不倫の裁判でされる弁解。 2人で一緒にいたことについて

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 不倫の証拠として、配偶者が異性の家やホテルなどの密室で、一定時間過ごしていた証拠が提出される場合があります。例えば、アパートを入ったときと出たときの写真などです。

 そして、この際に、一緒に部屋にはいたけれども、不倫はしていないとの弁解(言い訳)がされるケースがあります。

 そこで、裁判になったケースで、裁判所で、どのような言い訳がされたか、そしてそれを裁判所がどのように判断したか、見ていきたいと思います。

数人で話をしていたとの弁解

概要

 夫が、妻の不倫相手と思われる男性(A男とします)の家(アパート)に深夜から早朝にかけて張り込んでいたところ、午前5時ころに妻とA男がアパートから出てきました。

 裁判で、A男側は、飲み友達を含めて早朝まで談笑しており、帰りを送るため、アパートから出てきたにすぎないと主張しました。

裁判所の判断

 裁判所はこれに対して、以下のとおり判断しました(上記事実関係に即して、登場人物の名前を変更しています)。

 仮に、A男の主張するとおりであるとすると、A男及び妻は、狭いワンルームのマンションにおいて、男女四人が、深夜から明け方まで、数時間にわたって、酒を飲み、談笑していたというのであるから、隣室等の住人に多大な迷惑をかけているはずであり、分別盛りの齢四〇歳前後の社会人の行為としては極めて非常識で、あまりにも考えにくい愚行である。

 二人が早朝連れ立って出て来たその直前に、A男と妻との間に情交関係があったか否かについて、当裁判所としては、これをいずれとも決することを避けるが、いずれにしても、被告と春子との不倫行為の存在を推認させる間接事実であることに変わりはない。

東京地方裁判所 平成9年(ワ)第20985号 慰謝料請求事件 平成10年5月29日判決

 上記のとおり、数人で談笑していたという弁解は、非常識で、あまりにも考えにくい愚行であると断じています。

 非常識で愚行であるからその事実はありえない、という判断は裁判所の事実認定として妥当でないと思われますが、裁判所が談笑していたという弁解に対して受ける印象は、上記のとおりと思われます。

 なお、上記では、情交関係(性交渉、不貞行為)があったかの判断は避けていますが、その後のやり取りなどの事実関係を踏まえて、上記までにA男と妻との間で不倫があったと判断しています。

自宅の修理?に行ったとの弁解

概要

 夫が、その部下の不倫相手と思われる女性(C子とします)と、C子の自宅近くの公園に行ったり、複数回にわたり、夜間に、C子宅へ訪問してしばらくとどまっていたケースです。

 夫側は、会社の経理についてアドバイスをしたり、不審者が現れたと相談を受けて様子を見に行ったり、自宅の修理のために訪問したと弁解しました。

裁判所の判断

 裁判所は、いずれの弁解も、いずれも不合理であるとして、

 …被告が夜間等に訴外I方を訪れたことの理由としては到底首肯しうるものとは言い難く…

東京地方裁判所 平成14年(タ)第774号 離婚等請求事件 平成16年9月28日

 と判断しました。

 なお、このケースでは、不貞行為があったかどうかについては、以下のとおり述べていますが、明確な認定は避けています(人物の表記は、概要の記載に合わせて修正しています。)。

…その理由の説明として不十分であること前判示のとおりであり,また,そうである以上,C子の自宅という外からうかがい知ることのできない閉ざされた場所でC子と夫が二人だけで夜の時間を過ごしたという事実それ自体,夫の妻に対する背信行為といわざるを得ない。

東京地方裁判所 平成14年(タ)第774号 離婚等請求事件 平成16年9月28日

 そのうえで、その前後の経緯や諸般の事情を考慮して、慰謝料を200万円と認定しています。

たまたま同じホテルに泊まっていたとの弁解

概要

 同じホテルから出てきたことについて、別々の部屋に宿泊しており、偶然チェックアウトの際に一緒になったと弁解した事案です。

裁判所の判断

 裁判所は、以下のように判断し、また証拠として提出された宿泊証明書が不自然であるなどとの理由から、弁解を認めませんでした。

 …同一のホテルに同日,別々の室に偶然宿泊し,かつ,翌日の午後2時すぎころたまたま出会ったというのはあまりにも不自然であると言わざるを得ない。

東京地方裁判所 平成18年(ワ)第21158号 慰謝料請求事件 平成19年5月31日

登山に行くとの弁解

概要

 夫が、妻の不倫相手と思われる男性(B男とします)が、2日分の、早朝に、妻の引っ越し前の家の近くに止まっている車の写真を提出しました。

 これに対して、B男側は、いずれの日も、早朝、そこに車を止めて近くの山に登山に行ったと弁解しました。

裁判所の判断

 裁判所はこれに対して、季節や時間からして、その時刻に自宅を出て登山をすることはあり得ないと判断しました。

2人でいたことの弁解がされたときのポイント

 上記のほか、裁判では、2人で一緒にいたことについて、様々な弁解がなされることがあります。

 その際のポイントは、2点です。

一緒に泊まったら不倫とはいえない。

 一緒に泊まったという事実は、不貞行為(不倫)が行われたことを強く推認させる事情ですが、弁解ができなかったからといって、直ちに不貞行為が立証されるわけでは必ずしも言い切れません。

 実際、上記事例でも、2人でいたケースで、不貞行為があったとの明確な認定は避けているケースがあります。

 そのため、二人が親密であるといった事情などを合わせて主張する必要があります。

一緒に泊まったことが不倫を推認させる。

 不倫の立証責任は慰謝料を請求する側にあるとはいえ、2人でいたことや、その場所、時間などから、十分に説明ができなければ、その供述態度を合わせて不倫があったと推認される可能性もあります。

 そのため、合理的な経緯を丁寧に説明する必要があります。

 これまで上げられてきたような弁解は、ご覧いただいてわかる通り、なかなか認められません。

 不自然な弁解は、審理を長期化させ、また不自然な弁解をしたことを理由として慰謝料が増額されることにもなりかねません。

 登山の弁解のケースであれば、登山が趣味であったり、これまでも数人で登山に行ったことがあったという事情などを丁寧に裁判所へ説明する必要があるといえます。

まとめ

 不倫の慰謝料の請求にあたっては、2人でいたことを立証することは、非常に重要です。そして、想定される弁解をあらかじめ予想し、その可能性を事前に検討しておくことも、同様に重要です。

 慰謝料請求をするにあたっては、請求前に弁護士へご相談し、相手方の反応を想定して主張の計画を立てるべきだといえます。