不倫慰謝料の示談書(和解書、合意書)を作ろうと思っている方が知っておくべきこと。

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

 不倫の話し合いがまとまった際、文書で話し合いの内容を残すことが多いと思います。

 ご相談でも、どのような書面を残した方がいいかと質問されることがあり、内容についてご説明させていただいております。

 今回の記事は、書面を作成する際のポイントをご説明します。

書面は必ず作成しましょう。

 絶対に、書面を作成してください。支払う場合も受け取る場合も、きちんと書面の作成を求めましょう。

 書面を作成しないで金銭のやり取りをすると、のちにその金銭がどういった目的で渡されたものなのか、大きな問題となる場合がありますし、受け取った受け取っていないというトラブルや、脅されて支払わされたなど言わるおそれもあります。

書面のタイトル

 多くの方が、書面のタイトルを気にします。

 文書のタイトルのつけ方は、その下に記載された内容が、二人で話し合って納得して署名押印したということがはっきりとわかるタイトルにすれば、細かなニュアンスの違いはそこまで問題になりません。

 よく用いられるのは、和解書、合意書、示談書、確認書などです。 

書面の内容

 不倫を認めて慰謝料を支払う旨の内容の場合には、おおむね以下の要素が入ることとなります。

 条項が多く複雑なものがいいわけではなく、シンプルで必要なことをきちんと記載してあるものが、いい合意書といえます。

 その上で、絶対に欠かしてはいけない部分は、以下の①③④⑦です。

① 何についての和解か(事実関係の確認)

 何についての話し合いをしたのかを明確にすることが大切です。

 不倫慰謝料のケースは、不倫慰謝料に関する損害賠償請求権(債権)があり、これに対して金銭を弁済することになります。

 かみ砕いていうと、お金をもらう理由がある(債権)からお金を払ってもらう(弁済)という関係です。

 そのため、なぜお金をもらう理由があるのか、ということが、書面上からわかるようにしておかないといけません。

 不倫があったことをきちんと明記することで、不倫の慰謝料だということが初めてわかるのです。

② (謝罪)

 謝罪を求めている場合には、気持ちの問題として、謝罪文言を入れることがあります。謝罪に法律効果はありませんので、弁護士が作成する場合には、話し合いの結果、記載しないことも多いといえます。

 弁護士を入れずに作成した場合には、入っていることの方が多い印象です。

③ 慰謝料の支払額

 お金に関して法律上重要な要素は、「誰が」、「誰に対して」、「いくら」の債権債務があるかであり、これが判らないと、そもそも書面を作成しても、法律上の効果が生じません。

 ただし、不倫慰謝料の合意書では、誰が誰に対してという部分は比較的明確ですので、特に注意すべきは、「いくら」の部分です。

 特に、個々の部分で、色々と条件を付けたくなる(今後会ったら増額する、など)かもしれませんが、逆に条件を付けることであいまいになってしまうので、まずは明確な金額を記載します。

 そのうえで、条件はのちに項目として追加しましょう。 

④ 支払い方法

 分割なのか一括なのか、期限はいつまでか、どのように支払うか(現金か振込か、振込先はどこか)などを決めます。

 たまに、6月とだけ書かれているものを見ますが、日付や末日との記載がないといけません。

 あと、一般の方の誤解あるあるをご説明すると、期限が何も書かれていない場合には、期限の定めのない債務として、請求された時点で全額を支払わなければいけないこととなります(民法412条3項)ので、特に請求されている側の方は、必ず期限を入れましょう。

 その場で受け取った場合には、書面中に、「交付し、受け取った」旨を記載することもあります。

⑤ 支払わなかった場合の利息など遅滞条項

 特に分割の場合で支払いが遅れた場合、どうするのか(何度支払いが遅れたら一括で払うのか)などを決めます。

⑥ (接触禁止など細かな条件)

 お互い接触しない、第三者へ口外しない、など、様々な条件を加えることがあります。

 第三者へ口外しない条項は、双方にメリットがあるため、入れられることが多い条項です。

 接触禁止などに、さらに違約金条項を加えることもあります。

⑦ これ以上はお互いに請求しないこと

 これで終了、ということを明記します。これがないと、まだ足りないといわれるおそれがあります。

まとめ

 インターネット上には、ひな形が記載されていることもありますし、そのひな形でことが足りるケースも多くあります。

 しかし、それぞれの条項で必要な内容をきちんと理解して作成しないと、作ったつもりでも大切なことが欠けていた、ということになりかねませんので、弁護士へご相談ください。