離婚協議書作成時の注意点~離婚のときに養育費を請求しないという合意は有効か。
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離婚したとき、養育費は払わなくていい、といって離婚した。離婚協議書に、養育費は払わないと約束したいと思っている。相手もそれで納得している、という方へ向けた、非常に大切なことをご説明します。
それは、一度、離婚の際に、養育費は払わないといって離婚しても、その後の事情変更で、養育費が認められる場合があることです。
逆に、養育費をもらわないという合意をしたけれど、その後、病気などで収入が大きく減少して、生活が苦しくなってしまったので、養育費を請求したい、という方にとっても、重要な内容です。
そこで、以下では、養育費を請求しないと約束したけれど、養育費の請求が認められたケースを、裁判例をもとにご説明します。
養育費を支払わない旨の合意
養育費については、支払わなくていいという約束が、しばしばされます。
離婚した際、お金に困っていない、子どもとかかわりを持ってほしくない、関わりたくないから、養育費もいらないといって、離婚した後も
養育費を請求しない合意をしたが、後に請求された事例
大阪高等裁判所昭和55年(ラ)第618号 養育料請求申立審判に対する即時抗告申立事件になります。
このケースは、子どもが3人いるけれども養育費を支払わない旨の合意をしたが、その後、以下のような事情の変化が生じたケースです。
- 相手方が同居する相手方父が退職し、収入が減ること
- 離婚後予期に反して相手方の叔父から祖父の遺産につき分割の要求があり、養育費にあてるべく予定していた有価証券の大部分を、遺産分割として右叔父に譲渡したこと
- 子どもたちらはいずれも大学進学を希望しているが、満一八歳となつたため、同人に関する児童手当の支給を打ち切られることになつたこと
以上の事情を踏まえて、裁判所は、養育費を支払うことを命じました。
養育費を支払うことを命じる法律の論理
法律上、養育費の合意をした後も、事情の変更があった場合には、養育費の変更を求めることができるとされています(民法880条)。
そのため、養育費を請求しない(=0円とする)合意がされたのちも、事情の変更があった場合には、養育費を請求することができると考えられています。
事情の変更とは
事情の変更とは、必ずしもその外延は明確ではないですが、当時想定していなかった状況の変化が生じた場合には、事情の変更にあたると考えられます。
例えば、離婚時は親権者(=監護親)に十分な収入があったが、その後病気等で働けなくなり、収入が大きく下がった、などが想定されます。
先ほどご紹介した事例は、やや古い事例であり、現在では妥当しない(児童手当の打ち切りなど)と思われる部分もありますが、養育費がゼロとされた事情も踏まえ、柔軟に養育費の請求を認めたと考えることもできそうです。
まとめ
養育費を請求しない合意をしたけれど、養育費を請求したいと考えていらっしゃるかたがいらっしゃいましたら、60分無料法律相談を実施しておりますので、あいなかま法律事務所までご相談ください。