別居した後に交際を開始したら,慰謝料は払わなくていい?

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想定されるケース

ケース1 別居後に不倫がわかったケース

 A女さんは,B男さんから,離婚したいと言われました。

 A女さんがこれを断ったところ,B男さんは,しばらく離れて生活したいといい,自宅を出てアパートを借りて生活し始めました。

 A女さんは,離婚に至る理由に心当たりがなかったことから,色々と調べてみたところ,B男さんは,C女さんと交際していることが明らかになりました。

 A女さんは,交際していることはわかりましたが,その交際が別居前から始まったことなのか,別居後に始まったことなのか,わかりませんでした。

ケース2 離婚の話し合い中のご相談のケース

 D男さんは,E女さんと結婚していましたが,性格の不一致から離婚したいと思い,弁護士に依頼して別居を開始し,離婚に向けた話し合いを続けています。

 D男さんは,弁護士から,E女さんが離婚に同意しない限り,当面の間は離婚できずに,別居したままの状態が続くと説明を受けました。

 D男さんは,もし,離婚の話し合いがまとまる前にいい出会いがあったらどうすればいいのか,疑問に思いました。

別居と慰謝料

問題の所在

 不倫による慰謝料は,婚姻関係が破綻していれば認められないというのが裁判所の判例です。では,例えば,別居していれば,もう婚姻関係は破綻しているとして,慰謝料は認められないという結論になるのでしょうか。別居後に不倫の事実が明らかになり,いつ始まったのかわからないケース1のA女さんの場合はどうでしょう。

 逆に,ケース2のD男さんのように,弁護士を入れていても,離婚していなければ出会いを求められないとなるのでしょうか。

婚姻関係の破綻と別居

 裁判所は,別居を,婚姻関係が破綻したことを基礎付ける事情の一つとして位置付けていると考えられますが,別居があれば直ちに婚姻関係が破綻したと考えているわけではありません。

 簡単にいうと,別居していれば婚姻関係が破綻しているとは認められないが,別居は一つの考慮要素として考えているということになります。

 例えば,別居とともに鍵を取り上げられた,といった事情や,別居後期間が経っている,お互い離婚に向けた話し合いをしているなどの事情があれば,破綻したという方向に傾く傾向にあり,逆に夫婦生活をやり直そうという方向で話し合いが行われていたのであれば,これは破綻していないという方向に傾くというように,別居を含めた夫婦の関係を踏まえ,破綻していたかどうかが判断されます。

破綻が認められるのは難しい

 では,実際に,破綻が認められるかどうかという点から考えると,破綻が認められる場合は限定的に考えられている傾向にあり,その理由は2つ考えられます。

破綻が認められづらい?2つの考えられる理由

 一つは,裁判所の破綻についての考え方は,概要としては「婚姻関係が完全に破綻し,その修復の見込みがない場合」であり,このことは,夫婦関係を「客観的に」判断する傾向にあるためです。

 例えば,夫婦の一方がもう離婚する,やり直す可能性はない,との考え方を持っていたとしても,それだけでは,破綻したとは認めない傾向にあります。

 また,もう一つは,裁判所の考え方として,破綻していると認定した場合には慰謝料は認められない=0円となるけれども,破綻していないが円満ではなかった,破綻の危機にあった,などの認定となった場合には,その事情を考慮して慰謝料を減額するなど,事案に応じた解決が可能である,という考え方によっていると思われるためです。

ケース1,ケース2の場合

 ケース1のA女さんの場合,別居の経緯や交際が発覚した時期などによっては,十分に慰謝料が認められる可能性があります。

 ケース2のD男さんの場合,離婚に向けた話し合いが行われているのみでは破綻しているとは言えず,その意思がD男さんのみの意思なのか,E女さんも離婚したいと考えているのかなど,様々な考慮要素を踏まえて判断されることとなります。

 そのため,D男さんとしては,状況によって不倫と判断される可能性があるため,離婚が決まるまで,きちんと事情を説明した上で,交際は控えることが最善といえます。

慰謝料との関係

 破綻が認められないとしても,慰謝料の額に影響を及ぼすこととなるため,夫婦関係は裁判において重要な争点となりがちであり、話し合いの材料にもなる部分です。

 そのため,当初から、夫婦関係に関する事実関係や立証可能な事実を検討し、破綻に至っているとまでいえるのか,十分に検討する必要があります。

不倫の慰謝料を減額するポイント

 不倫の慰謝料を減額する交渉におけるポイントをご説明します。交渉ができる弁護士は、意識的に、又は無意識に、以下のことを実践している印象です。

不倫の慰謝料額だけの話し合いをしない。

 不倫の慰謝料に関して、できるだけ減額する方向で交渉するコツは、慰謝料額だけを話し合わない、ということです。

 不倫の慰謝料の金額をいくらにするか、という1つの論点だけを話し合っていたのでは、「高い!」、「安い!」、「もう一声」など、ただの値切交渉になってしまいます。

話し合いのイメージ

 不倫の慰謝料に関する話し合いを交渉という観点で見たとき、大切なことは、交渉における「論点」(話し合わなければいけない点)を増やして、その他の部分で譲歩する(譲歩したように見せる)ことで、金額について減額させる、ということになります。

 そのためには、以下の手順を踏むことになります。

「論点」があることを発見する。

 不倫の慰謝料について、金額以外に話し合いの材料に使える内容を発見します。この際、この内容は、相手にとっては大切だけれども、こちらにとってはどちらでもいい、ということであればなお望ましいです。

「論点」を相手に意識させる。

 相手に、不倫の慰謝料以外に、この点についても話し合わなければいけない、ということを認識させます。

 その点が、相手にとって非常に重要である、ということをアピールできればなおいいです。

「論点」について譲歩する(譲歩したように見せる)代わりに、減額を求める。

 その「論点」について、相手からの要望を引き出したうえで、こちらがその点を譲歩する代わりに、不倫の慰謝料の金額を減額するよう求めます。

具体的な「論点」について

 具体的にどのような点が「論点」となるかは、個別のケースによって異なりますので、実際にご相談の際に弁護士にご確認ください。

まとめ

 破綻に関しては,裁判所が明確な基準を示しているわけではなく,どのように判断されるか極めて難しい部分となります。

 あなたのケースで不明な点があれば、安心して相談できる60分無料法律相談を実施しておりますので、あいなかま法律事務所へご相談ください。

参考記事 不倫に関して無料相談したいときの弁護士の選び方