インターネット上の掲示板に意見、感想が書き込まれた場合の裁判所の考え方。

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 口コミで、「まずい」、「つまらない」など、個人の感想を書かれてしまった。営業に差し障るので削除したいとお考えの方も、いらっしゃるかもしれません。

 削除できるかどうかについては、口コミを削除できるかについて記事を作成しておりますので、こちらをご確認いただければと思います。

 この記事では、裁判所がインターネット上の書き込みをどのように考えているか、という点を、裁判例を基にご紹介したいと思います。

裁判例の紹介

 以下の事案は、東京高等裁判所平成29年(ネ)第1138号 地位確認等請求控訴事件です。

事案の概要

 学校の教員が、インターネットの電子掲示板サイト(2ちゃんねる)へ同僚教員の名誉を毀損する書き込みをしたことを理由として、学校が懲戒解雇したことを不服として裁判になった事案です。

 書き込みの内容は、教員の実名を挙げていますが、抽象的に「相当やばい」などと書き込んだにとどまっている事案です。

2チャンネルへの書き込みの評価

 裁判所は、2ちゃんねるへの書き込みだから信用できないとは考えておらず、2ちゃんねるへの書き込みについて、以下のとおり指摘しています。

 本件投稿は,2ちゃんねるの匿名の電子掲示板になされたものであるところ,匿名の電子掲示板における書き込みは,無責任で根拠のない書き込みもしばしば見られる一方で,真実の書き込みがあることもあり(公知の事実),これらを踏まえて,一般の読者は,各書き込みの内容,その具体性の程度及び表現振りを考慮して,その信用性を判断しつつ,掲示板を閲覧しているものと解される。

 まだインターネットが普及し始めたばかりで、インターネットを使ったことがある人の方が少数派だった時代から知っている方は、2ちゃんねるに書かれていることは信用できないという考えを持っている方もいらっしゃるかもしれません。裁判所も指摘するように、根拠のない書き込みが現在もされていることもあると思います。

 しかし、名誉毀損やプライバシーの裁判に関しては、2ちゃんねるに書き込んだからといって、責任に問われないわけではない、ということになっています。

 ただし、書き込みの内容や具体性を考慮するということが指摘されており、この点では本や雑誌とは違いが生じているといえるでしょう。

意見、感想について

 また、裁判所は、具体的な根拠を伴わない意見や感想については、以下のとおり述べています。ハラスメントに言及されているのは、本件が削除や名誉毀損の裁判ではなく、懲戒に関する裁判だからといえます。

 本件投稿の内容は,Aの実名が書かれているものの,「相当やばい」「捏造」「被害者多数」などといずれも抽象的な表現振りであり,その根拠を具体的に示すものではないから,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,誹謗中傷の域を出ない投稿であると読解するものと認められる。このことは,Aの名誉感情の侵害の程度やハラスメントの程度を減ずるものではないが,Aの社会的評価の低下の程度を考える上では,斟酌されるべき事情に当たるということができる。

 上記のとおり、具体的に根拠が指摘されていない場合、社会的評価の程度には影響が出る、と指摘しています。

具体的根拠を持った指摘かどうか

 裁判例の言及を、もう少しイメージしやすい例えばなしでご説明します。

 例えば、「うちの旦那は稼ぎが悪い」と奥様が井戸端会議で話したとします。

 この言及は具体的根拠が伴わないので、奥様が言っているから間違いないだろうと思う方もいれば、そういっても去年車を買い替えてたから甲斐性がないわけではないだろうと思う方もいると思います。

 では、「うちの旦那は、派遣で働いていて、稼ぎが悪い。」と話したらどうでしょうか。

 一般論として派遣は身分が安定していなくて、ボーナスも出ないなど、正社員に比べて収入が劣っているといえます。

 そして、そのような事実を指摘されると、「稼ぎが悪い」の信用性が高まりますので、なるほどと思う方が多くなるといえます(もちろん、派遣でもその他収入があるなど稼ぎがいいケースもある可能性はあります。)。

 これが、裁判所の「 抽象的な表現振りであり,その根拠を具体的に示すものではないから」との指摘の意味合いになります。

社会的評価と名誉感情の侵害について

裁判所の定義

 裁判所の指摘の中に、「名誉感情の侵害」と、「社会的評価の低下」の2つが出てきます。これは、この裁判例の中で重要なポイントとなります。

 名誉感情とは、「人が自分自身の人格的価値について有する主観的評価」で、社会的評価とは、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」を言います。

具体例

 これだけでは何を言っているのかわからないと思いますので、子どもの喧嘩を例に挙げたいと思います。

 子どもの喧嘩で、「ばーか、ばーか」とののしり合ったりすることが(少なくとも私が子どもの頃は)あったと思います。

 ばーか、といわれた子どもは傷つきますが、実際に賢いか賢くないか、という評価においては、あまり意味がある話ではありません。

 それに対して、例えば0点のテストを取られて黒板に張り出されたらどうでしょうか。

 この場合、子どもは、傷つくとともに、実際のテストが0点であるということが周りの子どもにわかってしまい、あの子は賢くないと思われてしまいます。

 このうち、子どもが傷つくという部分が名誉感情の侵害、周りの子どもにわかってしまい、賢くないと思われてしまうことが、社会的評価の低下です。

裁判における違い

 裁判においては、名誉感情の侵害であれば公然性が不要となるなど、細かな違いが生じます。また、前提として、どちらを主張しているのか(両方主張しているのか)により、裁判所への説明の仕方が異なりますので、意識して主張する必要があります。

参考記事 意見や感想が書かれているだけなんですが,名誉毀損になりますか。

まとめ

 上記からすれば、インターネット上の書き込みについて、事実が記載されているのか、それとも意見や感想だけなのか、という面は、重要な意味を持っています。

 また、事案によっては、どちらに評価するか微妙なケースも出てきます。

 書き込みがされて困っている方がいらっしゃったら、一度弁護士までご相談ください。