不倫慰謝料請求の裁判の実際の流れ、裁判所に提出する文書や実際の審理の内容が知りたい方へ。
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不倫の慰謝料を請求したのだけれど、相手が支払わないから裁判をしたい、逆に、不倫の慰謝料を請求されているのだけれど、支払えないと言ったら裁判をすると言われてしまい困っているなどのお気持ちの方はいらっしゃいませんか。
いざ裁判をしようと思っても、「弁護士に依頼すると費用がかかるし」、「自分で裁判できるんじゃないか」、などと思い、弁護士を頼むかどうか決める前に、裁判がどういったものかを知りたいという方もいらっしゃると思います。
そこで、そのような方のために、不倫の裁判の流れやその際の注意事項をご説明しますので、ご参考にしてください。
実際には、場合に応じてその他いろいろと考えなければいけないことがありますので、ご注意ください。
不倫の裁判の流れ
不倫の裁判の流れは以下のとおりとなります。なお、裁判所ホームページでも、裁判の流れを図で説明したものが掲載されています。
訴状提出
裁判所に、誰を相手にどのような請求をするのか、なぜ請求する権利があるのかを記載した「訴状」を提出します。
訴状の記載内容
訴状には、請求の趣旨という項目に、いくら請求するのかを記載したうえで、請求の原因という項目に、不倫がいつあったのか、不倫によりどのような損害が発生したのかなどを詳細に記載し、不倫の事実の立証やその他必要な証拠をつけて提出します。
訴状はとても大切
訴状は一番初めに裁判官が読む書類であり、印象に残るものであるため、裁判官に事実関係をわかりやすく伝え、また法律上の根拠があることを明確にして記載する必要があります。
裁判所の種類
裁判所は、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所の5つの種類に分かれています。
このうち、不倫の慰謝料に関する裁判を起こす可能性がある裁判所は、地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所です。きちんと審理してほしいからなどの理由で、初めから高等裁判所や最高裁判所で裁判を起こすことはできません。
また、家庭裁判所に不倫の慰謝料に関する裁判を起こすことができる場合は、離婚の裁判と併せてする場合のみです。
そのため、通常は地方裁判所か簡易裁判所となります。
地方裁判所と簡易裁判所の違いは、金額です。140万円以下の請求は簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所となります。不倫の慰謝料を請求する裁判は、通常、140万円を超える請求を起こすことから、地方裁判所に提起するケースが大多数です。
訴状の提出先
地方裁判所に訴状を提出するケースを考えます。
それでは、全国に地方裁判所はいくつあるか、ご存じですか。
地方裁判所は支部を含め203か所(2019年5月17日時点)あります。
地方裁判所は、管轄と呼ばれ、それぞれ担当する地域が決まっており、その地域に関係する事件を取り扱うこととなります。
いま、その地域に関係する事件とぼかした部分をもう少しご説明すると、裁判所は、その地域に関係する事件を取り扱います。
そして、事件によって、どの地域に関係するのか、というルールが決まっています。
例えば不倫の慰謝料の裁判では、通常、被告の住所地、原告の住所地、不法行為発生地が、その地域に関係する事件となります。
例えば、東京都中央区に住んでいる方が、船橋市に住んでいる不倫相手に裁判を起こす、不倫は船橋市の不倫相手の自宅で発生した、というケースでは、この不倫事件は東京都中央区及び船橋市に関係する事件となります。
そして、東京都中央区の事件を取り扱う裁判所は東京地方裁判所、船橋市の事件を取り扱う裁判所は千葉地方裁判所となりますので、このどちらかに裁判を起こすことができます。
その他
また、この際に、相手方の送達先(書類の送り先)を記載する必要があるため、相手方の住所を調べる作業も重要になります。
呼び出し
裁判所は、訴状を受け取り、形式上問題ないと判断したら、裁判の日程を指定して、これを相手方へ送付します。書類が届かない場合や受け取らない場合には、特別な手続きが用意されています。
