婚約中の不倫が許せない方へ。婚約中の不倫でも慰謝料が請求できます。

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 婚約中に不倫が発覚したので、婚約を破棄した、慰謝料や式場の予約にかかった費用を請求したい、というご相談を受けることがあります。

 そこで、婚約中の不倫の場合に慰謝料が請求できるのか、裁判例をもとに検討したいと思います。

 なお、先例としては、大正時代にされた大審院(戦前の最高裁判所)の判断があるのですが、時代背景が大きく異なるため、今回は直近の裁判例のご紹介をしたいと思います。

事案の概要

 今回ご紹介する裁判例は、佐賀地方裁判所平成25年2月14日(平成24年(ワ)第273号)です。

 このケースは、プロポーズをして、両親に挨拶を済ませ、結婚式の会場をした後に、不倫がされました。

 入籍後に、入籍前の不倫が発覚したため、裁判で婚約中の不倫について問題となりました。

婚約した時期の認定

 交際中のカップルが浮気をした場合、通常、慰謝料は請求できません。しかし、婚約しているのであれば、慰謝料を請求できる、というのが裁判例の考え方です。

 そのため、本件で、いつから婚約が成立したかが問題となり、裁判所は、遅くとも結婚式場の予約をした時点で婚約が成立したと認定しました。

 本件は、結婚式場の予約ののちに不倫が行われているので、裁判所は上記のような認定をしましたが、本件では、もう少し早い時期(両親へのあいさつを済ませた時期)を婚約とする考え方も成立しそうです。

婚約中の不倫についての裁判所の考え方

 裁判所は、婚約中の不倫について以下のとおり述べて慰謝料の請求を認めました。原告は女性、被告は男性になります。

 原告と被告は、婚約が成立したのであるから、正当な理由のない限り、将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負っているから、それぞれ婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務を負っていたというべきところ…

佐賀地方裁判所判決平成24年(ワ)第273号

 上記のとおり、本件では、守操義務を根拠として損害賠償責任(慰謝料)を認めています。

 結婚後の不倫は、「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益」の侵害を根拠として損害賠償責任を認めていますが、婚約中は婚姻共同生活の維持という面がないため、このような構成をとっていると思われます。

何が損害賠償として認められるか。

 本件では、損害賠償として、以下の費目が請求されました。

  • 家具・電化製品等の購入費用
  • 引っ越し費用
  • 結婚式費用
  • 慰謝料
  • 弁護士費用(損害額の1割)

 裁判所は、婚約中に不倫を知っていれば結婚しなかったであろうから、引っ越しや結婚式の費用が損害にあたると認定し、上記費用からご祝儀と結納金を除いた女性の負担分を損害賠償として認めました。

 また、本件で慰謝料は裁判所は以下のように指摘し、200万円としました。

…多くの招待客の祝福を受けて希望に満ちあふれた結婚生活に入った直後、被告が婚約成立後に別の女性と性的関係を持ち、結婚後もその女性を誘っているという重大な背信行為を知って驚愕し、被告に裏切られたことによる屈辱と絶望のどん底に陥り、…

佐賀地方裁判所判決平成24年(ワ)第273号

 慰謝料の額については、婚約中であったという事情が重く考慮されていると思われます。

不倫相手へ慰謝料が請求できるかは、残された問題です。

 上記裁判例では、婚約者(夫)への慰謝料の請求でしたが、不倫相手へ慰謝料が請求できるかは問題になります。

 最高裁判所の立場からすれば、慰謝料は請求できそうですが、先ほどご説明したように、慰謝料の根拠として裁判例が指摘する内容が異なるため、慰謝料は請求できないと判断される可能性がありえます。

まとめ

 婚約中の不倫についても慰謝料が認められますので、不倫されて悩まれている方は、一度弁護士までご相談ください。

最後に(婚約中の不倫についての男女の意識の違い)

 婚約期間中に不倫をする神経がわからない、という方もいらっしゃると思います。

 結婚した知り合いの話やご相談にいらした方のお話を伺うと、男性は、結婚前に羽目を外したがる傾向がある気がします。

 海外ドラマをご覧になる方は、バチェラーパーティーと称して、独身最後の夜に、仲間とストリッパーを呼んで大騒ぎするシーンが描かれることはご存じだと思います。