離婚したいと思っても相手が離婚届にサインしてくれません。どうすればいいでしょうか。
この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
最終更新 2021年2月9日
離婚したいと思ったら
離婚したいと思って相手に切り出したけれど,離婚に同意してもらえず,離婚届にサインしてくれなかったということがあります。
なかには、聞く耳を持ってくれないというケースや、子どものためには離婚しない方がいいといわれて離婚を取り合ってくれないというケースもあります。
このような場合に、離婚したいためには、どのように話を進めて、どのような手続きを行えばいいのかを、まずは議論の前提となる法律上の離婚原因をご説明したうえで、解説します。
法律上の離婚原因を考えるメリット
話し合いがまとまれば、離婚することができます(協議離婚)が、話し合いがまとまらない場合、裁判になれば離婚できるのか、という点を考えることは、非常に重要です。
裁判になれば離婚できる(法律上の離婚原因がある)のであれば、離婚を求めて話し合いを行う際に、交渉上極めて有利な立場に夏こととなります。
そのため、裁判になれば離婚できるかどうか、という点を見極めることは、相手方との話し合いを進めるうえでの前提として、きちんと確認しておく必要があり、裁判になったら離婚できないのであれば、その分こちらが譲歩する必要があるかもしれません。
そのため、初めに離婚原因をご説明させていただきます。
法律が定める5つの離婚原因 ~裁判で離婚するために必要な要件~
なかには、調停や裁判など、裁判所の手続きで離婚したということを聞いたことがある方もいらっしゃると思います。たしかに、裁判で離婚する方法もあります。
しかし,裁判で離婚するためには,離婚原因と呼ばれる、法律が定める要件を満たす必要があり,どちらか一方が離婚したいと思ったから離婚できるわけではありません。
そして、性格の不一致などの場合、法律が定める離婚原因にあたらず、裁判をしてもすぐには離婚できない、というケースも多くあります。
以下では、法律が定める離婚原因をご説明します。
法律の定める離婚の要件
法律が離婚の要件として定めるのは,以下の5つであり,これらのいずれかがない場合,裁判所に離婚訴訟を提起しても、離婚は認められません。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
民法770条1項各号
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
見ていただくと、一~四は読むと内容がおぼろげにわかるかと思いますが、五については、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とされており、その内容は明確にはなっていません。
その他婚姻を継続し難い重大な事由って?
片方がもう難しいとなったら、「婚姻を継続し難い重大な事由」?
例えば、私は,相手のことをすごく嫌っていて,もう一緒に暮らすことどころか,顔を見ることも嫌だ、という状況を想像してみます。
これは、はたから見れば、もうやり直すことも無理そうだ、結婚を続けられない、だから「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる、ともいえるかもしれません。
しかし,今の運用では,ただ一方が嫌いだといっただけで,上記五の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり離婚できるという考え方は取られていません。
裁判所の大まかな考え方
裁判所は、上記五に当たるためには,一方の気持ちだけでなく,客観的な面も含めて,婚姻関係が破綻している場合に限られると考えており、単に一方が婚姻を継続する意思がないことは、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとは考えていません。
裁判所が考える「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、例えばDVや浪費,長期間の別居、セックスレスなどがあった場合です。
しばしば、インターネット上で、別居期間が●年あれば、離婚が認められるなどの記載がされていますが、これは、別居が長期化すると、裁判所としても、もう元に戻ることはない、婚姻関係が破綻している、婚姻を継続し難い重大な事由がある、と判断される傾向にあるためです。
話し合いで離婚することを考える。
話し合いで考えなければいけないこと
ここまで、裁判で離婚できる条件である離婚原因について説明してきました。
その上で、まずは離婚したい場合には、話し合いで離婚することを考えます。
そこで考えなければいけないことは,相手が離婚に反対するか、反対するとしたら、その理由は何か、という点です。
とにかく離婚したくない、という場合であっても、お金の面でこだわりがあるのか、子どものことでこだわりがあるのかなど、離婚にあたり障害になっている理由は様々です。まずはこれを見つけていくことが必要です。
相手の理由やこちらに求めるもの、それを満たすためにこちらが払う代償を検討し、裁判になった場合にどのような結論になるのかを見通したうえで、話し合いを進めることになります。
調停の活用
お互いの話し合いで納得してもらえない場合には,調停という家庭裁判所での話し合いの手続きの中で,調停委員を間に入れて話し合いを行い、離婚の条件を協議していきます。
調停段階では、調停委員への説明や、調停委員と相手方の話の中で、離婚原因があるかどうかは大きな意味を持ちます。
それは、裁判になれば離婚できるのであれば、こちらもそれを強く調停委員に伝え、調停委員からも相手に対して、裁判になれば離婚という判断がされる可能性が高いことを伝えてもらえるためです。
関連記事 初めての離婚調停。
弁護士を入れるメリット
相手が離婚に応じない際に,弁護士を入れるメリットとしては,相手に代わりに話をして自分の精神的負担を軽減してくれるという他,弁護士に交渉の戦略を立てて,これを実践してもらうことができるメリットがあります。
離婚にあたってどのような戦略を提示してくれるかは,弁護士によっても個性が出ますので,色々な弁護士にご相談してみるのが良いと言えます。