不倫(不貞行為)と婚姻関係の破綻~別居した時点で破綻が認められたケースをご紹介。
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不貞行為(不倫)があった際に、不倫をした側から主張されるのは、婚姻関係が破綻していたので、慰謝料の支払い義務はない、という主張です。
この主張は、なかなか認められないといわれており、特に、単に別居を開始したのみでは認められづらいといわれています。
今回は、この点について、若干特殊な事案ではありますが、別居直後に同棲をはじめたところ、婚姻関係が破綻しているとして慰謝料の請求が認められなかったケースをご紹介します。
事案の概要
元となっているのは、東京地方裁判所判決平成30年2月26日(判例秘書登載L07330919)です。
妻が、夫と別居した後、すぐに他の男性と同居を始めました。
夫は、妻が他の男性と同居していることを知らないまま離婚に応じ、離婚しました。
その後、元妻とほかの男性が同居していることが発覚したことから、元夫が元妻とほかの男性に対し、慰謝料を請求しました。
離婚に至る背景事情
別居し、離婚することとなった背景事情として、以下のことが指摘されています。
- 夫が、過去に執行猶予付の有罪判決を受け、その後、定職に就こうとせず,生活が不安定で、妻が家計を助けるべく仕事をしていたこと
- 妻が,二男,長女を身ごもり,子育ての負担も増えたことで,精神的に疲弊していったこと
裁判所の判断
裁判所は、上記について、妻とほかの男性が、別居前から不貞行為を行っていたことは、証拠から認められないとした上で、別居の理由について、以下のとおり判断しています。
(以下、読みやすくするために、改行を加え、人物を、夫、妻、他の男性に変更し、また特定を避けるため、日付を隠す形に修正しています。)
…各事実に鑑みると,妻は、夫が執行猶予付の有罪判決を受けた後も定職に就こうとせず,生活が不安定であったため,自らが家計を助けるべく仕事をしていた一方,二男,長女を身ごもり,子育ての負担も増えたことで,精神的に疲弊していったことが容易に認められる。
夫と妻の平成●●年●月●日からの別居開始は,このことが原因であったと強く推認され,かかる推認を覆すに足りる事情はない。したがって,夫と妻の婚姻関係は,遅くとも,平成●●年●月●日(別居開始日)までには破綻していたと認められ…
東京地方裁判所判決平成30年2月26日(判例秘書登載L07330919)
以上のとおりであり、別居時点で、婚姻関係が破綻していたと認めています。
その上で、不貞行為と破綻について、以下のように判断し、慰謝料請求を認めない判決をしています。
したがって,夫と妻の別居及びその直後から妻らが同居したことを考慮しても,妻らが夫と妻の婚姻関係が破綻する前に不貞関係にあったと認めることはできず,夫と妻との婚姻関係破綻の原因が妻らの不貞関係にあったということもできない。
東京地方裁判所判決平成30年2月26日(判例秘書登載L07330919)
裁判所の判断についての考え方
過去の裁判例等からすれば、別居直後の当事者の意思(離婚する意思があったのかどうか)は、重要と思われますが、上記裁判例では、(不自然と思われるぐらい)別居後のやり取りについて、何ら触れられておりません。
実際、この件で主張されている事実関係を見ると、別居後、離婚しておらず、夫側がやり直したいと主張していれば、妻側が離婚を求めたとしても、直ちに離婚は認められなかった可能性が高いと思われ、夫側の破綻していないという主張には、理由があるように思えます。
ちなみに、夫婦の間には子が3名いますが、いずれも夫が親権者となっているところも、ポイントで、離婚まで半年経過しているところからしても、夫側がすぐに離婚に応じたとはあまり想定されない事案です。
若干、夫側の主張が弱いところや、慰謝料と併せて弁護士費用の請求をしていないところを見ると、夫側は、弁護士を依頼せず、当事者で(アドバイスを受けながら)裁判を行っていたのではないかとも思われます。
まとめ
上記のとおり、別居時に、婚姻関係の破綻が認められるケースもあります。
ただし、これは、すでに離婚が成立していたことや、夫側の主張が必ずしも適切でなかったことが窺われる点で、そのまま参考にすることは避けるべきといえます。
もし、別居後に、不貞行為が発覚し、慰謝料を請求しようとお考えの方は、ご自身で対応しようとせず、弁護士へご相談ください。
あいなかま法律事務所では、不倫の慰謝料に関するご相談について、無料法律相談を実施しておりますので、今すぐご相談ください。