不倫の慰謝料請求の内容証明を送りたい方や、送られてきて困っている方へ、内容証明とは何かをご案内します。

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 不倫の慰謝料請求をするとき、内容証明で送る方がいいという話を聞いたことがあると思います。

 内容証明と聞くと、少し、ものものしい印象を受けたり、突然届けられたら怖い、と感じられる方もいるのではないでしょうか。

 そこで、この記事では、内容証明とは何か、内容証明の意味、内容証明の出し方、内容証明で出すメリットやデメリットについてご説明します。

 これから内容証明を出そうと考えている方や、内容証明文書が届いてびっくりしている方にも、役に立つ記事になると思います。

内容証明は、郵便局がその内容を証明する郵便です。

 内容証明は、一般書留郵便に付加するサービスです(日本郵便ホームページ)。

 内容証明は、「 いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって」郵便局が証明する制度です。

 郵便局で内容証明郵便を出すことで、どのような内容の文書を、誰が誰に出したのかを証明できます。

 また、これに配達証明を付加することで、配達した事実を合わせて証明できます。

内容証明でできること

 結果的に、内容証明郵便は、

  • どのような文書を
  • いつ
  • 誰が
  • 誰に送付したか
  • それが受け取られたこと
  • 受け取られた日

 これらを、証明することができます。

 上のリストからわかるように、文書の内容が真実かどうかということは、証明できません。

内容証明の意義

 内容証明により、送ったことや受け取ったことの証明に用いられます。

 法律上の効果は、単なる意思表示であり、意思表示をしたことを証明する手段としての内容証明という位置づけです。

 なお、wikipediaの内容証明の項に、「契約解除」や「債権回収」の手続き上は内容証明が必要となる旨の記載がありますが、端的に誤っています。

 「契約解除」は、必要な要件を満たしたうえで解除の意思表示をすることで解除の効力が生じます。口頭でも契約が成立するといわれるように、口頭でも解除の効力は生じます。この際に、その手続きを内容証明で行うことは要求されていません。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

民法541条

 また、「債権回収」では、債務不履行の事実があれば請求できますので、やはり内容証明は不要です。

 上記手続きでは、解除の事実や請求した事実を証拠として残すという本来の内容証明の役割が重要であるため、内容証明を利用することが多いといえます。

 しかし、手続き上必ずしなければいけない、内容証明でなければ法律上の効果がない、というわけではありませんのでご注意ください。

内容証明の出し方

 内容証明は、郵便局で出すことができます。ただし、郵便局によっては、内容証明郵便サービスを扱っていないところもあるため、事前に確認が必要です。

差し出す文書について

 差し出す文書について大切なことは、文字数や行数に決まりがあること、内容文書以外のものを同封できないことです。以下でご説明します。

文字数や行数に決まりがあること

文字数や行数は、以下のとおりです。

縦書1行20字以内
1枚26行以内
横書1行20字以内、1枚26行以内
1行13字以内、1枚40行以内
1行26字以内、1枚20行以内

 内容証明用の用紙も販売されていますが、パソコンで設定した方が簡便です。

 1文字でもはみ出すと、郵便局は受け付けてもらえませんので、禁則処理の方法によっては、1文字はみ出すことがあります。

 パソコンで作成する際は、1文字少なくしておく方が安全です。

 また、ページ番号を入れると、これも1行と数えられるため、ページ番号は入れない設定にしておく方がいいでしょう。

 記号の数え方など、郵便局のルールがあるため、作成の際は一度ホームページで確認しましょう。

 2ページ以上にわたる場合には、契印(1枚目と2枚目をホチキスで閉じて、その綴じ目に押す印鑑)が必要です。

 冒頭で説明しましたが、内容証明で送付する際は、作成した文書以外は入れられません。例えば証拠写真や、別途作成した振込票などは同封できませんので、注意が必要です。

差し出す流れ

 郵便窓口に、送付文書、その写し(謄本)2通、差出人及び受取人の住所氏名を記載した封筒、を持参します。

 送付文書と写しで、合計3通必要です。

 訂正があることがあるので、契印に用いたハンコを持参していくと安心です。

 一般書留郵便に内容証明、配達証明をつけるなどのため、1通送るのに、1000円程度かかります。

すべてのやり取りを内容証明郵便でしない理由

 多くのケースで、初めに請求する文書には内容証明郵便を利用しますが、その後は普通郵便や書留郵便を利用します。すべてのやり取りを内容証明郵便で行うことはされていません。

