転載した先のサイトに対する損害賠償請求はできますか。

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 インターネット上の書き込みなどは,転載,引用,リンク等により,簡単に拡散することができます。書き込みだけなら目立たなかったのに,さらに転載されてしまって困っているという方もいらっしゃると思います。

 しかし一方で,twitterのリツイートや,Facebookのいいねなど,気軽に転載や引用をすることも可能になっており,その際に,リツイートの内容が真実かなどを確かめることまではしていないのではないでしょうか。

そこで,転載,リンクについて,名誉毀損等にあたるかどうか,検討してみました。

参考記事 ネット上の書き込みの削除請求や損害賠償請求の流れが知りたい方へ。

転載についての考え方

転載は,たんに記事があることを伝えるだけではないの?

 転載先のサイトは,たんに転載元の記事の紹介をしているだけというケースもあると思います。それに対して,転載ではあるけれども,転載元の記事の内容について論評したり,そのことが事実であることを指摘したいこともあると思います。

 そこで,転載が何を伝えようとしているのかが問題となります。

一般の読者がどのように読み取るか。

 転載,引用,リンクに関しても,裁判所は,一般の読者がどのように受け取るかを検討して,全体の文脈から判断しています。

 例えば,怪文書を引用した記事について,記事の作成者が,「本件記事は怪文書の内容を引用しつつ,その内容や真実性についての被告の評価を記載したものであり,怪文書の内容を事実として摘示したものではない」と主張したのに対して,裁判所は,「怪文書の内容を引用するのみならず,その信用性を根拠付ける事情も併せて記載されている」ことから,怪文書の内容を事実として指摘したと判断しています。

 逆に,たんに記載に対して論評をしたり,反対意見を記載したりするだけの場合には,転載元の記事の存在を指摘したにとどまるという判断がされる傾向にあり明日。

リツイート,いいねについて

 では,twitterのリツイートやfacebookのいいねについてはどうでしょうか。

リツイートについて

 リツイートについては,ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載しているので,自身の発言と同様に扱われると判断した裁判例があります。

いいねについて

  これに対して,いいねについては,フェイスブックのケースではありませんが,賛同の意を示すにとどまるという判断をしたものがあります。

上記から

 いずれの場合でも,事例判断という要素が大きいため,具体的にどのような流れの中でリツイートやいいねがされているのかを,個別に検討する必要がありそうです。

さらに名誉は毀損されない???

 その他,転載において検討すべきことは,一度公表されていることだから,それ以上名誉が毀損されることはないのではないかということです。

 この点について,裁判所の傾向としては,すでに周知されていることがらについては新たな名誉毀損を否定する傾向にありますが,そうでないケースでは,追加の転載などによりさらに目に触れる機会が増えることを指摘して,名誉毀損になることを肯定する傾向にあります。

 実際,インターネット上で,すでに雑誌として販売された記事を引用しつつ記事を作成したものについて,引用された記事の内容を指摘するものであるとした上で,

既に雑誌の記事等で同旨の事実が摘示され,それによって原告の社会的評価が低下することがあったとしても,インターネット上の本件掲示板にそのような社会的評価を低下させる事実を摘示する情報を発信することにより,原告の社会的評価はさらに低下するというべき…

東京地方裁判所判決平成28年5月10日判例秘書L07131271

 として,名誉毀損となることを肯定しています。

結論

 以上のとおり,転載等でも名誉毀損となる可能性がありますので,転載に関しても困っている場合には,元のサイトと合わせて,一度弁護士までご相談ください。