離婚したかどうかで変わってくることがある、不倫の慰謝料の金額。

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 不倫の慰謝料は、婚姻関係を悪化させ、これを破壊したことから、それに対する損害賠償として認められるものです。そのため、不倫により、どの程度婚姻関係が悪化されたのかは、慰謝料の考慮要素となるとされています。

 そこで、以下では、不倫が夫婦関係に与えた影響がどのように考慮されるのかを、実務の判断を見ながらご紹介します。

離婚や同居をしていないことを慰謝料の減額事由(消極要素)とした裁判所の判断

 東京地方裁判所平成16年1月28日判決は、夫婦が経済的な理由などから、離婚も別居もしていないことを、慰謝料の減額事由(消極要素)にあたると判断しました。

 このケースでは、裁判所が認定した不倫期間は2年程度でした。

 既婚男性は、交際した不倫相手の女性の歓心を買うために、高額のプレゼントを渡すことを繰り返したり、退職金の半額を女性に渡していたようです。

 また、原告は、妻及び夫(渡した金員の返還請求)であり、妻と夫が一体となって女性に請求している、やや特殊な事案であったといえます。

しかし,原告らが,経済的側面もあってか,現在も離婚及び別居をしていないことは,高額な慰謝料額を算定するには消極要素とせざるを得ない。

東京地方裁判所平成16年1月28日慰謝料等請求事件( 平成15年(ワ)第3140号  ) 

 裁判では、女性に渡した退職金については、贈与であるか、貸付であるとしても不法原因給付であり返還請求は認められないと判断されました。

 なお、認められた慰謝料の金額は、不貞期間2年程度に対して金250万円と、比較的高額でした。

どの程度考慮されるか。

 上記のとおり、裁判例において、不倫が夫婦関係に与えた影響は考慮されるといえます。

 しかし、上記のケースで、離婚していた場合にどの程度の慰謝料が認められたのかはわかりませんし、不倫期間2年間で離婚していないケースにしては慰謝料は高額であると思われます。

 不倫の慰謝料は、交通事故の慰謝料のような定式化がされておらず、事案や裁判官により判断の振れ幅が大きいこともあり、離婚していないから慰謝料は高額にならないとは必ずしもいえず、注意が必要です。