この書き込みは名誉毀損にあたるの?書込みの意味や内容を考える。

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 書き込みの意味や内容が、スラングを用いていたり、その書き込みだけでは何を言いたいのかわからないケースがあります。

 知っている人が読めばわかる、あわせて読めばわかるといった場合に、全体として名誉毀損にあたるのかを解説します。

書き込まれた内容の意味?

 書き込まれた内容の意味,と言われても,ピンとこないと思いますので,一つ例をあげたいと思います。

 例えば,一連の流れの中で,「不倫www」という文書があったとします。(wwwは、インターネットスラングで「笑う」を表現する言葉です)

 この文書は,それだけ読めば,不倫と発言して笑っているだけの文書です。

 ですが,例えばその前の文書で、誰かの名前が出ているなどした場合には、この文書自体が,不倫していることを指摘した意味に読める場合もあります。

なぜこのことが問題なのか

 ここまで読まれて、前後から読み取れるなら、明らかに名誉毀損に当たるじゃないか、そんなこと考える必要もない、と思われた方もいると思います。

 たとえば、噂や伝聞(人から聞いた話)が書き込まれた場合はどうでしょうか。極めて特殊な環境のスラングが用いられた場合はどうでしょうか。このような場合に、噂だからいい、だめという判断は、どのようにすればいいのか、ということが、今回のテーマです。

書き込まれた文書の意味を考える際の判断基準

 裁判所は,書き込まれた文書の意味を考える際の判断基準として,一般読者の普通の注意と読み方を基準にするとしています。

 とはいえ,「一般読者」のいう,「一般」とは,どのような意味なのかや,実際にどのような判断をされるのかはこれだけではよくわからないと思います。

 以下では,これについて,簡単に触れたいと思います。

一般の意味するもの

 「一般」とは,日本人一般という意味に捉えていいでしょうか。

ネットスラングなど

 わかりやすい例でいえば,「ブラック」との書き込みがあったとき,コーヒーに関する話題の中で出てきたのであれば,ブラックコーヒーを指すだろうといえますが,これが企業に関する話題の中で出てきたのであれば,インターネットスラングでいう「ブラック企業」は,労働法規等を遵守せず過重な労働を強いる企業を指していると考えられます。

 上記の例は,比較的馴染みがあるかもしれませんが,さらに,「プリン」という言葉はどうでしょうか。

 これは,一般には,お菓子のプリンを指すものですが,一部ネットスラングでは,不倫のことを指す場合がありますが,日本人一般に浸透した用語法とはいえません。

 そこで,裁判所は,一般読者について,その表現がされる媒体の読者を前提にした判断をしているようです。

 つまり,「ブラック」や「プリン」という言葉は,その言葉が記載された媒体(例えばネット掲示板)における読者一般の理解を前提に判断されることになります。

疑惑,噂など

 さらに難しい問題として,疑惑や噂があります。

 疑惑として記載した場合に,それが単に疑惑を指摘したものなのか,真実であることを疑惑の形式をとって指摘したのかという問題です。

 例えば,「〇〇が人を殺した疑惑がある」との記事があったとすると,その外観は,疑惑について論じていますが,これが本当に疑惑を述べているだけなのかが問題となります。

 この点についても,裁判所は,一般読者がどう読むかという観点から,記事の内容全体を踏まえて,単に疑惑を述べたに留まるか,それとも真実であると述べているかを判断することとしています。

伝聞

 例えば,「彼の友人が,「彼が不倫している」と言っていた。」という書き込みがあったとします。

 この場合に,書き込みの趣旨が,「彼の友人が言っていた」を指摘しているのか,「彼が不倫している」ことを指摘したいのかを判断する必要があります。

 もし,「彼の友人が言っていた」ことに力点が置かれる場合,このような書き込みが一律に名誉毀損に当たらない可能性もあるため,重要な問題となります。

 この点については,裁判所は,発言者の性質や,その口調などから,一般読者がこの内容を見たときに,発言の内容自体が事実であると述べたいと捉えられるかどうかを重視しているようです。

一般とは

 これまで述べたとおり,一般読者が読んだとき,どう感じるかという基準はありますが,この基準を知っていれば簡単に結論が出るものではなく,前後の文脈など様々な要素を踏まえて内容を検討する必要があります。

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複数の文章を合わせて読むとわかる場合

 似たような問題として,その一文だけでは意味がわからないけれども,複数の文章や過去の記事を合わせて読んだときには,特定の趣旨に読めるというものがあります。

 この場合にも,裁判所は,一般読者を基準として判断するとされています。

 例えば,掲示板の書き込みそれ自体では単に名前が書かれているだけでも,その掲示板のタイトルやそれまでの掲示板でのやり取りを見たときに,一般読者がどのように読むかという視点で考慮されています。

 そのほか,複数の掲示板に渡って考慮される場合もあります。

削除したいと思ったら,弁護士に相談

  これまで記載したとおり,疑惑や伝聞などの場合であっても,名誉毀損にあたる場合があります。

 これらの判断は,過去の裁判例を踏まえてきちんと行う必要がありますので,削除を考えたら,インターネット上の削除請求に詳しい弁護士に相談しましょう。

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