養育費が支払われないなら、給与を差し押さえることができます。
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一説には、離婚した後の養育費は、8割程度が支払われていないとのことです。
養育費は、子どもの生活のために必要なものであり、合意したのであれば、きちんと支払うべきですし、合意がされていないのであれば、きちんと取り決めをすべきだと思います。
そこで、この記事では、養育費などが未払いの場合に、給与を差し押さえる方法を説明します。
給与の差し押さえとは
給与の差し押さえとは、給与が支払われる会社へ裁判所から通知をすることで、給与が会社から本人に支払われる前に、これを会社にとどめおいて、会社から直接こちらへ受け取ることができる制度です。
給与差押えに必要なもの(情報)
養育費を差し押さえるためには、以下のもの(情報)が必要です。一つ一つ説明します。
養育費を決めた調停調書、審判書、強制執行認諾文言付公正証書、判決書。
給与の差し押さえは、裁判所に申し立てると、基本的に書面審査のみで進みます。そのため、申し立ての際には、裁判所が認めた文書や、これに準じる文書が必要とされています(法律上の議論は省略します)。
裁判所を介してした調停で、養育費の支払いが命じられている場合、判決で養育費の支払いが命じられている場合や、公証役場で作成し、強制執行認諾文言が付された公正証書があれば、強制執行が可能です。
これらがなく、お互いが書面でやり取りした、口約束だった、という場合には、まずこれらの文書を作成するため、調停の申し立てを行うことから始めます。
相手方の勤務先の会社
相手方の勤務先の会社の情報が必要です。裁判所は、本記事執筆時点では、相手方の勤務先の会社がわからなければ、給与の差し押さえはできません。
来年には、改正民事執行法により、相手方の勤務先の会社を調べることができるようになりますので、いずれこの情報は不要となります。
その他の書類
その他、債権差押命令申立書を作成し、先ほど挙げた調停調書等に執行分の付与を受け、送達証明書を申請し、資格証明書を取り寄せます。
これらは、上記2つがそろっていれば、簡単に取り寄せ等が可能です。
給与差押えの流れ
以下では、通常の給与差押えの流れを説明します。
1 債権差押命令申立書及びこれに添付する書類を、裁判所へ提出します。
2 裁判所が、差押え命令を発布し、会社及び相手方へ通知します。
3 通知が会社へ届いた時点で、差押えの効力が発生し、それ以降に支払われる給与は差し押さえられます。
4 その後、ほかの債権者が出てこなければ、会社から直接養育費を取り立てることができます。
もし、勤めてなかった場合には、会社から連絡があり、差押えを取り下げて、あらためて勤務先を探すこととなります。
養育費の差し押さえの特徴
将来分も差押え可能
通常、差押えは、これまで未払いだった分のみ差押えが可能であり、将来の部分の差し押さえはできません。
しかし、養育費の場合には、将来にわたり、給与を差し押さえることができます。
結果として、1度申し立てをして差押えの効力が発生すれば、勤務先を変更するなどの事情がない限り、養育費の支払いを安定して受けられることができます。
差押えできる金額の制限
給与は、生活のために必要な金銭であるため、給与が少ない場合には、差押えができる金額は給与の4分の1までとされています。
しかし、養育費に関しては、子どものために必要なお金という性質があるため、給与が少ない場合でも、2分の1まで差押え可能となっています。
養育費の支払いを受けないのはもったいない
いま、生活が苦しい方は、きちんと養育費を支払ってもらうべきです。
いま、一応生活ができているから、養育費の請求はしたくない、と考えている方は、養育費をきちんと受け取ると、いくらになるのか、それを子どものために使うことはできないかを考えてみてください。
仮に、月3万円の養育費であっても、年間だと36万円、10年間であれば360万円になります。子どもが大学へ行くことになり、奨学金を借りた場合、月5万円の奨学金を借りたとしても、4年間で240万円です。養育費をきちんともらい、これを子どもの進学のための費用にしておけば、子どもは奨学金を借りなくて済むかもしれません。
養育費の支払いを受けることは簡単です。
相手が働いて、収入があるのであれば、養育費の支払いを受けることは簡単です。
調停、審判で養育費の金額を決め、きちんと支払いを受け、支払いが滞ったら(来年以降は)相手の勤務先を調べたうえで、差押えをするだけです。
あいなかま法律事務所では、養育費の請求に関するご相談、ご依頼も受け付けております。
養育費の支払いを受けられず、お困りの方は、あいなかま法律事務所までご相談ください。