子の監護者の指定に関する最高裁判所の判例をご紹介します。
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令和3年3月29日、子どもを事実上監護している祖父母が、子の監護者であるとして、家庭裁判所へ監護者指定の申立てができるか、ということについて判断がされました。
結論として、最高裁判所は、子を監護する祖父母であっても、家庭裁判所へ監護者指定の申立てはできない、という判断を下しました。
ニュースでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますので、この点についてご説明します。
事案の概要
判決文によれば、子どもが生まれてから、子ども(A)は、祖母(X)と、子どもの母親(Y)と同居して生活していたようです(ちなみに、子どもの父親は子どもが生まれてすぐ離婚しています)。
数年後、子どもの母親(Y)は、交際相手と同居を始め、数か月後に結婚、子ども(A)を交際相手の養子としたようです。子供の母親が交際相手と同居を始めてから、子ども(A)は、祖母(X)と同居を続けていました。
上記経緯の中で、詳細な事情は不明ですが、祖母(X)が、子ども(A)の監護者指定の申立てをしたようです。
最高裁判所の判断
最高裁判所は、以下のとおり述べて、祖母からの申立てを不適法であると判断しました。
民法766条1項前段は,父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者その他の子の監護について必要な事項は,父母が協議をして定めるものとしている。そして,これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。」と規定していることからすれば,同条2項は,同条1項の協議の主体である父母の申立てにより,家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。
(中略)
したがって、父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。
最高裁判所 令和2年(許)第14号 子の監護に関する処分(監護者指定)審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
なお、上記で指摘されている民法766条第1項、第2項は以下のとおりです。
1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
民法766条
最高裁判所の判断を見ていただくとわかる通り、ほぼ条文の文言から結論を導き出しています。
原審(高等裁判所)は、子の福祉を全うするため、民法766条の法意に照らし申し立てができると判断していたようですが、この点について最高裁判所は否定しています。
上記判決が残した課題
上記判決が残した課題を理解するために、これまでされていた、監護者指定の申立てに関する議論の要点を見てみることとします。
監護者指定の申立ての整理
問題点を見る前に、監護者指定についてわかりづらいポイントを整理します。
監護者指定については、関係者として、
- 監護者指定の申立てをする人
- 監護者として指定される人
の2者が関係者として登場します。
監護者として指定される人について
上記のうち、監護者として指定される人についてまずはご説明します。
監護者として指定される人は、父母以外であっても、例えば祖父母を指定することも可能と考えられています。実際、監護者として父母を指定することが適切とはいえない場合に、祖父母を指定する、ということが行われてきました。
ご紹介した今回の判決の論理からすれば、監護者として指定されるものには父母に限定する旨の制限はないと思われますので、これまで通り父母以外の指定ができるという考え方が維持される可能性は高いと考えています。
監護者指定の申立てをする人
監護者指定の申立てをする人については、対立がありましたが、一つの考え方として、祖父母も申し立てができるという考え方も有力に主張されていました。
その理由は、監護者として父母以外を指定できることから、監護者として指定される父母以外の第三者について、もし申立権を認めなければ、利害関係人として受動的に監護者に指定されることとなってしまい、その第三者が父母の意向に左右されることとなり、子の福祉の観点から不十分である、ということです。
今回の最高裁判所の判決は、この考え方を否定したこととなります。
ここまでのまとめ
今回の最高裁判所の判断から、
- 監護者指定の申立てをする人→父母に限定
- 監護者として指定される人 →父母以外も指定できる
という考え方になったと、整理することができそうです。
残された課題
一般には、監護者指定の申立ては、自分を監護者に指定してほしいという形で申し立てられるケースが多いといえます。詳細は不明ですが、今回判断されたケースも、そういったケースだったと思われます。
第三者からの申立が否定された結果、現に祖父母が子どもを監護している場合でも、祖父母が自ら監護者に指定されるために家庭裁判所へ申し立てをすることができない、ということになります。
祖父母及び子どもの地位が不安定になる、という点は、何らかの形で手当てがされるべきものと考えております。
まとめ
簡潔ではありますが、最高裁判所の判例をご紹介しました。
離婚において、子どもの親権や監護権は重要な争点となります。
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