ネットで侮辱されたら削除できる?社会通念上許される限度を超える名誉感情侵害とは
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インターネット上で侮辱されて傷ついた、削除したいとお考えの方へ、どのような表現なら削除できるのか、解説します。
社会通念上許される限度を超えるものが,削除の対象になる。
個人の名誉感情を侵害する書き込みは,社会通念上許される限度を超えた場合に,不法行為として削除等ができることとされています。
なぜ、社会通念上許される限度を超えた場合にしか削除できないのかというと,些細な発言であっても名誉感情を侵害する可能性があることから、自由な論評等すらできなくなり,表現の自由に対する過度の制約になってしまうおそれがあるからです。
そこで、社会通念上許される限度を超えるとはどの程度なのかが問題となります。
以下では,侮辱的表現を例に,検討してみます。
裁判例をみていくと
裁判例をみていくと、どのような要素が考慮されているかについての傾向は見ることができますが,ここまでは許される限度を超えない,超えるという明確な線を引くことはできません。
その結果、個々の事案や,それを判断する個々の裁判官のそれぞれの考え方により,若干結論に差が生じているという印象です。
以下では,具体的な裁判例で問題となった表現を少しみてみることにします。
「気違い」との表現について
最高裁判所は,インターネット上の掲示板に書き込まれた「気違い」という表現について,「本件スレッドにおける議論はまともなものであって,異常な行動をしているのはどのように判断しても被上告人であるとの意見ないし感想を,異常な行動をする者を「気違い」という表現を用いて表し,記述した」ものであるとその意味をとらえたうえで、
本件書き込み中,被上告人を侮辱する文言は上記の「気違い」という表現の一語のみであり,特段の根拠を示すこともなく,本件書き込みをした者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,本件書き込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず…
最高裁判所第3小法廷判決平成22年4月13日最高裁判所民事判例集64巻3号758頁
と判断しています。
「気違い」という表現は,精神状態が普通でないことをいい,かなり強い響きを持っているとも思えますが,上記の例では,その使われ方なども考慮した上で,侮辱行為が一見明白であるということはできないと判断しています。
狂気という表現について
それでは,どの程度の表現なら許されるのかというと,東京地方裁判所では,「狂気」という表現について,
狂気とは常軌を逸していることやそのような心のこと等を指す言葉であり,…通常の社会生活において投げかけられることは滅多にないような強い侮辱表現である
東京地方裁判所判決平成28年11月18日判例秘書L07133040
と指摘しており,意味としては似たような表現ですが,その評価はかなり異なります。事案の差があるため,一概には言えませんが,表現がどの程度であれば社会通念上許されるとの基準を明確に示せないことはご理解いただけると思います。
ババアについて
そのほか,「ババア」について,女性に対する侮辱の意味合いを持つ表現を含むものであるとは言え,社会通念上許される限度を超えたとはいえないと判断されたケースもあります。
これも、一般的には、かなり強い侮辱の意味を持つ言葉と思われますが、名誉感情侵害に当たらないと判断がされています。
評価について
見ていただくと、裁判所が名誉感情侵害を認めるハードルが、思ったよりも高いと感じるのではないでしょうか。
これは、先ほども述べた、表現の自由の価値、というものを、裁判所が重く見ていることの表れといえます。
とはいえ,侮辱に関する表現は,社会通念上許される限度を超えると指摘されることが多くあります。特に,容姿・身体的特徴や,性的な言動,そのほか侮蔑的な表現では,社会通念上許される限度を超えると判断されるケースも多くあります。
お困りのことがあれば,一度弁護士へご相談ください。
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