法務省が作成した養育費調停申立書がとても気になりました。
この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
法務省が、一般の方にわかりやすい養育費調停申立書のひな形を公開したというニュースが目に留まりました。
どのようなものか気になったので、実際にホームページにアクセスしてみてみましたので、私のホームページを見た感想などをお伝えします。
法務省が作成したところに驚きました。
裁判所が書式を改めたのであれば、それほど気にならなかったのですが、法務省が作成した、というところが非常に気になりました。
学校で学ぶ通り、日本は「三権分立」という制度で、立法、行政、司法がそれぞれ独立しています(厳密な説明は省きます)。
このうち、裁判所は司法に、法務省は行政に属しており、一般論として行政が司法の在り方に影響を与えるのは、慎重になるべきです。また、大げさな言い方をせずとも、裁判所の申立書のひな形を、別の組織である法務省が作成し公開することに驚きました。
もちろん、事前に裁判所と調整は済ませているのだと思います。
養育費請求申立書の作成自体は、見た目ほど難しくないと思います。
今回、裁判所が作成している書式とは別に、法務省が書式を作成したのは、平易な言葉づかいで分かりやすく申立てができるように、という理由でしょう。
裁判所webページでは、裁判所が作成した申立書の書式が公開されており、これに記入すれば申し立てができるようになっています。記入の仕方は、裁判所に行けば手続き案内を受けることが可能です。
実際には、その書式で作成しなければいけないわけではなく、弁護士によっては、裁判所の書式を活用しない形で申立てを行っているケースもしばしば見かけますし、裁判所は、必要事項が適切に記載されていれば、これを受理します。
裁判所が作成した書式は、実際によく見てみると、申立書だけであれば、書かなければならないことはそこまで多くなく、法務省作成の書式と記載する内容はほとんど変わりません。
ただ、正確な書式という性質上、細かい注意書きなどが多く、ぱっと見で分かりにくく、申立の障害になってしまっているという面はあるかもしれません。
裁判所のwebページの申立案内で一番気になる点は、書式ではないと思います。
裁判所webページを見て、養育費申立てをしようという方が自分ではできないと感じてしまうのは、申立書の分かりにくさではなく、これから述べる点にあるのではと感じています。その点は、法務省webページでも非常に意識されています。
それは、裁判所webページでは、提出が必要とされている書類がたくさんあることです。
以下はとある裁判所で申立の際に提出を求めている書類の一式です。
- 申立書原本及び写し各1通
- 連絡先等の届出書1通
- 事情説明書1通
- 進行に関する照会回答書1通
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)1通
- 申立人の収入関係の資料
- 収入印紙
- 郵便切手
このうち、実際に記入が必要な書類上の4つで、それぞれ書式が裁判所webページで公開されています。
役所に出す書類を4通作成し、その他印紙や郵便切手(券種も細かく指定されています)が必要となりますので、大変だと感じてしまい、申立が難しいと感じてしまう人がいるだろうという問題意識が、法務省webページでも見て取れます。
法務省webページの案内では、「絶対に必要なものはこれだけです。」(「これ」とは申立書のことです)と一言で書いてあります。法務省は、敢えて、この申立書だけで申立できますという案内の仕方をしています。
当然事前に裁判所と調整していると思いますが、これは申立をされる方に優しい方向性だと思います。
なお、法務省のwebページの一番下には、戸籍と収入印紙、郵便切手を一緒に出さなければいけませんとの記載がありますが
法務省が作成した申立書の内容を見てみました。
法務省作成の申立書と、作成方法についての動画を見てみました(見た時点ではまだ再生回数は3桁でした)。
とにかく気になったのは、「(相手の住所が)わからないときは、最寄りの裁判所に確認してください」という記載です。動画でも同内容の説明をしています。
実際、調べること自体はそれほど難しくないのですが、裁判所で教えてもらってくださいといういわば丸投げの感じが、とても不思議です(そもそも裁判所で聞けば教えてくれることは初めて知りました)。
方法としては戸籍をたどり戸籍の附票を取り寄せることなので、戸籍を管轄する法務省が、説明する方がいいのではと思いました。
その他、申立書は、一般に2通提出することとされており、 裁判所においてある書式は、3枚複写式となっており、2枚を提出し、1枚を控えとして手元で保管する方式となっています。
法務省作成の書式の場合は、1枚でいいのか。裁判所に行った際に、2枚必要ですと案内される可能性があるなら、コンビニでコピーして2部提出するように案内した方がいいのではと思いました。
見つけるのに時間がかかった
一番のネックは、検索でなかなか出てこないことでしょうか。
今回、この記事を書くために法務省の該当ページを検索しましたが、なかなか出てきませんでした。
このあたりは、今後の課題といえそうです。
まとめ
色々気になる点は指摘しましたが、平易な言葉遣いがされており、素直に読み進めて作成できる点で、価値のある書式だと思います。
実際には、この書類に記入して、裁判所の窓口で細かい点を確認して申し立てされるのが、一番よく、その導入として、裁判所の難しそうな申立書より、こちらの申立書を作成しとりあえず裁判所の手続き案内窓口を訪れ、その他必要書類等の案内を受けるのが、一番いいと思います。
いきなり裁判所へ行くのは抵抗がある、ということであれば、あいなかま法律事務所では、無料法律相談を実施しておりますので、お問合せください。
- 裁判例にあらわれた離婚原因
- 本を読むのが苦手な人へ
- 共同親権。子どもの転居には相手方の同意が必要となることについて
- 調停に代わる審判のご説明と東京家庭裁判所の運用について
- 公正証書の作成で職業を聞かれるのはなぜ?