離婚調停と婚姻費用分担調停。なぜ二つ調停を起こす必要があるの?両者の違いなど。

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 離婚に関する裁判所の手続きで、非常にややこしいことの一つに、様々な調停があり、どの手続きをすればいいのかわかりづらい、ということがあります。

 実際、離婚に関するご依頼で、活用する手続きを、すぐ思いつくものだけ挙げても、

  •  離婚調停(夫婦関係調整調停)
  •  婚姻費用分担調停
  •  面会交流調停
  •  監護者指定調停(審判)
  •  子の引き渡し調停(審判)

 などがあります。

 そして、離婚を求める際は、離婚調停を、婚姻費用の支払いを求める際は、婚姻費用分担請求調停をそれぞれ申し立てる必要があるなど、手続きがわかりにくいと感じられる方も多いと思います。

 また、離婚調停は、調停が成立しない場合、裁判をするかどうか考えることになりますが、婚姻費用分担調停などその他の調停は、審判手続きへ移行する、という形になっています。

 これらの制度の作りについて、家事事件手続法や人事訴訟法の規定をもとに、ご説明します。

家庭に関することを取り扱う家事事件手続法

 離婚、婚姻費用や面会交流など、家族に関する事件を、家事事件と総称します。

 もう少し正確には、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件(家事事件手続法247条)をいいます。

 これらは、一般の民事訴訟と区別されています。

 これらの事件が一般の事件と区別される理由はいくつかありますが、先ほど例を挙げた離婚や婚姻費用、面会交流などに関していえば、公益性が高い、裁判所の裁量で適切にしなければいけない事件である、という点が挙げられます。

家事事件手続法と人事訴訟法

 家事事件手続法は、家事事件のうち、家事事件手続法が定める別表第1及び別表第2に記載されている事件に関する審判及び調停の手続きを定めた法律になります(家事事件手続法39条、1条)。

 そして、人事訴訟法は、家事事件のうち、身分関係の形成又は存否の確認を目的とする事件に関する訴訟の手続きを定めたものになります(人事訴訟法第2条)。

 離婚に関する件でいえば、離婚事件や離縁事件は人事訴訟法で取り扱われ、その他多くの事件は、家事事件手続法で取り扱われます。

 このように、同じ離婚に関することであっても、離婚事件本体は人事訴訟法が、婚姻費用などは家事事件手続法が適用される、一見して複雑な制度設計になっています。

 なお、上記の背景には、審判と訴訟の違いという、難しい問題があるのですが、専門的な話になるため、省略します。

 上記の結果として、婚姻費用などの調停手続きは家事調停、離婚調停は一般調停となり、若干の手続きの違いが生じています。

取り扱いの違いによる影響

 実際に離婚調停をされている方が、上記の取り扱いの違いを意識するのは、調停で話し合いが上手くいかない場合だと思います。

 離婚調停については、調停で話し合いが上手くいかない場合には、調停は不成立で終了となり、審判手続きはほぼ行われません。そして、離婚を求める場合には、改めて裁判を起こす必要があります。

 これに対して、婚姻費用や面会交流調停などは、調停で話し合いが上手くいかない場合には、調停は不成立となり、審判手続へ当然に移行します。その結果、婚姻費用や面会交流については、調停を取り下げた場合を除き、必ず裁判所の判断が出ることになります。

まとめ

 同じような調停手続であっても、根拠となる法令が異なる結果、違った取り扱いとなることがあります。

 お手続きは複雑な面もありますので、ご不明な点がございましたら、あいなかま法律事務所の無料法律相談をご利用ください。