民事執行法の改正により養育費を含む債権の回収がしやすくなります。

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 先日、民事執行法が改正されました。これは、多くの方に様々な影響がある内容です。本日は、この改正について、債務者以外の第三者からの情報取得手続きに絞って、その概要をご説明します。

 こちらの資料が簡単にまとまっていますので、興味があればご確認ください。

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民事執行法とは

 ご興味がないかもしれませんが、民事執行法とは何かについてご説明します。

 わかりやすくいうと、民事執行法とは、判決などで裁判所が命じたことを実現するための手続きについて定めた法律です。

 差押えや競売などの手続きについて規律されています。

債務者以外の第三者からの情報取得手続きについて

これまで

 財産の調査については、民事執行法は、財産開示手続きという制度を設けていました。

 これは、本人を裁判所に呼び出して、その場で質問をする手続きです。呼び出しに応じなかったり、その場で嘘をつくなどすると、過料の制裁が科せられる可能性があります。

 本人を呼び出して聞いても実効性がないなどの指摘がされていました。

 それに対して、例えば金融機関などに対して開示を求める手続きはなく、弁護士会照会という手続きによっていましたが、開示拒否をされたり、使い勝手が悪いなどの指摘がありました。

改正により第三者から情報を取得できます。

 改正により、第三者から情報の取得ができるようになりました。

 運用や詳細は今後の情報を確認する必要がありますが、以下のとおりとされています。

預貯金の調査が可能

 裁判所から金融機関に対し、預貯金の有無の照会ができるようです。

 運用を確認する必要がありますが、全店照会(ある銀行に照会をかけると、その銀行のすべての支店の口座を調べられること)が可能であれば、金融機関にあたりをつけて調査を行うことで、預貯金を調べることが可能です。

上場株式などの調査が可能

 裁判所から証券会社に対し、上場株式の所有状況についての照会ができるようです。

 上場株式については、ほふり(株式会社証券保管振替機構)で管理していることから、ここへ照会ができれば、どの証券会社で口座を保有しているか判明します。

 また、金融機関はある程度予想ができるのですが、証券会社は大手証券会社を除くとなかなかあたりがつけづらく、探しても見つからなかった等の可能性もあるため、ほふりへの照会が可能であればいいと思います。

土地建物の調査が可能

 なんと、登記所に対して、土地建物の所有があるかどうかの照会ができるようです。

 これまでは、自宅などでなければ、不動産の所有を調査することは難しかったのですが、今後は調査が可能となります。

 今後、不動産を持っている可能性のある場合には必ず調査をすることとなりそうです。

給与の調査が可能

 養育費等に限定されていますが、市町村や年金事務所に対して、勤務先の照会が可能となるようです。

 これまでは、勤務先が変わってしまうと、調べることは事実上難しかったので、養育費を未払いにして「逃げる」ことができたのですが、今後は調査ができるようになります(住んでいる市町村は、未払いになった場合には、住民票を調査すれば判明します)。

 今後は、調停等で認められた養育費の未払いというケースは、非常に少なくなると思います。

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まとめ

  令和元年5月17日が公布であり、公布から1年以内に施行される予定です。

 これまで、回収が難しいことから訴訟を起こさずに泣き寝入りしていた請求があるのであれば、今から、差押えのための債務名義の取得を始めてもいいと思います。