 その理由の代表的なことは以下のとおりです。

  • 内容証明郵便は、送付できるものや書式が限られており、やり取りの中で不便であること
  • 内容証明郵便の送付に手間と費用がかかること
  • 一連のやり取りの中での話し合いで、受け取っていないという反論はされづらく、また弊害が少ないこと
  • 途中のやり取りについては、初回の請求と異なり、必ずしも立証の必要性が高くないものがあること

 などです。必要に応じて内容証明郵便と普通郵便や書留郵便を使い分けることが大切です。

不倫の慰謝料請求を内容証明でするメリット・デメリット

メリット

送付した事実=請求した事実を証明できる

 送付したことを証明できます。家まで届いたことが証明できるので、後で受け取った、受け取っていないというトラブルにならず、裁判でも簡単に立証が可能です。

 厳密には、時効や解除における解除の起算時などを除き、厳密に送付した事実を証明しなければいけないケースは、それほど多くありません。

 例えば、不倫の慰謝料請求では、不倫による慰謝料請求権が3年の時効にかかりそうであれば、必ず内容証明を送ったほうがいいといえます(この場合、受け取らない、引っ越していたなどの可能性もあるため、訴訟提起も急ぐべきです。)。

 しかし、そうでないケースでは、内容証明によらなければいけない理由は必ずしもありません(実際、メールやLINEでやり取りをしているケースも見かけます)。 

 とはいえ、弁護士でなければ判断は難しいので、悩んだら内容証明を送付する方がいいといえます。

支払わなければならない、という心理的効果

 この記事の冒頭でも、内容証明と聞くと、驚いて不安になる方がいるというお話をさせていただきましたが、これが内容証明で送る効果です。

 通常の手紙に比べると、心理的な威圧感があることから、相手方もきちんと対応しないといけない、という気持ちになりやすく、行動を促すことができます。

デメリット

写真や表などは同封して郵送できず、所定の書式に従って作成した文書以外入れられない

 不倫の慰謝料請求をする際、一緒に写真を入れたい、細かい経緯を書いた文書や資料を入れたいと思っても、内容証明ではこれらの書面を入れて送ることはできません。

相手が過剰反応するおそれ

 先ほどのメリットの裏返しですが、内容証明による送付は、相手方に過剰な反応をされるおそれがあります。

 まずは円満に、とかんがえていたり、こちらが請求されている側の場合には、内容証明によらずに送付することも検討した方がいいといえます。

送付に手間がかかる。

 通常の郵便であれば、自宅で作成し、封筒に入れて、切手を貼ってポストに入れれば送付できますが、内容証明は書式に制限があり、また(通常の場合)郵便局でチェックをするため、送付に手間がかかります。

 混んでいる郵便局では、1時間程度かかる場合もあります。

内容証明が届いた場合

 送られてきた場合の対応は、普通に手紙が届けられた場合と同じです。内容を確認し、内容が正しいのであればそれを前提に対応しないといけないですし、内容が誤っているのであれば、きちんと反論などをします。

 注意点として、特に弁護士から内容証明が送られてきた場合には、対応しない場合には裁判を起こされる可能性があるため、内容を踏まえて、こちらも弁護士へ相談するなど適切に対応する方がいいといえます。

まとめ

 内容証明の意義をきちんと理解して、適切に利用することや、受け取られた場合もあせらずに対応することが大切だと思います。