離婚調停とは?申立てから成立・不成立・手続き後まで完全網羅|弁護士解説

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

離婚調停とは?制度の基本と特徴

離婚調停の定義・目的と法的根拠

離婚調停(夫婦関係調整調停)とは、夫婦の一方が相手方に対し、離婚を求めて裁判所に対して裁判所での話し合い(調停)をする手続きです。

離婚に関する協議・調停・裁判(訴訟)の違いとは

一般に協議離婚といわれるものは、当事者が合意し、離婚届に双方が署名(押印)してこれを届け出ることによりする離婚をいいます。

これに対し調停離婚は、裁判所での調停手続きの話し合いによる離婚をいいます。

裁判離婚は、調停が不成立となったのち、訴訟を提起して裁判官の判決によりする離婚をいいます。

どんなケースで調停を使う?

相手方と離婚について協議したが合意ができず離婚ができない場合に、裁判所の調停委員という中立の第三者を交えて話し合いを行う際に利用します。

また、相手方に対し離婚を求める訴訟を提起したいと考えている場合でも、調停前置主義(裁判をする前に調停で話し合いをする)がとられているため、まずは離婚調停を利用することとなります。

調停前置主義とその意義

離婚について訴訟を起こそうと考えている者は、まずは家庭裁判所に調停の申し立てをすることとなっています(家事事件手続法257条1項)。

離婚調停の流れ・進行ステップ

事前準備は何から始める?

裁判所webページに離婚調停申立書の書式がアップロードされていますので、こちらをダウンロードし、必要書類を確認します。

ダウンロードができない等のご事情がある場合には、裁判所の手続き案内にて、申立書や記入方法、必要書類等の案内を受けられます。

期日の進行イメージ(当日の流れ)

当日は、申立人と相手方が同日に呼び出され、それぞれ別の待合室で待機します。

調停委員が双方から順番に事情を聴取し、双方の意向を聞き取り、調整しつつ合意形成を目指します。

1回の調停はおおむね2時間程度で終了します。

次回期日までの準備・宿題対応

調停の最後に、次回期日の調整が行われます。

その際に、次回までに考えてくることや準備する資料等について説明があります。

調停成立 or 不成立について

調停で合意が成立した場合には、裁判所が調停調書(合意の内容をまとめた書面)を作成します。

調停で合意の形成の見込みがないと判断された場合には、調停は不成立となり、終了します。

弁護士 中村正樹

離婚調停に必要な書類まとめ

離婚調停申立書の書き方・様式例

離婚調停申立書については、裁判所webページに書式がアップロードされていますので、そちらを確認し、必要事項を記入します。

記入方法がわからない場合などは、裁判所の手続き案内窓口を利用することもできます。

戸籍謄本・収入証明・財産資料など

離婚調停の申し立てにあたっては、戸籍謄本が必要となります。

また、調停の進行に伴い、調停委員から収入関係の資料や財産関係の資料の提出を求められる場合があります。

年金分割のための情報通知書などの書類

離婚において年金分割を希望する場合には、年金事務所から年金分割のための情報通知書を取り寄せる必要があります。

収入印紙・郵便切手など費用関係

離婚調停の申立てには収入印紙(1200円分)と郵便切手(裁判所によって異なる)が必要です。

調停の合意内容(争点)のポイント

離婚そのもの

離婚調停は離婚を求める者が申し立てますが、相手方に離婚の意思がない場合には成立しません。

そこで、相手方の離婚の意思を確認し、離婚する意思がない場合には、なぜ離婚したくないのか等を確認し、離婚についてどうするかを双方の意向を確認しつつ話し合います。

親権・監護権の取り決め

離婚についてお互いが納得し、子どもがいる場合には、子どもの親権をどうするか、子どもをこれからどちらが監護していくかを話し合います。

養育費・面会交流の条件

子どもがいる場合には、子どもの養育費や、子どもと非監護親との面会についても併せて話し合いがされます。

財産分与・慰謝料など

財産分与、慰謝料の請求がされている場合には、双方の財産状況の確認や慰謝料を求める事情を確認し、話し合います。

婚姻費用との関係

別居し離婚までの間の婚姻費用を求める場合には、離婚調停と別に婚姻費用分担調停を申し立てる必要があります。

調停当日の対応と注意点

調停委員との接し方・態度

誠実に、冷静に話をすることが大切です。ご自身が伝えたいことだけではなく、今までに至る全体の流れがわかるように、時系列に沿って、具体的な事実を交えつつ説明すると、調停委員に言いたいことが伝わります。

