離婚したい方に向けた、熟年離婚に関する4つのポイント
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子どもが大きくなり、大学に通いだした、独立した。これまで、子どものためにと思って一緒にいたけれども、このタイミングで離婚したい、という方からのご相談は多くあります。
事務所でお伺いするご相談の3割程度は、お子様が大学生以上であったり、すでに独立されている方のご相談です。
熟年離婚の場合、お子様が小さい方とは別の悩みや、離婚の際のポイントがあります。
そこで、この記事では、熟年離婚の方で離婚したい方向けに、離婚したいときに考えるポイントをまとめました。
熟年離婚のケースで離婚したい方の関心の強い分野
以下では、まず、熟年離婚のケースで離婚したい方の関心の強い分野を挙げていきます。
その上で、個別の内容についてよく質問をいただくことを中心に、ご説明します。
財産分与に対する関心が強い
熟年離婚のケースでは、多くの方が、離婚後の生活に強い関心を抱いています。
そして、離婚後の生活を支えるお金として、財産分与に強い関心があります。
自宅に対する関心が強い
自宅が持ち家の場合、家に住み続けられるのか、どちらが住むのかといったことに関心が強い方が多いです。家を購入した際には、夫婦で老後に住むお考えだったことや、これから賃貸を借りることが大変であることから、夫側も妻側も、家に住むことに強い関心があります。
相続した財産に対する関心が強い
熟年離婚のケースでは、多くの場合、ご両親が既に他界しており、相続で得た財産があります。
この財産が財産分与の対象になるかどうかというご質問をよくいただきます。
年金に対する関心が強い
また、年金が身近な内容となるため、年金分割についての関心も非常に強いです。私も、制度の説明を細かめにさせていただいております。
熟年離婚の財産分与について
熟年離婚のケースの財産分与は、そのタイミングにより、預貯金などすぐに分けられる財産が少ないケースと、預貯金などを含めて多いケースがあります。
預貯金が少ないケース
お子様が大学卒業したタイミングなど、夫婦の財産に占める預貯金が少なく、不動産と保険、退職金などが多いケースがあります。
不動産の評価が資産の7割を占めている、退職金が多く分ける資産がない、などです。
この場合、財産分与として夫婦で2分の1ずつ分けようとしても、すぐに動かせるお金がなく、分けることが難しいという特徴があります。
分割払いとするか、不動産の売却を提案するか、などの様々な手法を、状況に応じて提案していくことになります。
預貯金が多いケース
この場合、分けることについては問題ないですが、多すぎる結果、財産の全体を把握することが難しい、調査をしたいというご相談をいただきます。
調査のきっかけとなる情報を収集し、推測して、財産を把握していく作業になります。
熟年離婚の場合の自宅について
結婚中に家を買った、離婚のときどうする、というケースは、熟年離婚に限らず問題になります。
熟年離婚ではない、住宅ローンが多く残っている場合
熟年に達しない夫婦の場合には、自宅があってもローンが多く、自宅に住む方がローンの支払いもするのが通例であるため、ローンの名義人がローンとともに取得して住む、又はローンの借り換えが可能であれば仮換えて住む、という形で落ち着くことが多いです。
この場合、自宅に住むことは、ローンを払うことになるため、ローンが支払えない方は説得されてあきらめるため、どこかで合意ができる印象です(ローンの支払いを拒否しながら居住の継続を求めるケースももちろんあります)。
熟年離婚は住宅ローンが終わっていることが多く、難しい問題があります。
これに対して、熟年離婚の場合、ローンをおおむね返し終わっているなどで、ローンはあまり問題にならないため、お互いに自分が住みたいと主張することがあります。
この場合には、どちらも家に対して平等の権利があり、またローンの負担もないため、話し合いの糸口がつかめず、平行線をたどることがあります。
立ち退きを求めても、離婚までの間は、使用貸借が成立しているため、容易に立ち退きをさせることもできません。
また、さらに、土地はどちらかの親のものであった、といった事情の場合には、後に述べる特有財産となるため、さらに事情は複雑になります。
相続した財産と財産分与
相続した土地がある、これは財産分与の対象になるのでしょうか、というご質問をいただきます。
財産分与は、夫婦で築いた財産を二人で分ける制度ですので、相続という夫婦の協力と無関係に得た財産は財産分与の対象にはならないこととされています。
これだけであれば単純なのですが、2つ問題があります。
相続で得たお金で購入したものが財産分与の対象になるか。
結婚中に相続で得たお金で家を買ったということは、しばしば生じます。
