話す技術・聞く技術 ハーバード・ネゴシエーション・プロジェクト
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最近、読み返した本「話す技術・聞く技術」(以下、「本書」といいます。)の紹介です。
- 会話がうまくいかない。
- 他人と話をしていると、正しいことを話しているはずなのに、相手は納得しない。
- 自分は丁寧に話しているはずなのに、何となく険悪な雰囲気になってしまう
- 話をしていると、つい攻撃的な言い方になってしまい、けんか別れして、後で反省している。
このような経験がある、という方に、非常に参考になる本だと思います。
参考になる点
誰が正しいのかを焦点にしないこと
私たちは、日常的な話の中で、「どちらが正しいのか」という論争をしがちです。そして、この論争は、いつも、私が正しいという前提から出発します。
本書は、この点を、「あなたの言い分は、自分の中では理にかなっている」と指摘します。しかし、相手の中では理にかなっていないのでしょう、論争が生じ、お互いが対立します。
そこで、本書では、論争するのではなく、相手のストーリーの理解へと、焦点を移すことを提案します。
そのうえで、相手のストーリーを否定するのではなく、自分のストーリーを否定するのでもなく、両方のストーリーがあることから出発することを提案します。
相手を責めない
どうしてこんなことをしたのか、という行動の意味付けを、私たちは想像します。そして、これは、多くのケースで、相手に非がある(相手が悪い)という意味付けをしてしまいます。
そして、これは、そのまま相手への非難=責めへと結びつきます。
本書では、相手を責めてはいけないと論じています。
その理由は、話づらいからでも、関係を壊すからでもなく、「問題の本当の原因になっているものが何かを知り、それを修正するための行動を起こすことのさまたげになるから」だとしています。
本書では、プレゼンテーションの際に、アシスタントが誤った資料を持ってきた結果、プレゼンテーションが台無しになってしまったケースをもとに説明しています。
責めから生じること
このケースは、アシスタントが悪い、ということは簡単です。そのため、アシスタントを責めることは、当然だと思われるかもしれません。
しかし、本書は、このケースで、責めることが適切でないと論じます。
「責めること」は、問題を引き起こしたのがアシスタントのせいであり、アシスタントの行為はネガティブに判断されるものであり、その結果アシスタントは罰せられるべきだとのメッセージを与えます。
そして、アシスタントは、当然、これに対して、あらゆる方法で自分を守ろうと考えます。ただただ謝ることや、逆にこちらを非難することなどです。
そこで、本書は、この問題について、責めではなくて、加担を考えることを提案しています。
加担によって生じること
加担とは、お互いに何をしたせいで、あるいはしなかったせいで、このような状況に陥ってしまったのかを考えることです。
加担を相互に考える結果、生じた状況を理解し、どうすれば変えられるかが考えられるためです。
私たちの日常の話し合いの目的は、相手を非難することではなく、相手にわかってほしい、お互いに理解しあって今後の関係をよりよくしていきたい、そのために、責めではなくて加担という視点で考えよう、というのが、本書の提案です。
ここから、どういう話をするのか、感情についての話などへ進んでいきます。ここまで読まれて興味を持たれた方は、ぜひ購入して読んでいただければと思います。
本のタイトルについて
「ハーバード」、「ネゴシエーション」というタイトルが前面に押し出されており、副題は「交渉で最高の成果を引き出す「3つの会話」」となっています。
しかし、内容は、交渉やビジネスに限らず、夫婦や友人との会話にも役に立つものです。
離婚事件を扱う弁護士としては、むしろ、夫婦の会話において、この本の内容を役立ててほしいと思います。
読みにくいと感じる方もいるかもしれません。
海外のこの種の本の特徴である、随所に、色々な事例や研究成果を挟んでいる書き方をしているため、冗長で読みづらいと感じる方もいると思います。
この叙述に慣れない方は、エピソードは軽く読むなど、メリハリをつけて読むといいと思います。
まとめ
この本を読みなおしたきっかけは、先日ツイッターでした私の発言について、色々な方からいただいたコメントを読んだためでした。
コメントを返すにあたって、色々と参考になる本です。