インターネット上の名称に対する名誉毀損が認められる場合を、裁判例をもとにご説明します。

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 インターネット上で活動するときに、ご自身で色々な名称を付けられることがあると思います。ツイッターの名称や、ブログの著者名の表示などです。

 ご自身の名前を踏まえたニックネームにしたり、自分の好きなものの名前が揺らいであったりなど、皆様様々に工夫されているのではないでしょうか。

 これら、いわゆるハンドルネームについての誹謗中傷についてご説明します。

 インターネット上で誹謗中傷が書きこまれるとき、ハンドルネームを指摘してされることもよくあります。

 この際、ハンドルネームを用いている方は、インターネット上に記載された誹謗中傷で傷つき、削除したい、損害賠償請求をしたいと考えられる方も多くいます。

 そこで、以下では、ハンドルネームに関する名誉毀損について、裁判例をもとにご説明します。

ハンドルネームに関する裁判所の考え方

 多くの裁判例は、ハンドルネームに対して誹謗中傷をした場合について、ハンドルネームを利用している者に対する名誉毀損には当たらないとして、これを否定しています。

 これは、名誉毀損が「社会的評価を低下させるもの」とされており、ハンドルネームへの誹謗中傷は、現実にハンドルネームを保持しこれを利用している者の社会的評価を低下させるとはいえないとの考え方によると考えられます。

 例えば、私が「マカナイア」(あいなかまを逆から読んだもの)というハンドルネームでインターネット上で活動をしてたところ、マカナイアに対する誹謗中傷がされたとします。

 この場合、「マカナイア」の評価が下がったとしても、「マカナイア」と私がリンクしないため、私の現実社会の評価に影響せず、名誉毀損は成立しないことになります。

ハンドルネームに対する書き込みが名誉毀損に当たる場合。

裁判例の内容

 これを踏まえて今回ご紹介する裁判例は、東京地方裁判所平成29年9月26日判決( L0723061 )になります。

 これは、インターネット掲示板で、原告の仮名(ハンドルネーム)に対する投稿が、人格権を侵害したとして、発信者情報の開示を求めた事案です。

 先ほどの説明からすると、仮名(ハンドルネーム)に対する投稿は、名誉毀損に当たらないとも考えられるのですが、裁判所は、以下のとおり述べて、人格権侵害を認め、名誉毀損による開示請求を認容しました。

 これらの事実によれば,原告の●●●仲間の間では,原告が「X1’」の名を使用していることが広く認知されているといえ,また,それ以外の者も,「X1’」をインターネットで検索し,表示される原告の顔写真等を見ることにより,いわばインターネット上の有名人として,原告を「X1’」として認識する可能性が高いといえるから,本件各投稿の「X1’」とは,原告を指すものと解するのが相当である。 (●●●は、原告の趣味に関する記載がされていましたが、個人情報保護のため引用者が伏字にしました)

東京地方裁判所平成29年9月26日判決( L0723061 )

 上記では、原告が趣味仲間の間で「X1’」という名称を使用しこれが広く認知されていたことや、インターネット上で原告の顔写真が確認できることを理由に、「X1’」が原告を指すものと認定しました。

裁判例の考え方

 この事例では、趣味の仲間との間で、「X1’」という名称を用いてやり取りをしており、趣味の仲間の中では、原告=「X1’」という認識があったことや、インターネット上で「X1’」と検索すると原告の顔写真が出てくることを理由として、名誉毀損を認めました。

 このように、裁判所は、ハンドルネームに対する誹謗中傷であっても、ハンドルネームがオフラインでのやり取りでも使われており、実際に誰を指すのかを周囲が認識しているのであれば、名誉毀損を認める傾向にあります。

 インターネット上で知り合い、オフ会などを開く場合には、本名ではなくハンドルネームでやり取りをすることが多いことからすれば、この判断は妥当といえるでしょう。

 (ドラマにもなった漫画「ゆうべはお楽しみでしたね」でも、同居生活中やオフ会で、本名ではなくオンラインゲームでの名前でやり取りをしている様子が描かれています)

ハンドルネームに対する誹謗中傷について

ハンドルネームで社会活動をおこなっているのであれば、名誉毀損が成立する可能性があります。

 現在、オフ会なども盛んであり、インターネット上のハンドルネームであっても、これをオフラインでのやり取りで用いているケースも多くあると思われます。

 このような場合には、ハンドルネームで社会活動(オフラインの活動)を行っていることから、名誉毀損を理由とした削除や損害賠償請求が認められる可能性は十分にあります。

最後に

  ハンドルネームに対する誹謗中傷でお困りの方は、60分無料でご相談できますので、すぐにあいなかま法律事務所へご相談ください。お問い合わせフォームからのお問い合わせは24時間受け付けております。