この場合、相続で得たそのものとはいいがたいことから、財産分与の対象になるのかというご質問をいただきます。
相続で得たお金で家を買ったという場合には、そのお金が相続で得たお金であることが資料からきちんと説明できれば、夫婦で築いた財産には当たらず、財産分与の対象とはならないと考えられています。
当時の預金通帳や契約書などから、説明できるよう準備することが大切です。
相続で得た土地の上に、住宅ローンを組んで家を建てた場合の財産分与
自宅のところでも少し触れましたが、両親から相続した土地に建物を建てて夫婦で住んだり、両親の土地に建物を建てて夫婦で住んでいて、そのご両親が亡くなった際に相続した、というケースはよくあります。
この場合、建物は夫婦で築いた不動産となり財産分与の対象になり、土地は相続した不動産となり特有財産として財産分与の対象にならないことになります。
このようなケースで、土地を相続していない方が自宅の所有を希望すると、土地をどうするのかという難しい問題が生じることになります。
中には、土地は妻が相続して入手した、建物は夫名義でローンを組んで購入し、まだローンが残っているなど、夫と妻のどちらが取得するにしても解決しなければいけない課題があるケースもあります。
このような場合、建物とともに土地も譲渡する、住宅ローンの名義を変更し、又は一括繰り上げ返済をしてしまうなど、様々な解決が考えられ、双方の意向を踏まえて、柔軟なアイデアを提案していくことが必要になります。
熟年離婚の場合の年金について
熟年離婚のケースで非常に関心が高い問題が、年金分割に関する内容です。そこで、以下では、年金分割についてご説明します。
国民年金と厚生年金
年金には、大きく、国民年金と厚生年金があります。
なお、公務員の方が加入する共済年金もありましたが、年金の一元化により、厚生年金に統合されました。
このうち、国民年金は、国民が全員加入している保険、厚生年金は、会社員などが加入している上乗せの年金となります。
このことを、しばしば、2階建てと表現することがあります。国民年金は全員が加入している1階部分、厚生年金は会社員などが加入している2階部分というイメージです。
しばしば、会社員の方で、厚生年金に加入しているので国民年金には加入していないと誤解されている方がおりますが、会社員の方は国民年金の2号保険者という形で加入しています。
厚生年金は、年金を受給する前に支払っていた保険料により、その金額が変動します。
厚生年金は金額が大きい
平成29年度の平均値では、国民年金の月額の受給額は5万5000円程度、厚生年金の月額の受給額は14万7000円程度ということです。
年金分割制度がなかったらどうなるか
わかりやすく、夫が働き、妻が専業主婦(働いたことがない)という家庭を考えます。
夫と妻が離婚した場合、夫は、国民年金と厚生年金を両方受け取れ、その額は平成29年度平均値で20万円ぜんごになります。
これに対して、妻は、国民年金しか受け取れず、その額は平成29年度返金地で5万5000円にしかなりません。
しかし、少なくとも、結婚していた時期は、夫婦で共同して厚生年金の保険料を支払っていたのであり、年金についても二人で分けなければ、不公平だといえますし、専業主婦の方の老後の生活も守ることができません。
年金分割とは
上記の問題を解決するため、年金のうち、厚生年金部分について、離婚時に調整をしたのが年金分割です。
年金分割は、上記年金のうち、厚生年金部分について、一方が婚姻期間中に支払った保険料を、夫婦両方が支払ったこととする制度になります。
その結果、先ほどのケースであれば、夫がもらえる厚生年金の金額が減少し、妻がもらえる厚生年金の金額が増加することになります。
これが年金制度です。
熟年離婚の最大のポイント
熟年離婚の際に最大のポイントとなるのは、離婚について合意ができるかどうかです。
離婚したくないという方の気持ち
離婚したいと思って離婚を切り出したときに、離婚を切り出された方がいう内容は、おおむね以下のものとなります。
これまで、色々とありながら夫婦としてやってきたという意識が強く、離婚したらお互い生活も大変になるので、今から離婚しなくていいのではないか。離婚した後の老後の生活が不安だ。
離婚に向けた話し合い
そのため、不倫などの事情がなく、法律上の離婚原因がない場合には、合意で離婚するしかないことから、話し合いでも以下の点についてきちんと考えることが大切です。
それは、こちらの離婚の意思を弁護士に依頼するなどして明確に示すとことと、お互いに離婚した後に生活ができそうだ、という相手の将来への不安を解消することを進めていくことです。
まとめ
熟年離婚の場合のポイントについてまとめました。ご自身のケースでもっと知りたいということがあれば、60分無料法律相談を実施しておりますので、あいなかま法律事務所へご相談ください。