女性は離婚してもすぐに再婚できない?女性だけに定められた再婚禁止期間。

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 離婚できた、やっと新たに結婚できる、と思っていらっしゃる方や、再婚するために早く離婚したい、というお気持ちで、離婚を進めている方もいらっしゃると思います。

 離婚したら、すぐに籍を入れようと、約束されている方もいるかもしれません。実際、離婚が決まったのちに、すぐに結婚された方を多く見ています。

 しかし、日本の法律上は、女性に限っては、離婚したのちに、すぐに籍を入れることは原則としてできません。

 男女平等がいわれているのに、なぜ、男女で明確に違いを設けているのか(しかも、これは憲法に違反しないとされています)。

 男性は、すぐに結婚できるのに、女性はすぐに結婚できない、これはなぜなのか、ご説明します。

再婚禁止期間に関する規定

100日の再婚禁止期間

 先ほどご説明したように、女性は、原則として、離婚後すぐに結婚できません。実際には、100日間は結婚できません。

1 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合

二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

民法733条

 男性には、同様の規定はなく、離婚したらすぐに結婚できます。

離婚後、100日以内に再婚するための手続き

 100日以内であっても、「 民法第733条第2項に該当する旨の証明書 」を医師に作成してもらうことで、結婚が認められます。

 100日以内に結婚できる場合とは、

  • 本人が前婚の解消又は取消しの日であると申し出た日より後に懐胎していること
  • 同日以後の一定の時期において懐胎していないこと
  • 同日以後に出産したこと

 のいずれかを満たす場合です。

 1番上は、離婚後に妊娠したこと、2番目と3番目は、離婚の時点で妊娠していないこと、と整理できます。

 詳細は法務省ホームページか、市区役所でご確認ください。

女性だけすぐに離婚できない理由

 女性が離婚後すぐに結婚できない理由については、まず、子どもが夫の子と推定される場合の規定(いわゆる嫡出推定(民法772条))をご説明する方がわかりやすいと思います。

子どもは誰の子?夫の子と推定される期間。

 結婚している夫婦の間に生まれた子どもは、誰の子でしょうか。

 女性は、実際に出産した方が親だ、と考えられるでしょう(代理母などの問題もありますが、今回は割愛します)。

 では、父親は誰でしょうか。当然、結婚しているのであれば、夫の子だと考えられます。法律は、このことを、以下のように定めています。

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

民法772条1項

 では、懐胎した時期がいつかは、どう考えればいいでしょうか。この点については、民法は以下のとおり定めています。

婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

民法772条2項

 つまり、結婚後200日を過ぎてから生まれた子、離婚後300日以内に生まれた子は、結婚中に懐胎したものと推定するという規定です。結婚中に懐胎したと推定されると、夫のこと推定されます。

 なぜ200日と300日なのかは、明治時代からこの期間ということで、当時の知見に基づいているとのことです。

 現在であれば、出生証明書に妊娠週数が記載され、懐妊時期が推定できるため、200日ないし300日という推定は不要だとも思えるのですが、この規定は削除されずに残っています。

推定されない夫の子(推定されない嫡出子)

 では、子どもが生まれるまでには籍を入れたのだけれども、生まれたときには結婚後200日を過ぎていなかった(出産1か月前に籍を入れたようなケース)ではどうかというと、もちろん夫の子となります。出生届の父の欄に記載すれば、そのまま受理されます。

 そうだとすると、何が違うのかというと、推定されるかされないかで、本当の父親は違うという裁判をするときに、大きな問題となります。

女性が婚姻できない(制度上の)理由

 上記の推定に関する規定を踏まえると、女性が婚姻できないとしている制度上の理由が見えてきます。具体的な例を挙げるとわかりやすいです。

 もし、ある女性Aさんが、元夫である甲さんと離婚して、50日後に現夫乙さんと(民法の規定を見落として)結婚しました。結婚後、220日後(離婚してからは270日後)に子どもBちゃんが生まれました。

 このとき、Bちゃんは、先ほどの規定からすると、甲さんと乙さんのどちらの子どもになるでしょうか。

 Bちゃんは、離婚後、270日(300日以内)で生まれていますので、甲さんの子どもとも考えられます。

 Bちゃんは、結婚後、220日(200日経過後)で生まれていますので、乙さんの子どもとも考えられます。

 この結果、Bちゃんの父親が、法律上2重になってしまうという問題が生じます。

 これを避けるために設けられたのが、再婚を禁止して、推定が重なることがないようにする規定です。

最高裁判所の判断

 上記再婚禁止期間は、以前は6か月と規定されていましたが、最高裁判所の判決後、改正されて、100日に短縮された経緯があります。

 最高裁判所は、再婚禁止の規定は、以下のとおり合理的だとしています。

本件規定の立法目的は,女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解するのが相当であり(…),父子関係が早期に明確となることの重要性に鑑みると,このような立法目的には合理性を認めることができる。

最高裁判所大法廷平成25年(オ)第1079号

 そのうえで、嫡出推定が重複する100日間の再婚禁止については合憲であるが、これを超える部分は違憲だと判断しています。

 判決の全文は、裁判所ホームページから検索ができますので、興味があればご確認ください。

 判決文や意見には、DNA鑑定との関係や、立法時の経緯なども触れられています。

(追記)改正に向けた動きについて

 再婚禁止期間が定められている理由である、嫡出推定の規定について、法務省の法制審議会で、見直し作業が進められることになったようです。

 現時点では詳細は不明ですが、今後、再婚禁止期間に関する規定が廃止される可能性もあり、注目しているところです。

まとめ

 最高裁判所の判断には、色々な問題がはらんでおり、色々な意見があると思います。

 いずれにしても、現在の再婚に関する制度は上記のとおりですので、再婚後すぐに結婚を考えている女性の方は、ご注意ください。