セックスレスで離婚したい方へ。セックスレスが離婚原因になるかや、離婚のポイントを解説します。
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離婚のご相談をしている際、セックスレス(性交渉がない)なのですが、離婚したいです、可能ですか、と質問されることがあります。
離婚したい方には朗報ですが、結論としては、セックスレスは離婚原因になりえます。そこで、以下では、セックスレスが離婚原因となった裁判所の判断をご紹介しながら、セックスレスで離婚したい場合のポイントをご説明します。
結婚における性生活の位置づけ
結婚における性交渉の位置づけについて判断した判例として、最高裁判所昭和37年2月6日民集16・2・206があります。通常のセックスレスの事案とは異なりますが、参考となるためご紹介します。
夫から、結婚前に睾丸を切除したが、夫婦生活には大した影響がないと説明を受けたため結婚したけれども、実際には性交渉ができなかったケースで、最高裁判所は離婚を認めたうえで、以下のように述べています。
…夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項である点を併せ考えれば、被上告人が上告人との性生活を嫌悪し離婚を決意するに至つたことは必ずしも無理からぬところと認められるのであつて、原審が判示性生活に関する事実をもつて民法七七〇条一項五号の事由にあたるとした判断はこれを是認することができる。
最高裁判所昭和37年2月6日民集16・2・206
上記のとおり、最高裁判所は、夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項であると指摘して、離婚を認めているということができます。
この裁判例から、婚姻の基本となるべき重要事項である性交渉について、夫婦のいずれかが明確に拒否している=セックスレスであることは、離婚原因になるという考え方が導かれます。
裁判所の実際の判断について
裁判所は、上記の考え方を前提に、セックスレスによる離婚を認めています。
例えば、夫が深夜にポルノをみていたけれども、妻との性交渉には応じず、改善を約束しても改善しなかったというケースで、婚姻を継続しがたい重大な事由があると認め、慰謝料の支払いも命じています(福岡高等裁判所平成5年3月18日 判例タイムス827号270ページ)。
以上のように、裁判所は、長期間性交渉がないことは離婚事由になると判断しています。
弁護士の目から見た、セックスレスで離婚したいと考えたときに、ポイントになる2つのこと。
裁判所の考え方はこれまでご説明した通りなので、なら、うちはセックスレスなので離婚できると思われた方もいらっしゃると思います。
しかし、実際に裁判を戦う弁護士の目から見ると、重要な2つのポイントが出てきます。
それは、①長期間セックスレスだったこと、②セックスレスの理由は相手が拒んでいたためであることの2つを、相手方の反論を乗り越えて、裁判で立証する必要がある、ということです。
先ほど挙げたケースをしっかりと読むと、一度話し合いをして改善を約束したことや、その後に応じなかったという事情が指摘されています。
弁護士の視点からいえば、それぞれの時点で、例えば改善を約束した書面を交わしていたり、その後にセックスを求めたけれど応じなかったやり取りが残っていた結果、上で上げた2つのポイントを証明できたのだろうと思われます。
①長期間セックスレスだったこと
性交渉がなかったことを証明することは、夫婦の関係で、その都度メモを取っていたなどは通常想定されないため、証拠が乏しく難しい問題となります。
証拠として、性交渉を求めたこと、性交渉に応じてもらえなかったことを立証する手段が必要といえ、例えば日記やメール、LINEでの話し合いなどが残っていることが望ましいといえます。
②セックスレスだった理由が、相手がセックスを拒んでいたためであること
また、夫婦としてどちらも求めることがなかった結果セックスレスであった場合、夫婦の間で性交渉しないとの暗黙の了解(法律上は「黙示の同意」といいます)があると判断され、離婚事由とはならない可能性があります。
そのため、裁判では、性交渉が長期間なかった理由は、相手が拒否したためだから、ということを説明する必要があります。
実務上の対応
実務上、離婚訴訟では、セックスレスを単独の離婚原因として主張するのではなく、セックスレスを含む夫婦関係全般から、婚姻関係が破綻していると主張することになるでしょう(これは、離婚に関する条文にも忠実な解釈となります)。
先ほど挙げた最高裁判所の裁判例も、性交渉がないことと併せて「性生活を除く夫婦生活の状況等からうかがわれる本件当事者双方の諸事情」を指摘しています。
そのため、セックスレスがある事案では、全体を通じた離婚への戦略を立てて進めることが欠かせませんので、あいなかま法律事務所の無料法律相談をご予約いただき、ご相談ください。
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