個別の事情を考慮して養育費を決めることになっていますが、通常は算定表に従って決定されます。

 裁判所で養育費が決められると、その後に未払いが生じた場合には公正証書と同じように給料の差し押さえなどができるようになります。

親としての責任、面会交流とセットで

 養育費の不払いに対する対策として、面会交流が可能なケースであれば、面会交流についてもきちんと取り決める方が望ましいといえます。

 面会交流できるケースであれば、子どもに会って成長を実感し、子どもの成長のため養育費を支払う、という一つのまとまりで未払いを未然に防止することも十分出来るものと考えています。

養育費の差し押さえがしやすくなりました。

 民事執行法が改正されたことにより、令和2年から、養育費を含む債権の回収がしやすくなりまました。

関連記事 民事執行法の改正により養育費を含む債権の回収がしやすくなります。

養育費の不払いの問題についての新しい動き

 また、養育費の不払いの問題は、様々な形で議論されており、今後、より強い形で養育費を支払わせる制度ができる可能性もあります。

 お子様とそれぞれの親のかかわり方を含め、議論がされていく部分と感じております。

養育費をきちんと決めよう

 以上が、養育費の金額や、養育費の支払いを受けるための方法です。

 ご自身で養育費の話し合いが難しい方や、自分のケースで養育費がいくらかわからないという方がいらっしゃれば、弁護士までご相談ください。 

 最終更新 2021年2月11日