はやりのChatGPTを弁護士が試してみた。
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最近、ChatGPTが話題になっています。ChatGPTとは、質問などに対してAIが答えるオンラインの対話サービスで、無料登録すればだれでも使えるようです(有料プランもあるようです)。
早速ですので、私の方でも登録して色々と使ってみました。
その結論としては、知っていることを聞いたり、遊びとして使うのであれば、十分楽しめるけれども、本当に知らないことを聞くのは今のところ、まだ不十分と感じられました。
以下では、私の方で、いろいろと試してみた感想をお伝えします。
ChatGPTに関する注意書き
以下では、ChatGPTの出力結果を引用しますが、その前に出力された内容の著作権について触れておきます。
現状では、ChatGPTの出力結果は、ユーザーに譲渡されることとなっています。そのため自分で質問を入力して、それで得た回答について、これを本ブログで引用することは問題ないといえるでしょう。ただし、私の方でChtatGPTの仕組みを完全に把握できていないため、ChatGPTの出力結果自体が、他のコンテンツをそのまま流用(コピペ)した可能性はないとはいえないと考えています。
そのため、本ブログでは、ChatGPTで出力した内容は引用にて表記します。また、質問は、「……」と括弧でくくっています。
ChatGPTの回答(引用部分)については、法律上不正確な部分がありますので、引用部分について正しい記載であると誤解されないよう、ご留意ください。
また、ChatGPTでは、異なるユーザーが同じ質問をしても、同じ回答が返ってくるとは限らないようですので、私の質問を、ご自身でも試してみようと考えた場合には、その点もご理解ください。
法律用語を聞いてみた
早速ですが、法律用語を聞いてみることにします。
法律と言えば、「六法」という言葉を聞いたことがあるかと思います。六法とは、主要な6つの法典をまとめて呼ぶ呼び方です。6つの法律を挙げれば正解となるもので、六法が何かを知らない人でも、インターネットで調べれば回答できるレベルの、ある意味では簡単な問題です。
先に正解を挙げると、「憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法」です。
それでは、ChatGPTに聞いてみましょう。「六法とはどの法律を指すのですか?」
「六法」という用語は、一般的に日本の法律を指すことが多いです。具体的には、次の6つの法律を指します。
- 日本国憲法
- 民法
- 刑法
- 商法
- 憲法解釈法
- 民事訴訟法
これらの法律は、日本の法律制度において非常に重要な役割を担っており、法律家や司法試験を受験する方などには必須の知識となっています。ただし、この用語が使われる国や地域によっては、異なる法律を指す場合がありますので、注意が必要です。
惜しいですね。刑事訴訟法が入っておらず、「憲法解釈法」という法律が入っています。ちなみに、憲法解釈法という法律は有りません。
このブログを書く前に、同じ質問をしたときは、商法の後、「労働法、税法」が入っていました。
6つ答えを挙げるのは、やや難しかったのかもしれません。そこで、次は、答えが3つになる、憲法が定める国民の義務を聞いてみます。答えは、「教育を受けさせる義務」(憲法26条2項)「勤労の義務」(憲法27条1項)「納税の義務」(憲法30条)です。
それでは、ChatGPTに聞いてみましょう。「憲法が定める国民の義務は何ですか?」
日本国憲法において、国民の義務については第12条に記載されています。以下はその要約です。
- 納税義務 すべての国民は、法律の定めるところにより、公共の福祉に必要な財政上の措置を誠実に守り、特に、租税に関する義務を適当に果たさなければならない。
- 教育義務 すべての国民は、法律の定めるところにより、義務教育を受けなければならない。
- 公務員の奉仕義務 公務員は、全体として国民の福祉について誠実に責務を遂行することを重んじ、政治的中立性を保持しなければならない。
