風俗店の利用は離婚原因としての不貞行為(不倫)にあたらない?風俗店の利用に関する裁判例を紹介します。
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夫が風俗を利用していることが判明した、ということを理由として、離婚したいと考えている方や、風俗を利用していたことを理由として離婚を求められてお困りの方のご相談に乗ることがあります。
以前、不倫が1回であった場合に不貞行為にあたるかどうかという記事を書きました。
この点に関連する内容として、風俗店を利用したことを、離婚事由に該当する不貞行為にあたらないとした裁判例がありましたので、ご紹介します。
離婚事由としての不貞行為
裁判で離婚する場合、法律が定める離婚原因が必要であるとされています。法律が定める離婚原因は、以下の5つです。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
そして、不貞な行為とは、「 配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係をむすぶこと 」とされています。
性行為が1回の場合、不貞行為とならない?
インターネット上では、性行為が1回の場合、不貞行為にあたらない、という説が有力です。
ただ、以前の記事で、性行為が1回のみの場合に離婚を棄却した裁判例が見当たらない旨を指摘しています。
風俗を利用したことが、離婚事由にあたらないとした裁判例
風俗店の種類
ひとまとめに風俗店といっても、様々な種類があります。
いわゆる風俗店と、ひとくくりに話がされるとき、想像される業態としては、離婚との関係では、大きく以下の3つのパターンに分けられるといえます(表向きは、性行為をするサービスは存在しないこととなっていますが、以下は実態を踏まえたご説明になります)。
- 肉体接触を伴わないもの(横でお酒を注ぐ、話をする)
- 肉体接触を伴うが、性行為(性器挿入)を行わないもの
- 肉体接触を伴い、性行為(性器挿入)を行うもの
以下でご紹介するのは、肉体接触を伴うが、性行為を行わないものについてです。
事案の概要
今回ご紹介する裁判例は、横浜家庭裁判所平成31年3月27日判決( 平成30年(家ホ)第6号)です。
このケースは、デリバリーヘルスに複数回電話したこと、そのうち少なくとも1回は利用したこと、その他ゲームの課金(30万円程度)が認められた事案です。
裁判所の判断
このうち、デリバリーヘルスの利用について、裁判所は以下のとおり指摘し、離婚事由にあたるまでの不貞行為があったとは評価できないとしました。
…被告は,…に1回デリヘルの性的サービスを受けているが,…それ以上に利用したことがあったとは認めるに足りない。
また,仮にあと数回の利用があったとしても,被告は発覚当初から原告に謝罪し(…),今後利用しない旨約束していること(…)からすると,この点のみをもって,離婚事由に当たるまでの不貞行為があったとは評価できない。
裁判所は、上記のとおり述べて、仮に複数回のデリバリーヘルスの利用があったとしても、謝罪して今後利用しない旨を約束していることからすると、不貞行為があったとは評価できないとしています。
なお、本件は、このほかに、浪費についても主張されていましたが、結論として婚姻関係は破綻していないとして、離婚は認めていません。
裁判所の判断について
裁判所の上記判断がなぜそのようになったのか、いくつかポイントをあげます。
性行為ではなく性的サービスの利用だったから
風俗店には様々な種類がありますが、本件で問題となったデリバリーヘルスでは、性行為は禁止されています。そのため、裁判例も、「性行為」ではなく「性的サービス」であると認定しています。
性行為があったと認定した場合、裁判例上の不貞行為の定義からすれば、離婚事由にあたることを否定するためには、理由が必要と思われます。
謝罪と約束
裁判例は、謝罪と約束の事実を指摘して、複数回あったとしても離婚事由には当たらないとしています。
実際の離婚事件を扱う弁護士の経験や、特に将来しないという約束はそこまで重視しない裁判所の立場から見ると、やや夫側に甘い判断と思います。
裁判所の事実認定について
裁判所は、今回、デリバリーヘルスの利用は1回のみであると認定しました。
電話した日時やその他の夫側の金銭の使用からすると、複数回の電話がすべて個別の利用とは考えられないとしても、1回のみという認定はやや立証する側に厳しい気がします。
先ほど指摘したように、複数回であっても変わらないという結論を念頭に、確実である1回の利用のみを認定したと思われます。
風俗店の利用を原因とする離婚でお困りの方へ
上記のとおり、風俗店の利用の場合、1回のみでは離婚事由にあたらないとされる可能性があるようです。
風俗店の利用を原因として離婚をしたい方は、風俗店の利用が継続的に続いていたことや、これにより夫婦仲が悪くなったことなどを、詳細に主張する必要があるといえます。
また、離婚を求められている方は、風俗店の利用回数が少ないことや、謝罪や将来にわたって風俗店を利用しない旨を約束し、真摯に対応するなどして、離婚事由にあたらない旨を誠実に主張する必要があるといえます。
いずれの場合も、立証に関する計画や、どのように調停や裁判を進めるのかをよく考えたほうがいいといえますので、あいなかま法律事務所の無料法律相談をご利用ください。