第1回裁判期日
先ほどの呼び出しの日に、実際に裁判が開かれます。これを「期日」といいます。
裁判には、当事者の双方(弁護士をつけた場合には弁護士のみでも良い)が出席する必要があります。
ただし、第1回は呼び出された方の意向を聞かずに決めているため、すでに予定があり出席できないことも考えられるため、書面を提出したうえで出席しないことも可能となっています。
ですが、書面を提出しない、または2回目以降も出席しない場合には、出席しないことにより請求内容をすべて認めたとみなされることにより、出席しない方が負けます。
第2回以降の裁判期日
まずは、お互いに争っているところ、言い分が異なるところ(争点といいます)をはっきりとさせるため、書面を裁判所に提出する方法で、お互いの言い分を戦わせます。
それと併せて、お互いの言い分の裏付けのため、持っている証拠を提出します。
この後の裁判の流れとしては、私は、以下の3つのパターンで整理しており、ご相談の際には以下のように説明しています。ただし、それぞれの事件で様々なパターンをたどるため、大きな枠の中での整理という形でご理解ください。
1 不倫の事実を認め、慰謝料についての双方の認識に大きな差がない場合
この場合には、慰謝料の額や支払い方について細かな調整を行い、合意ができれば和解となります。金額に大きな隔たりがない場合には、比較的短期間に終了することが多いといえます。
ただし、金額に折り合いがつかなければ、のちに述べる証人尋問を経て判決となる場合があります。
裁判上の和解についてはのちにご説明します。
2 不倫の事実は認めたが、お金がないなどの理由で慰謝料の金額に隔たりがある場合
この場合には、双方に歩み寄りの余地がないかを協議します。金額に隔たりがある場合には裁判所からある程度の幅を持った金額について提案がされることもあります。その他、分割払いでの対応や、一部を一括で支払うことができないかなどを協議します。
この中で話し合いがつけば、和解となり、話し合いがつかなければ証人尋問へと進みます。
3 不倫の事実を認めない、またはその他の理由により慰謝料の支払いを拒む場合
不倫したとされている側が、不倫していないと主張する場合やその他の理由で慰謝料を支払わないと言っている場合には、話し合いによる解決が見込めませんので、双方における対立点(争点)を明確化した段階で、証人尋問を行います。
和解
裁判所で話し合いによる解決ができた場合には、その話し合いの内容を、裁判所が和解調書という形にまとめます。
裁判外での手続きと異なり、裁判所が和解の成立を認めるため、双方がハンコを押すなどの手続きは必要ありません。また、裁判所が作成した書類であるため、和解の成立にもかかわらず支払いがされなかった場合には、強制執行を行うことが可能です。
和解の話し合いでは、話を詰めるため、弁護士だけではなく、当事者ご本人が裁判所に来て、裁判官と直接話をすることもあります。
証人尋問(当事者尋問)
参考記事 民事事件の証人尋問の流れ
不倫の慰謝料の金額が折り合わない、または不倫自体について争いがあり慰謝料を支払わないとして言い分が対立しており、話し合いによる解決が難しい場合には、証人尋問へ移行します。これは、テレビで見るような、裁判所の法廷で双方の当事者や必要があれば関係者から話を聞く手続きとなります。
まずは双方の弁護士が質問し、最後に裁判官が補充で質問するのが通常の流れとなります。
金額に隔たりがある場合には、不倫の経緯などが問題となりますし、不倫の事実自体が争われている場合には、不倫に関する証拠を踏まえ、その証拠から不倫の事実が認められるかどうかについて、質問していきます。
経験や考え方で方向性に大きく差が出て、結論を左右することもある大切な場となります。
証人尋問の後、裁判所から和解の可能性について改めて打診される場合があります。和解が難しければ、判決となります。
判決
裁判官が、証人尋問の結果やそれまでの証拠のすべてを見て、双方の言い分を踏まえて判断します。
裁判所は、一括で支払うという内容しか命じないため、分割にしたいという要望や、今後接触しないなどといった条項を判決で命じることはできず、柔軟な解決は難しいといえます。
判決がされると、裁判はいったん終了となります。
控訴、上告
