不倫慰謝料の相場!裁判例データをもとに分析しました。

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 不倫で慰謝料がどの程度認められるかは,請求する方にとっても,請求される方にとっても,一番の関心ごとだと思います。

 不倫の慰謝料の金額については、考慮要素としていろいろと挙げられているのを見たことがあると思います。そして、慰謝料の相場は●万円から●万円であると書かれた記事を読まれたこともあると思います。

参考記事 不倫の期間が短い場合や,回数が少ない場合,慰謝料は減額されますか。

参考記事 既婚者から迫られて不倫したのですが,慰謝料を減額できませんか。

 しかし、本当なのか、という検証について、数字をもとに分析しているものは少ないのではないかと思います。

 そこで、あいなかま法律事務所は、公刊されている書籍のデータ(もととなった公開されている裁判例)をもとに、これを独自にまとめて,色々と検討してみました。

 なお,以下の叙述については,不貞慰謝料の算定事例集(新日本法規出版データを参考にしています。詳細をご覧になりたい方は,同書籍をお買い求めください。

分析対象となるデータとその限界

データについて

 前提として,今回分析対象とした書籍に記載されたデータについてご説明します。

 今回分析したデータは,先ほどご紹介した書籍にデータとしてまとめられたものとなりますが,これは「ウエストロー・ジャパン」という判例データベースの不貞慰謝料請求が認容されている判例のデータとなります。

 このデータベースは,弁護士の方がよく利用する判例データベースの一つです。

 そのうち,昭和55年1月11日以降平成28年12月9日までの判例について,それぞれ不貞開始までの婚姻期間,子どもの有無,不貞期間,婚姻関係に与えた影響(婚姻関係継続か破綻か),請求相手が誰か(不貞相手か配偶者か両方か),認容金額のデータをまとめています。ただし,上記項目の一つでも分類が難しい裁判例は除外しています。

 ここに挙げられた要素は,慰謝料算定の要素として通常あげられる要素になります。

データの限界

データの数について

 一般の方は,判例データベースと聞くと,裁判がされた全ての裁判例が掲載されていると考えるかもしれませんが,実際には,匿名化処理された上で公開されるものは,全ての裁判例のうちのごく一部でしかありません。実際,同書籍に掲載されている判例数は,332件となっております。

データの選び方の偏りについて

 また,上記のとおり,一部の裁判例しか公表されない結果として,公開される裁判例は,将来の判断の参考になると思われる特殊なケースが多くなりますので,データ自体に偏りが生じている可能性があります。

判決となっていないものが考慮されていないことについて

 そのほか,「裁判例」が対象となりますので,裁判にならずに和解に至ったもの,裁判したが和解で解決したものは,データの対象となっておりません。

元の書籍の特殊なデータ収集について

 参考とした書籍では、不倫開始までの婚姻期間のことを、「婚姻期間」としており、以下の記載でもこの記述に従います。

 そして、多くのケースでは数か月から1年程度で不倫が発覚し、その時点で別居や慰謝料請求などに向かうため、婚姻期間≒結婚してから不倫が発覚するまでの期間といえます。

 しかし、参考とした書籍では、不倫発覚ではなく、不倫開始までを婚姻期間としていることの影響で、長期間、隠れて不倫をしていたケースなどで、一般的な婚姻期間と大きくずれることがあります。

 実際、「婚姻期間1年未満」の事例で、1000万円の慰謝料がみとめられたケースが紹介されていますが、これは、結婚から判決までの婚姻期間が50年に及んだ事例です。

 上記のとおりとなりますので,以下の記載は参考程度にご覧いただければと思います。

慰謝料の考慮要素

 慰謝料の考慮要素としては,色々な要素が挙げられると思います。その詳細については,以下の投稿をご覧ください。

不倫慰謝料の考慮要素7選。不倫の期間や回数は関係あるの?

婚姻期間と慰謝料額

 一般に慰謝料の考慮要素としてあげられる,婚姻期間と慰謝料の関係です。一般的に,不貞による精神的な損害は,婚姻期間が長ければ長いほど,大きくなると考えられるためです。

 そこで,婚姻期間ごとに,慰謝料の平均値を算出してみた結果が以下の表となります。

婚姻期間子あり子なし
1年未満298万円142万円
1年以上5年未満169万円182万円
5年以上10年未満161万円130万円
10年以上20年未満199万円171万円

 子どもの有無による影響を避けるため、子ありと子なしでわけています。

 先ほどご説明した通り、参考にした書籍の婚姻期間が、不倫開始までの婚姻期間を指すため、想定しているデータとなっていない可能性があります。

 または、裁判所が、婚姻期間自体は実はあまり重視していないけれども、婚姻期間が長いケースでは子どもがいる可能性が高いなどの理由から慰謝料が高額化している可能性もあるかもしれません(いわゆる見せかけの因果関係)。

子どもの有無と慰謝料額

 では,子どもの有無と慰謝料額の関係を見てみます。子どもがいる場合,子どもがいない場合に比べて,婚姻関係の破綻による精神的損害は大きくなると考えられます。

子どもの有無慰謝料の平均額
子ども無し
156万円
子ども有り191万円

上記のとおり,確かに,子どもがいる場合,金額が大きくなる傾向にあります。

婚姻関係が破綻したかどうかによる影響

 不貞行為の発覚により婚姻関係が破綻したか,それとも継続したかは,慰謝料額に大きな影響を与えそうです。

 そこで,これをみてみると,以下のとおりとなります。

婚姻関係の継続か破綻か慰謝料の平均額
婚姻関係が継続152万円
婚姻関係が破綻188万円

 みていただいてわかるとおり,婚姻関係が破綻しているかどうかも,慰謝料額に影響を与えるようです。

 婚姻期間別にみてみても,同様の傾向が見て取れます。

結論と留意事項

 実際にデータを見てみると,一般にいわれている考慮要素に関して,その真偽をデータで見てみました。ただし,婚姻期間のところでも少し触れましたが、各要素ごとの影響を考慮していないことから,本来であればもう少し細かく検討する必要がありそうです。

 実際にデータを分析してみると,面白い結果がわかります。

 ただし,実際には,お客様の事案に応じた考慮が必要となりますので,留意が必要です。

 あいなかま法律事務所では,もう少し細かな分析をしており,ご要望があれば、ご来所いただければ,より細かくご説明させていただきますので,慰謝料額について気になる方は,一度ご相談ください。