離婚したと聞かされて交際に応じたが、実はまだ結婚していた事例

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検討するケース

 A男さんは、その妻であるX女さんとと結婚して数年ほど経過しており、子どもがいました。しかし、A男さんは、Y女さんに対し、離婚したと嘘をついて結婚を前提にした交際を申し込み、Y女さんはこれに応じてX男さんと交際を始めました。

 交際後1か月ほどたったのち、Y女さんは、A男さんが離婚していないことを知り、その日に交際を解消しました。

 このような場合、Y女さんは、X女さんに慰謝料を払わなければいけないでしょうか。

(この事例は、東京地方裁判所平成21年1月27日判決をベースにしています)

不倫の慰謝料が認められるか。

不倫の慰謝料が認められる条件

 別の記事でご説明しましたが、不倫の慰謝料の請求が認められる(慰謝料を支払わなければいけない)ためには、不倫をした人に、不倫をしたことに対する故意または過失があることが必要です。

 故意または過失というと、大げさに聞こえますが、平たく言うと、不倫であることを知っていた(故意)か、不倫であるとは知らなかったのだけど、事前に十分に調査をしなかった(注意義務違反≒過失)ことが必要ということになります。

 そのため、上げた事例では、Y女さんが、A男さんが離婚したと過失なく信じていた(A男さんが結婚していることについて過失なく知らなかった)、交際前に十分に注意して、離婚していると判断していた場合には、Y女さんには不倫をするという故意がなく、また過失もないため、損害賠償請求は認められないことになります。

実際の裁判所の判断

 しかし、ただX男さんから離婚したと聞いていた、というだけでは、十分な調査を尽くしたとはいえないのが実情であり、先ほどのケースで上げた裁判例でも、Y女さんに過失があるとしています。

慰謝料がいくらになるか。

 Y女さんもA男にだまされた面がありうること、また、離婚していないことを知った後は速やかに交際を解消しているという事情があることもまた事実です。

 このような場合には、裁判所は、事情を考慮して、Y女さんが支払うべき慰謝料を減額する傾向にあり、上記のケースでは、300万円を請求した裁判で、裁判所が認めた金額は80万円にとどまります。

 なお、以前の記事で触れましたが、原則としては、A男さんとY女さんは、共同してX女さんを傷つけたことになり、どちらが悪いかという問題はX女さんには関係ない事情と考えらているという話をしておりますが、実際には、このようにY女さんの事情を汲んで、慰謝料の金額を相当程度減額する場合があります。

請求する側、請求される側

 裁判所は、このように、原則を踏まえながらも実態に即した判断をする場合がありますので、上記のY女さんのような方のケースでは、裁判やその前の話し合いでも、きちんとご自身の立場を説明し、また証拠を提出する必要があるといえます。

 逆に慰謝料を請求するX女さんの場合は、上記のようなY女さんの言い分が本当であるのかを相手方にきちんと主張立証させ、必要な事情について反論し、また本当であるとしても、減額しない考え方があることを主張して行くこととなります。

 どちらの立場でも、裁判や交渉においては様々な事情を主張し、これを立証する必要があるため、弁護士に依頼することは重要なケースといえそうです。

参考記事 別居した後に交際を開始したら,慰謝料は払わなくていい?