越境した枝の削除に関する民法の改正についてご説明します。

この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

​ 民法の規定の改正により、令和5年4月から、隣の土地に生えている木からはみ出してきた枝を、適切な手続きの元で、裁判を経ずに切っていいことになるそうですので、ご紹介します。

 この改正を見たとき、昔聞いた法律に関する小ネタを思い出したので、その話を説明しながら改正法について解説します。

 なお、以下の説明は、一部内容を単純化しておりますので、ご容赦ください。

小ネタ

 そのときは、確か柿(?)と竹の子を例にしてたと思いますが、隣の家からはみ出した柿は、勝手に取ってはいけない、隣の家に竹が生えてて、自分の庭の地面から筍が生えてきたら、それは取って食べてもいい、

という内容です。

なんで竹の子と柿で取り扱いが違うんでしょう?というところが、法律の面白いところです。

民法の説明

柿(枝)の取り扱い

 隣の家の木がこちらにはみ出し、そこに柿がなっている状況を考えます。柿が木にくっついている状態では、柿は当然に木の一部なので、木の所有者が柿を所有しています。

 そして、はみ出した木や枝については、改正前民法233条1項に、

 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

改正前民法233条1項

 と規定しており、所有者に対して切ることを請求することはできますが、自分で切ることはできません。

 なお、柿が地面に落ちてきた場合もご説明します。

 民法では、「果実」に対する所有について規定があります。物の用法に従い収取する産出物を天然果実、物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物(典型的には利息)をそれぞれ定めています。天然果実は、これを収取する権利を有する者に帰属することとされています。

 そのため、柿が木から離れて地面に落ちても、それは木の所有者のものとなります。 

竹の子(根)の取扱い

 では、竹の子はどうでしょう?竹の子は、根っこ(地下茎)が地上へ出てきたものです。そして、民法では、

隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

改正前民法233条2項(改正後民法233条4項。条文に変更なし)

 と定められており、また、切った根の所有権は、切った者に帰属するというのが通説です(反対説あり)。

 以上のように、柿と竹の子で取り扱いが違います、というのが、民法の小噺です。

 なお、自分で切ってもいいとはいえ、切る必要がないのに切った場合や切ったことで相手に大きな損害を与えた場合には権利濫用となる可能性がありますので、ご留意ください。

なぜ取り扱いが違うのか

 上の二つを比べると疑問に思われる方もいると思います。なぜ、はみ出してきた枝と、はみ出してきた根っこで取り扱いが違うのか、という点です。

 これについては、その理由として、根っこに比べて枝は重要であること(枝や実の方が高価)、枝の場合は相手に伝えて移植等をする機会を与えるべきという点と、根っこは、相手の土地に立ち入らずに切除することが可能である点などが理由として挙げられています。

改正法

それでは、隣の柿の木がはみ出してきて邪魔なので、はみ出した部分を切ってしまいたい、という場合はどうでしょうか?

 民法上、他人の所有物を、勝手に毀損してはいけませんので、枝がはみ出していても、それを切ってはいけず、裁判所に対して訴訟を提起した上で、判決を得て強制執行を行う、というのが流れでした。

 しかし、法律改正により、以下の場合には、裁判によらず、はみ出した枝を切っていいこととなりました。

  • 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
  • 一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
  • 二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
  • 三 急迫の事情があるとき。
改正民法233条3項

 上記のとおり、①事前の催告、②所有者不明、③急迫の事情が挙げられています。

 はみだしているからといって、いきなり切ってしまうことは、絶対にいけません。仮に、③にあたるのではないかと思ったとしても、自分の判断で切るのではなく、必ず法律の専門家に相談してください。

 詳細な内容の説明は省略いたしますが、このような改正がされた背景には、適切に管理されていない土地が増え、その結果生じる相隣関係のトラブルについて、新しい規律が必要ということのようです。

まとめ

 以上のとおり、民法233条の改正の記事を見て、個人的に思ったことをご説明いたしました。