そもそも、条文が間違っています。憲法12条は国民の義務と関係ありません。3つの義務のうち、「納税義務」については、内容はかなり怪しいですが、高校生の期末テストなら正解でいいと思います。法学部のテストなら、「財政上の措置を誠実に守り」という記載で、間違いなく不正解になる内容です。
教育義務は、子女に教育を受けさせる義務ですので、誤りですし、公務員の奉仕義務は、憲法の定める義務ではありません。
私の質問が良くなかったのかもしれません。はい、いいえで答えられる質問なら、正確な回答が導けるのかもしれません。
次は、日本国憲法の施行年を聞いてみましょう。正解は1947年(5月3日)です。(ちなみに公布されたのが1946年11月3日です)。
それではChatGPTに聞いてみましょう。「日本国憲法が施行されたのは1947年である。正解か不正解か。」
正解です。日本国憲法は1947年11月3日に施行されました。
きわめて惜しいです。余計なことを書かなければ正解でした。
一般的なことを質問してみた。
法律の問題はちょっと難しいのかもしれません。そこで、歴史の問題を質問してみました。
「平安京に遷都したのは710年である。正解か不正解か。」(もちろん不正解です。平城京遷都が710年、平安京遷都が794年です)
正解です。日本の平安時代の始まりとともに、平安京が京都として建設され、710年に遷都が完了しました。
なんでも正解というのでしょうか。もっと簡単な問題にしてみます。
「日本で一番高い山は北岳である。正解か不正解か。」
不正解です。日本で一番高い山は富士山であり、北岳は富士山の北側にある標高3,193mの山です。富士山の標高は3,776mで、日本最高峰となっています。
ようやく正解にたどり着きました。
少し気になったので、少し質問を代えてみました。
「日本で一番高い山は富士山である。正解か不正解か。」
不正解です。日本で一番高い山は北岳ではなく、南アルプスにある槍ヶ岳(標高3,180m)です。富士山は、日本で一番高い山ではありませんが、日本を代表する山として有名です。
前の質問に引っ張られているのか、なぜか北岳について言及がされています。
私の質問は、まずは簡単に答えられるように、という点から、意図的に、正確な回答がインターネット上の内容から容易に導ける質問をしてみましたが、それでも、これだけ、回答が怪しいと、なかなか専門的な内容を聞くには躊躇が必要です。
何度か利用していて気が付きましたが、質問する度に、回答が変動するようです。
そこで、六法について改めて質問したところ、以下の回答が得られました。
「六法」とは、日本において法律や法令を分類して編纂した法令集のことで、以下の6つの法律を指します。
- 憲法
- 民法
- 商法
- 刑法
- 民事訴訟法
- 刑事訴訟法
これらの法律は、日本の法律制度において非常に基本的かつ重要なものとなっています。
正解です。
答えのない質問を聞いてみた
少し視点を変えて、明確な答えがない質問、人生相談に近い質問をしてみようと思います。
そこで、このような質問をしてみました。なお、これは、一般論で、特定のケースを念頭に置いたものではありません。
「夫が毎晩遅くまで帰ってきません。本人は仕事だと言っていますが、お酒の匂いをさせて帰ってきているので、絶対に仕事だけのせいではないと思います。まだ子どもも小さいので、きちんと早く帰ってきて子どもとの時間をきちんと作ってほしいです。どうすればいいですか。」
これに対する回答はこちらです。
まず、夫に対してその状況があなたにどのような影響を与えているか、そして夫が早く帰ってきて欲しい理由を、話し合うことをお勧めします。その際、お互いが落ち着いて話し合うことが重要です。お互いが意見を交換し、互いの考えや気持ちを理解し合うことで、問題解決につながる可能性があります。
また、夫がお酒を飲んでいる場合は、アルコール依存症の可能性もあるため、専門の医療機関を受診することをお勧めします。
もし夫が話し合いに応じない場合や、アルコール依存症の疑いがある場合は、専門家やカウンセラーに相談して、適切なアドバイスを得ることが重要です。また、子どもの面倒を見るために、家族や友人、地域の支援を受けることも考えてみてください。
