インターネット上で侮辱されました。削除したいですが、可能ですか。

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 インターネット上には,事実を指摘して名誉を毀損したり,意見を述べたりするほか,意見にも至らない侮辱がされるケースもあります。

 このような場合,名誉毀損に当たらないとしても,名誉感情侵害に当たる可能性があります。

名誉感情侵害って何?

 先ほど,名誉感情侵害という言葉を用いましたが,これは,名誉毀損と何が違うのでしょうか。

名誉の種類

 一般に,名誉は3つの種類に分けられると考えられています。

外部的名誉

 人に対する社会的評価をいいます。

名誉感情

 自分が自分に持っている意識や感情をいいます。

内部的名誉

 本人や他人の評価を離れた,客観的に本人に備わっている価値を指します。

それぞれの対象のちがい

 名誉毀損は,社会的評価が低下した場合に成立します。

 これに対して名誉感情侵害は,そのまま名誉感情が侵害されたことを対象とします。

 例えば、「バカ」とインターネット上に書き込まれた場合、この記述のみでは、裁判所は、個人の感想であり周りの人がこれをすぐに信じるわけではなく、社会的評価が低下したとまではいえないと判断する傾向にあります。

 これに対して、「バカ」と書き込まれて、書き込まれた本人が傷つく気持ち、これが名誉感情の侵害です。

名誉毀損と違いを設ける意味

 それでは、なぜ,わざわざ,外部的名誉に対する侵害=名誉毀損と,名誉感情=名誉感情侵害で,異なる考え方をしているのでしょうか。同じ名誉として、まとめて考えてはいけないのでしょうか。

 色々と考えられる理由を挙げてみます。なお,以下の記述は,こ私見を多く含みます。

法律上の規定

 法律上,民法723条は,「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」と定めています。これは,社会的評価が低下したことに対して,元に戻すための方法として適当な処分(謝罪広告)を命ずることができることを定めたものです。

 もし,たんに問題となるのが本人の感情=名誉感情だけであれば,慰謝料を支払わせることはともかく、謝罪広告を出させることは,必ずしも適切ではない(被害の回復に直接つながらない)となります。

公然性について

 インターネット上の書き込みではあまり関係のないことですが,名誉感情は,公開されることがなくても,自分が認識した時点で侵害されます。

 二人きりでも、バカといわれると傷つくということです。

 これに対して,名誉毀損に関しては,周りへ周知される可能性があることが重要となります。二人きりでバカといわれても、周りは誰も聞いていないので、社会的評価は下がらない、という理屈です。

 この点に違いが生じます。

名誉感情侵害にあたるためには

 上記のため,名誉感情侵害にあたるための条件は,名誉毀損とは異なっています。

 その条件は,以下の通りです。

  • 名誉感情侵害行為(多くは侮辱)の存在
  • 社会通念上許される限度を超えた侮辱行為であること
  • 故意過失
  • 因果関係

 そして,これらに対して,抗弁事由がないときに成立します。

 いずれにしても,定型的にこの言い回しはよく、この言い回しはダメだということではなく、その書き込みがされた文脈や状況など、個別の事情を考慮して判断されることとなります。

結論

 上記のとおり,名誉感情侵害にあたるかどうかは,個別の事案を検討しないといけませんので,書き込みがされたという事情があれば,一度弁護士へご相談ください。