判決に不服がある場合、高等裁判所で改めて審理を求めることができます(控訴)。また、高等裁判所の判断に不服がある場合には、最高裁判所の判断を求めることも可能です(上告)。
ただし、控訴や上告は、一度された判断を覆す事情が必要となるため、ハードルは高いといえますし、最高裁判所に対する上告は、制度上別の障害もあり、さらに難しいといえます。
ご自身で弁護士を頼まずに裁判をされようと考えられている方へ
もし、ここまで読まれた方で、ご自身でやってみようかなという気持ちになられた方のために、私が考えるご注意事項をお伝えします。これをすべて守ればいいというわけではございませんので、ご自身で対応される場合には慎重に、きちんと一つずつ調べながらご対応してください。
訴状、答弁書は非常に重要
請求する場合に提出する訴状や、請求されたときに提出する答弁書(または実質的な内容を記載した第1準備書面)は、裁判官がこちらの言い分を初めに見る書面となり、非常に重要です。
また、請求する場合であれば、請求を支える「要件事実」とよばれることをすべて書く必要がありますし、請求されている場合であれば、法律上意味がある反論をきちんと整理して書く必要がありますので、いずれの場合であっても前提となる法律上の制度を正確に理解したうえで、過不足なく記載する必要があります。そのため、作成には非常に時間をかける必要があるといえます。
裁判への出廷
裁判の期日には、出廷する必要があります。2回目以降の日程は、双方の希望と裁判所の予定を踏まえて決めることとなりますが、平日の日中となります。また、裁判所は、それぞれの裁判官ごとに開廷日と呼ばれる裁判を行う曜日が決まっており、原則としてこの曜日にしか裁判所は期日を指定しません。
例えば、東京地方裁判所の開廷日はこちらのとおりとなっています。
また、都合がつかなくなったので変更してほしいということは、 顕著な事由がある場合に限り許すとされており、規定上は難しいといえます。 事実上対応してもらえるケースはないわけではありません。
準備書面(反論書面)の重要性
相手方の言い分に対しては、反論をしていくこととなります。必要があれば証拠を提出し、また法律上の問題点を指摘することとなります。
反論は様々な分野に及び、必要があれば過去の裁判例を多数調べて、裁判所の判断を分析し、最も裁判所に認められる主張を記載する必要があります。弁護士はほとんどが有料のデータベースを利用していると思います。一般向けの有料のデータベースを活用するか、国会図書館では、判例検索が利用できるようです。
また、専門書や論文については、一般の図書館では対応できない場合や大手の本屋でもなかなか手に入らないことがあります。専門書や論文の調査に関しては、法学部のある大学図書館であれば調査できると思います。
これらを分析したうえで、事実関係を整理し、準備書面にまとめて提出することとなります。口頭で裁判所で説明することもできなくはないですが、まとまった事実関係や法律上の主張を述べるためには書面は必須と考えてください。
証人尋問の準備
弁護士が入っている場合、証人尋問は依頼している弁護士が質問する形式で行いますが、弁護士が入っていない場合には、初めに裁判官が質問する流れが一般的です。裁判所によってやや対応は異なりますが、裁判官が必要と考えることのみを質問し、それ以外の発言は認められないので、ご自身の述べたいことを述べられない可能性があります。
また、多くのケースで、ご自身がお話ししたいことと裁判で重要なことはかなりずれているので、ご自身が話したいことを話すという形では、いい結果は望めません。そのため、裁判官が問題と思っていることを事前に考え、どのように説明すれば裁判官が理解しやすいかを想定したうえで、尋問に臨む必要があるといえます。
その他手続き
裁判所に提出する書類、証拠は、所定の手続きに従い必要な部数を提出する必要があります。
この点は、裁判所に確認すれば教えてもらえます。
自分でするかどうか。
上記のとおりとなりますので、ご自身で対応する場合には、上記のすべてをこなす必要がありますのでご注意ください。
ご対応が難しいと感じられた場合には、弁護士へのご依頼を検討ください。
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