2段落目はともかく、回答としては無難な回答と言えるかと思います。ただ、面白みには欠けるところがあります。追加で質問してみます。
「夫と話し合おうとしても、いつも忙しいなどと言われまじめに向き合ってもらえません。どうすれば夫と話し合いができますか。」
夫が話し合いに応じてくれない場合、以下のようなアプローチを試してみることをお勧めします。
- 相手の立場に立って考える 夫が忙しいと言っている場合は、どういう状況なのか理解し、その上で自分が望む話し合いのタイミングや方法を提案してみましょう。相手の立場に立った提案をすることで、相手も話し合いに応じやすくなるかもしれません。
- タイミングを見計らう 夫が疲れているときやストレスがかかっているときに話し合いをすると、うまくいかない場合があります。そのため、相手の気持ちに寄り添い、話し合いのタイミングを見計らうことが大切です。
- 第三者に相談する 夫が話し合いに応じてくれない場合は、家族や友人、専門家やカウンセラーなど、第三者に相談することも考えてみてください。第三者が間に入ることで、話し合いが進むかもしれません。
- 調停や相談窓口を利用する 夫との話し合いがうまくいかない場合は、調停や相談窓口などの専門機関を利用して、適切な解決策を見つけることもできます。専門機関は、夫婦関係の問題を解決するために様々なサポートを提供しています。
以上のようなアプローチを試してみることで、夫との話し合いが進む可能性があります。ただし、相手に理解してもらうためには、相手の気持ちに寄り添い、冷静に対応することが大切です。
意外と、きちんとした答えが出てくることに驚きます。
しかし、ちょっと内容に特定の分野の知識が求められることを聞くと、不適切な回答がされます。
以下は、弁護士になる方法を質問したところ、法科大学院への進学を経た方法が回答されたため、それ以外の方法について聞いた際の回答です。
「法科大学院へ進学せずに弁護士になる方法はありませんか。」
法科大学院へ進学せずに弁護士になる方法としては、司法試験の一般受験や司法修習生制度があります。
- 司法試験の一般受験 法学部を卒業し、法務省が実施する司法試験を一般受験することができます。ただし、法科大学院で学んだ基礎的な法律知識を持っていない場合は、試験に合格するのは困難となるでしょう。
- 司法修習生制度 法学部を卒業した後、司法修習生として最長2年間の実務研修を受けることができます。修習期間中に司法試験に合格すれば、弁護士登録が可能となります。ただし、司法修習生になるには、合格率が非常に低く、また修習期間中の給与も低いため、覚悟が必要です。
いずれの方法も、法科大学院を卒業することに比べると、難易度が高く時間や費用もかかるため、よく考えてから進路を選ぶことをおすすめします。
弁護士に詳しくない方には、一見すると、正しく見えるかもしれません。
しかし、これは間違いです。司法試験の「一般受験」はなく、予備試験という試験に合格すると、司法試験の受験資格が与えられます。なお、予備試験を受けるために、法学部を卒業する必要はありません。
また、司法修習制度は、司法試験に合格した後に、弁護士等の登録をする前にする研修です。司法試験合格前に司法修習生になることはできません。
活用方法
これまで見てきたものや、このほかに私の方で色々と質問してきた結果として、ChatGPTの回答としては、以下の傾向がみられました。
- 知識を聞く質問は、不正確なことが多い。
- 専門知識になればなるほど、回答は不正確になる。
- 一見正しそうな回答でも、よくよく見るとおかしい回答がある。
- 正解がない質問については一般的な回答がされ参考になる面もある。
現時点での回答の制度を見ると、弁護士業務で積極的に活用することはまだ難しいと思われます。ただ、思ったより柔軟な回答が返ってくるので、アイデアを出す際に、ちょっと聞いてみると、新しい視点で回答が返ってくるかもしれません。
また、一見すると正しそうな答えが返ってきてしまうため、専門外のことに使うには、慎重になる必要がありそうです。