証拠や資料の提示タイミング

証拠や資料は、必要な時に必要なものを提出することが肝心です。

また、提出の際には、裁判所提出用、相手方交付用、手元用の3部を用意しましょう。

詳細な提出方法は、調停委員にご確認ください。

感情を抑えた発言のコツ

相手の言動を非難するのではなく、自分がどう感じたか、という説明の仕方を意識すると、落ち着いて話ができます。

相手との対面を避けたい場合の対応

裁判所に対して事前に相談すると、待合室を離れた場所にする等の配慮をしてもらうことができます。

調停後の処理とフォローアップ

調停調書の法的効力

調停で合意した内容は調停調書にまとめられます。

これは確定判決と同一の効力を持ち、いわゆる強制執行が可能です。

離婚届提出の期限・必要手続き

離婚調停で離婚に合意し調停が成立し調停調書が作成された場合には、離婚日は調停成立日となります。

この場合には、調停成立日を含め10日以内に市区町村へ調停調書を添えて離婚届を提出する必要があります。

調停不成立後の裁判への流れ

離婚調停で合意ができず調停が不成立となった場合で、離婚を求める場合には、裁判所に対して改めて離婚訴訟を提起することとなります。

調停を有利に進めるために

弁護士に相談すべきタイミング

相手方と離婚について話し合いができない関係である場合には、速やかに弁護士に相談する方がいいといえます。

相手方と離婚について話し合いができる場合には、一旦相手に対して離婚したい旨を告げ、相手の対応を確認した上で、一度弁護士に今後の対応方針を相談するといいでしょう。

準備資料の整理と証拠提出の戦略

資料や証拠は、必要な時に必要なものを提出することを意識します。

提出を悩んでいる資料がある場合には、調停委員に提出したら審理のために有益かどうか、考えを尋ねてみるのもいいでしょう。

調停中にやってはいけないNG行動

調停において絶対にやってはいけないことは、嘘をつくことです。

また、相手を必要以上に非難することは、むしろ調停委員のあなたに対する印象を悪くすることがありますので、避けましょう。

離婚調停の期間と費用

申立てから終了までの平均期間

早ければ3か月程度で合意ができるケースもありますし、1年以上かかるケースもあります。

特に財産が多い等で財産関係が複雑な場合には、資料の提出や双方の主張の整理で時間が多くかかる傾向にあります。

家庭裁判所の調停費用・収入印紙等の費用

離婚調停の申立手数料として収入印紙1200円と裁判所に事前に納める郵便切手(1000円程度、裁判所によって金額は異なります)がかかります。

弁護士費用・相談費用の目安

弊事務所では初回相談料は無料となっております。

ご依頼の場合の弁護士費用については以下をご確認ください。

費用はこちら

よくあるQ&A形式のまとめ

子連れや親に付き添ってもらって調停に出席してもいい?

調停の待合室へは付添いの方も入ることができます。

調停室で調停委員と話す際には、原則として当事者本人と弁護士しか入ることができません。

ただし、乳幼児のお子様がおり、ご事情があり預けることなどが困難な場合には、調停室へ一緒に連れて入ることが許可される場合もございますので、事前に裁判所にご相談ください。

プライバシー保護・非開示申請とは?

住所等について秘匿として調停を申し立てることが可能です。

非開示申出書やその他手続きが必要ですので、申立前に裁判所にご相談ください。

合意内容の変更はできる?

いったん合意した内容については、一方の意思のみで変更することはできません。

ただし、事情が変更し、その内容が実態に合わなくなった場合等、双方が話し合い合意によりその内容を変更することは可能です。

調停記録・調停調書は今後どう保管?

調停調書の原本は裁判所に保管されます。

調停成立時に、謄本の申請について説明がありますので、指示に従い、謄本を取得して大切に保管してください。

謄本等については再発行が可能ですので、紛失・滅失してしまい、再発行を希望する場合には調停をした裁判所へご相談ください。

※本記事は弁護士中村正樹が執筆しています。