離婚の話し合いで、妻から身に覚えのないDVを主張された場合の対応法。
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私が前に所属していた事務所で扱っていた離婚事件では、男性側の離婚についても多く扱っていました。男性側からのご相談としては、前の事務所の顧問先の関係者の方の離婚事件に関するご相談が多くありました。
離婚協議や調停の中で、女性側から、DVがあったという主張は毎回のようにされてきました。
中には、実際にはDVがあったとはいえないケースも多く、私は、離婚の話し合いを通じて、これに対応し、慰謝料等の支払い等をせず、納得できる面会交流ができるように尽力してきました。
以下では、男性側の視点から、身に覚えのないDVの主張がされた場合の、ご依頼を受けたケースでの私の対応法の一部をご説明します。
かなりテクニカルな部分もありますが、参考にしていただければ幸いです。
相手ではなく、調停委員や裁判官に説明する。
これからご説明する内容をお読みいただく前に、ご説明したいことは、説得する対象は、DVを主張している相手方ではなく、調停委員や裁判官である、ということです。
調停委員や裁判官が、お互いの話を聞いて、提出された証拠を見たときに、どのように考えるのか、という視点が大切です。
このことを見誤り、DVを主張した相手方にDVがなかったと言わせようとすることは、難しいのみならず、調停委員や裁判官に、悪い印象を抱かせるおそれすらあります。
どこまで事実か見定める。
多くのケースで、DVの主張は、離婚を求める弁護士からきた通知文書や、裁判所へ提出された書面でされます。
この際に一番大切なことは、その言い分に腹を立てて、感情のままに連絡したり、文書を送付したりしないことです。
事実関係の多くは、違った見方ができる。
例えば、女性側からの文書に、「自分に都合の悪いことがあると、大声を出して手を挙げることがあった」という記載がされたとします。
夫婦であれば、夫婦喧嘩はつきものです。その際に、お互いに感情が高ぶって、大きな声を出したり、手を出してしまったり、ということは、しばしばある話です。自分もはたいたことがあったけれど、妻は気に入らないことがあると、物を投げたりしていた、ということもあります。
そこで、実際にこの事実があったのかどうか、あったとすればどのタイミングであったのかなど、相手が指摘する内容が、どのタイミングのことなのかを考えてみることです。
たとえば、けんかの際にそのようなことがあったとすれば、けんかはどのようなことでして、どういった経緯で収束し、仲直りしていたのか、はたいたことやものを投げたりしたことがどの程度あったのか、ということを、思い出します。
この点は、調停委員や裁判官に対して、どのように説明するのかを考えるうえで、非常に大切なことになります。
相手方の要求を把握する。
DVの主張がされた場合、相手方が、これをもとに慰謝料を求めるのか、それとも経緯として書いているだけなのかを、把握します。
なかには、DVという主張は、離婚したい理由の説明として書かれているだけであり、慰謝料等は求めないといったケースもあります。
これを踏まえて、どの程度DVの主張に反論するのかを決めます。
方針の確定
上記やその他を踏まえて、今後の話し合いの方針や、調停に臨む方針を決定します。ポイントは、反論をどの程度するか、ということです。
DVの主張が慰謝料などに関わらないのであれば、一応の反論をした上で、精神的DVを争点としない方向に誘導します。このケースでは、そもそも精神的DVであるかどうかや、事実関係を確定させ、激しくやり取りする必要性がない場合があるためです。
これに対して、慰謝料等と絡んで主張されている場合には、どの段階でどの程度の反論をするかを十分に協議します。
調停での対応のポイント
調停では、上記方針に従い、何を話すかを決めます。離婚調停では、多くの場合、事実関係を否定して一通り事実を説明をするにとどめた方が、いい場合が多いです。
裁判では、お互いの言い分が異なり、客観的な証拠がない場合には、証人尋問により心証が得られない限りは、主張したものの不利に扱うことになっています。そして、調停では、事実関係の有無を判断することはしません。
そのため、DVについての主張が食い違っている、という事実を調停委員に認識させれば、それ以上調停委員としては、DVがあったとことを前提に話をすることはできません。
反論の際のポイント
反論の際のポイントは、全部を否定するのではなく、経緯を説明することです。
そんなことはなかった、とだけ言うのではなく、当該事実がいつのことだと思われ、実際にその日にあったことはどういったことだった、ということを説明します。
大切なことは、相手の言い分に、何から何まで反論し、相手に認めさせようと考えないことです。
弁護士へ相談する際のポイント
実際に弁護士へ相談する際のポイントや、弁護士の選び方をご説明します。
1 きちんと事実関係を確認する弁護士かを見極める。
他の弁護士へご相談に行かれたのちに、私のところへご相談にいらっしゃった方からたまに聞くのは、他の弁護士に相談に行って相手方の文書を見せたら、事実を聞かずに頭ごなしにお説教をされたというケースです。
離婚事件は、弁護士の個人的な想いが入りやすいため、しばしばこのようなことが生じます。
2 事実関係を正直に伝え、反応を見る。
弁護士に、事実をきちんと伝えましょう。本当にあったことなのか、本当はなかったことなのかは、相手方へ反論する方針を決めるための重要なポイントです。
事実を伝えたうえで、その事実に対して弁護士がどのような反応をするのか、どういった方針で進めるのかを、確認します。
弁護士の反応で、合わないと思えば、依頼しない方がいいですし、弁護士の方針が納得できないなら、違う弁護士へ相談して他の弁護士の考えも聞いたうえで、依頼する弁護士を選ぶのがよいといえます。
精神的DVかどうかを論じる実益?
しばしば、精神的DVが相手方から主張され、また精神的DVという言葉の響きから、過剰に反応し、これを強く否定しようとしてしまうことがあります。
しかし、のちに述べますが、そもそも主張との関係で事実関係を確定する必要があるかどうか、つまり、裁判で、精神的DVの有無を論じる実益があるかどうかは検討が必要です。
それは、離婚の場合、事実関係があったかなかったか、及びあったとした場合にこれが離婚原因や慰謝料を認めるに足りる程度のものかどうか、といったことを論じれば足りるからです。
まとめ
あいなかま法律事務所の所長弁護士中村正樹は、男性側からご依頼を受けたケースも多く取り扱った実績があります。
妻側から身に覚えのないDVを主張されている方は、一度ご相談ください。