匿名活動と名誉毀損,プライバシー侵害
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最近は,インターネット上で匿名で活動している方もいらっしゃいます。
昔はブロガーが多かったですが,今はyoutuberやニコニコ動画のクリエーターなど,様々な形で活動の幅が広がっているようです。小学生のなりたい職業ランキング3位にyoutuberがランクインしたことで,一時期話題になり,これをきっかけにyoutuberという職業を知った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
インターネット上の削除請求を考えている方の中には,匿名で活動していて名誉毀損をされたり,または実名を明かしていなかったのに特定されたり,住所をアップされて困っている方もいらっしゃると思います。
そこで,匿名活動に特有の問題について,検討したいと思います。
匿名活動という説明ではわかりづらいので,仮装事例として,私が,N.K.M.R.として活動しているという事例でご説明します。
匿名に対する名誉毀損は,誰の名誉を毀損しているのか。
匿名に対する名誉毀損でまず問題となるのは,匿名による名誉毀損が誰の名誉を毀損しているのかという問題です。
誰の名誉を毀損しているのかという問題の一般論については,過去の記事を参考にしてください。
参考記事 誰の名誉が毀損されたのか。
本人と推測できる場合
インターネット上の活動では,自分の名前を公表した上で,インターネット上では別の名称として活動しているケースがあります。
例えば,N.K.M.R.をやっているのが私であると,公表している場合や,明確に名前まで公表していなくても,年齢や弁護士という職業,最寄駅が浅草橋駅,馬喰町駅,馬喰横山駅であるなど,他の情報から容易に推測できるような場合です。
この場合には,私と特定ができているか,少なくとも私を知っている人からすれば私だと特定できるので,私に対する名誉毀損となります。
社会活動を行なっている場合
漫画家や作家は,多く,ペンネームを使って活動をしています。そして,これが社会活動と評価できる場合には,当然に名誉毀損が成立します。
ブロガーの場合
それでは,ブロガーやサイト管理人の場合には,どのように判断されるでしょうか。
この点について,裁判例は分かれておりますが,名誉毀損にならないとしたものとして,やや経緯は特殊ですが,別の人格として振舞っており,対象者の人格とは別であるとしたものがあります。
わかりやすくいうと,N.K.M.R.は,私と別のインターネット上の人物であり,またN.K.M.R.は私と同一であると推測できない,と判断しています。
これに対して,名誉毀損になるとした裁判例もあります。これは,ブログ管理人の名称を指摘してなされた書き込みが名誉毀損に当たるとしています。
小括
上記のとおり,裁判例は分かれていますが,社会活動として認知される程度まで活動している場合(例えばyoutuberとして収入を得ているなど)には,名誉毀損は当然に認められると思われます。
「特定」の問題
匿名で活動を行なっている中には,実名を公開していない,顔を出していないなどのケースがあります。
そして,興味本位から,「特定」する方,例えば氏名や住所を調査し,インターネット上に公開する行為を行う方がいらっしゃいます。
こちらについては,裁判所は,匿名でブログを行なっている場合で,仮にインターネット上の情報を集めれば特定できたとしても,本人の意に反して氏名を公開することは,プライバシーを侵害すると判断しています。
上記のとおりとなりますので,匿名で活動されている方が,特定されてこれを書き込まれて困っている場合,削除が認められる可能性があります。
結論
上記のとおり,匿名で活動されている方でお困りの方がいらっしゃれば,弁護士へご相談ください。