異議あり!民事裁判での異議についてご説明します。
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最近、立て続けに証人尋問をする機会がありました。
そこで、今回は、お客様からしばしば聞かれる、いわゆる「異議あり!」について、私の実例や実感を含めてご紹介します。
この記事は、民事裁判での異議について、私個人の考えや感想となりますので、あらかじめご了承ください。
異議あり!についてのイメージと実際
「異議あり!」については、某ゲームでのイメージが強いのではないでしょうか。証人が嘘をついているとき、これに対して異議ありと発言し、証拠を突きつけるシーンです。
実際には、いわゆる「異議あり!」は、このような使われ方は絶対にしません。
裁判で行われる、いわゆる「異議」は、民事訴訟規則115条2項に規定されている事項について、裁判長に相手方の尋問の禁止、制限を求めるものです。
裁判長は、質問が前項の規定に違反するものであると認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。
民事訴訟規則115条3項
規定からわかるように、相手方弁護士の質問が不適切(規則に違反)である場合にするのが異議であり、証人の嘘についてするものではありません。
異議の内容
先ほど、相手方弁護士の質問が不適切(規則に違反)である場合に異議をするとご説明しました。実際には、民事訴訟規則上、以下の質問が制限されています。
当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号から第六号までに掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
一 証人を侮辱し、又は困惑させる質問
民事訴訟規則115条2項
二 誘導質問
三 既にした質問と重複する質問
四 争点に関係のない質問
五 意見の陳述を求める質問
六 証人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問
これらの質問がされた場合に、弁護士は、その場ですぐに異議をだすこととなります。
異議がだされると、相手方弁護士が自発的に質問を代えたり、裁判官が異議について、却下する、相手方弁護士に質問の変更を求める等の対応をします。
実際に「異議あり」を使うか。
私個人でいえば、これまでの民事裁判で、私から異議を出さなかった証人尋問はほとんどありません。
私は、「異議あり!」というのではなく、「異議があります」と言いながら立ち上がり、その後で異議の理由を説明します。
また、質問が不適切であったり、質問の特定が不十分で、証人の方が困惑している状況では、敢えて異議とは言わず、質問の趣旨を明確にするよう促す程度にとどめることもあります。
一方で、私の経験として、相手方から異議が出された記憶は多くありません。弁護士によって、どの程度異議を出すのかの判断は異なるようです。
最近は、相手方からあまり異議が出ないことを想定し、多少踏み込んだ質問を準備して、相手方の対応により使い分けています。
なお、私は、比較的多く異議をいう弁護士と思われ、実際に異議を却下されることもしばしばあります。それでも、異議をいった方がいいというのが、私の判断です。
実際にどのような異議が多いか。
私が、実際にする異議としては、以下のケースが多い印象です。
主尋問で誘導尋問が多用される場合
弁護士によっては、誘導で得られた供述は、裁判所のほうで信用性評価しづらいため、主尋問での過度な誘導についても、あまり異議を出さないという考えの弁護士もいらっしゃいます。
しかし、実際に異議を出して、誘導ではない形で聞くと、そもそも主尋問で想定していた内容の供述自体が出てこない、というケースも多く、まさに誘導尋問が想定している質問によって言わせている状況はしばしば見受けられます。
また、裁判官によっては、弁護士が誘導し、「はい」と答えるケースでも、これをもとに判断するケースもあるようです。
そのため、私は、誘導が核心部分に近い場合、異議を積極的に出すようにしています。
このケースは、実際の証人尋問では、非常に多く目にします。ほおっておくと、主尋問において、証人が、「はい」、「そうです」ばかり発しており、弁護士の方が話している時間が長いと感じられることもあります。
反対尋問での繰り返しの質問
同じことを聞くのは、主尋問で1回、反対尋問で確認のため1回、というのが限度だと思います。反対尋問で、望む答えを得ようと、同じ内容が繰り返し質問されるというのは、(悪い尋問の典型例ではあるのですが)、比較的しばしばみられるところです。
証人が委縮してしまうことにもつながりかねないので、明らかに重複しているケースでは、きちんと異議を出すようにしています。
争点に関係のない質問
意図しているのではないと思いますが、相手方弁護士が、聞く内容を考える間の時間つなぎの趣旨なのか、争点と関係ない質問をしだすことがあります。内容によっては、証人に話させてもいいのですが、ケースによっては、プライベートな内容を質問されることもあり、その場合には異議を出すようにしています。
誤導尋問
誤った前提に基づき質問がされるケースがあります。どのような質問か、一言で説明は難しいのですが、その場所に行っていないと説明しているのに、行ったことを前提に何をしたのか聞かれる、という質問です。
故意でしているわけではなく、言い分が対立している際に、勇み足でしてしまっているケースがほとんどだと思われますが、不適切な質問であるため、異議を出しています。
弁護士の意見を何度も押し付ける質問
これは、しばしばみられる類型です。そもそもこのような尋問をすることに訴訟上の意味はほとんどないのですが、証人が困惑することから、証人を守るため、異議を出して辞めさせるようにしています。
なお、色々と事実関係を聞き、矛盾を引き出したうえで、その矛盾を突きつけ、弁護士の意見を告げて問い詰めるのは、一つの尋問のテクニックだと考えています。
まとめ
証人尋問での「異議あり!」について、ご説明しました。
ドラマやゲームのように、「異議あり!」と大きな声でいうことは有りませんが、いわゆる異議であれば、しばしば法廷でみられるところです。
もし、裁判傍聴などで、証人尋問を見る機会があれば、異議が出るか、その異議はどのような異議だったか、というところに着目してみるのもいいかもしれません。
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