親権を決める主要な3つの基準。子どもの親権、母親有利は本当か。

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親権は離婚の際の大きな関心ごとです。

 子どもがいるご家庭が離婚する場合に、一番の関心ごとは、親権を含む子どもにまつわる事柄です。

 そして、子どもの親権については、母親が有利であるといわれており、私が父親側でご依頼を受けたケースでも、多くの場合には母親が親権者に指定されています。

 父親から、親権を取りたいといわれても、ご事情を踏まえると親権を取ることは非常に難しいケースが多くあり、その場合にはきちんとご説明させていただきます。

 ご説明すると、ご納得いただけることも多いですが、難しくても親権を主張したい場合には、調査官調査を求めるなど、徹底的に争うことにしています。

 以前こそ、単に母親だから、という理由で親権が決まることもあったようですが、現在はそのような判断はされていません。

 そこで、親権を決める大きな3つの基準について、ご説明させていただきます。

 以下は、説明を分かりやすくするために、大幅に簡略化しておりますので、私の見解としてご理解ください。

親権を決める際の大きな3つの基準

親権を決める際の判断基準のうち、重要なものを3つ挙げるとすれば、以下の3つと考えられます。

  • 子の意思
  • 監護の継続性
  • 現在の監護状況

監護の継続性

 親権にあたり、最も重視されていることが、監護の継続性です。

 これは、これまで監護していた親が、今後も監護を続ける方がいいだろう、という考え方です。

監護の内容

 この場合の監護は、別居後の監護のみではなく、別居前の監護も含んで考えられており、一緒に暮らしていた間、実際に子どもに接していた時間が長かったのはどちらか、ということが、一番大きなポイントになります。

 例えば、同居していた際に、日常的に一緒に生活していた時間や、寝かしつけ、おむつの交換、お風呂、食事の準備その他子どもの世話の一切について、どちらが主に担当していたかを、重視します。

 母親は育休を取ったけれど、父親は育休を取っていない、妻は時短勤務で子どもの食事からその他色々とやってきたけれど、父親は定時や残業して帰ってくる、子どもの食事は母親が作る、洗濯や寝かしつけも母親がする、という家庭がまだ一般的です。

 このようなケースでは、父親が親権を主張しても、これまで主に子どもを監護してきたのは母親であるとされて、父親が親権を取ることは難しいといえます。

現在および将来の監護状況

 独立したものとして挙げられないこともありますが、これに関連して重要になるのが、現在(および将来)の監護状況です。

 もし、現在別居中であり、どちらかの親が監護している場合で、その監護状況に問題があれば、これは親権を別の親に指定する理由になります。

 これに対して将来の監護状況については、双方主張しますが、今後変わりうるものとなるため、参考情報という位置づけとなっているといえます。ただし、将来の監護について見通しがないのではだめです。

その他に挙げられることがある内容

 上記のほか、以下の5つが挙げられる場合があります。

  • 母性優先の原則
  • 父母の婚姻破綻についての有責性
  • 子の奪取の違法性
  • 兄弟不分離の原則
  • 面会交流の許容性

 しかし、これらは、先ほど挙げた3つに比べると、補完的な事情にとどまるか、明確に考慮されていないと思われます。以下、ご説明します。

母性優先の原則について

 以前は、母親の愛情がもっとも大切であるなどと指摘して、親権を母親にしたケースがあります。しかし、現在は、このような考え方は(少なくとも明確には)採用されておらず、主たる監護者がどちらか、という視点で判断されているといえます。

 ただし、実際には、母性優先の原則という先入観を隠し、色々と理由をつけて判断していると考えられるケースもあるように感じています。

父母の婚姻破綻についての有責性

 不倫したのだから、親としてふさわしくない、という主張がされるケースがあります。しかし、不倫したから親としてふさわしくないという考え方は、裁判所はしておらず、不倫の事実が子の監護に与えた悪影響がどれほどかということを評価して判断しています。

子の奪取の違法性

 子どもを無理に連れ去ったのだから、親としてふさわしくないという主張がされることがあります。

 無理に連れ去ったのであれば、子の意思などとの関係になりますが、少なくとも、違法に連れ去ったから親権者としてふさわしくないという考え方はされていません。

 ただし、子を違法に連れ去り、後にご説明する監護の実績を作り、これを監護の継続性として主張するケースでは、違法な連れ去りであることを考慮して監護の継続性において評価しない、という形で判断されており、この判断は妥当といえると思います。

 この意味で、子の奪取の違法性は、監護の継続性の副次的な要件(違法でない監護の継続性)という位置づけが妥当だと思われます。

兄弟不分離の原則

 兄弟は分けるべきではない、という考え方があります。子どもが二人いて、親権で争っているから、間を取って一人ずつ監護させよう、という考え方がされているのであれば、これは決して認められないといえます。

 実際に、子どもが2人いて、2人ともどちらかの親が監護しているケースでは、両方の子どもの親権を主張するケースが圧倒的であり、兄弟不分離の原則が主張されるケースは少ないといえます。

 そして、兄弟不分離が主張されるのは、多くの場合、子どもが別々に監護されているケースですが、その場合には子どもが別々に監護されていることに理由(子どもの意思や通学など)があり、兄弟不分離の原則が直接適用されることはあまりなく、他の要素を補完する内容として指摘されるにとどまるといえます。

 そのため、独立のものとして取り上げていません。

子の意思

 裁判所は、親権の指定にあたり、子の意思を考慮することと定められています。

 家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

家事事件手続法第65条

 また、子が15歳以上の場合には、その陳述を聞かなければならないとされています。

 家庭裁判所は、親権者の指定又は変更の審判をする場合には、第六十八条の規定により当事者の陳述を聴くほか、子(十五歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。

家事事件手続法169条2項

 実際には、親権が争いになるケースでは、子の監護状況とともに、子からも調査官が直接話を聞いて、子の意思を調査することが多いといえます。

 また、子どもの意思が明確になる年齢であれば、それを踏まえて親権について争いが終了することも少なくありません。

 ただし、子どもは、現に監護されている親に配慮し、本心をいえない場合もあることから、特に、子どもの年齢が低いとき(小学生高学年にみたないとき)は、子の意思のみをもって親権者を指定することはありません。

面会交流の許容性

 面会交流は、子どもが非監護親にあうことができる機会であり、この福祉のために必要なものだと考えられています。そのため、面会交流を積極的に推奨する親は、監護親にふさわしいという考え方があり、実際にこの考え方に従った裁判例もあります。

 しかし、理由なく面会交流を拒否するケースを除けば、これが独立に評価されるものとはいえず、監護状況の一つの事情として扱われるものといえます。 

親権が母親に指定される理由

 先ほど説明した3つの基準のうち、監護の継続性や監護状況に関しては、母親は専業主婦であったり働いている場合でも子どものために育休や時短勤務をしており、子どもと一緒にいる時間が長く、また今後も子どもと一緒にいる時間を十分にとれているのが現状です。

 そのため、母親が有利といえる状況が生まれています。

まとめ

 個別の事情によっては、悩ましいケースもございますので、父親の方も、母親の方も、一度弁護士へご相談ください。