離婚訴訟とは?調停との違い・進行の流れ・費用・期間を弁護士が解説

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離婚訴訟とは?制度の概要と前提条件

離婚訴訟とは?法的な意味と役割

離婚訴訟とは、家庭裁判所に対して離婚を求める訴えを提起し、判決により離婚を認めてもらう手続きです。調停等での話し合いがまとまらない場合に活用されます。

調停前置主義とは?すぐに訴訟を起こせるのか

日本では、原則として先に調停を行う必要があります(調停前置主義・家事事件手続法257条)。
なお、調停をせずにすぐに訴訟を起こした場合には、訴訟提起自体が違法となるのではなく、通常は調停手続きを先に行うよう裁判所が職権で付調停(調停に付する)という判断がされます。

離婚訴訟と協議離婚・調停離婚との違い

協議離婚は夫婦の話し合いによる離婚、調停離婚は家庭裁判所の調停(裁判所での話し合い手続)により成立する離婚です。離婚訴訟は、調停でも合意できなかった場合に利用される、裁判による強制的な解決手段です。

離婚訴訟で認められる離婚理由とは?

民法770条に定められた離婚原因

民法770条1項は、離婚が認められる法定事由を5つ定めています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

性格の不一致では足りない?

単なる性格の不一致では通常、離婚は認められません。同居中の夫婦生活や別居後の状況等を踏まえ、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合に、離婚が認められます(民法770条1項5号)。

証拠が重要となる典型的ケース

裁判は証拠によって判断するため、相手方が事実を争った(事実を認めない)場合には、離婚を請求する側が、証拠により不貞行為やDVなどを立証する必要があります。
そのため、事実関係に争いがある場合には、客観的な証拠(写真、診断書、メール等)が極めて重要となります。

離婚訴訟の手続きの流れ

①訴訟提起(家庭裁判所へ訴状提出)

家庭裁判所に対し訴状や重要な証拠、付属書類等を提出して離婚訴訟を提起します。
離婚訴訟が提起されると、裁判所は訴状審査の後、訴状を相手方(被告)へ送付します。これにより訴訟が始まります(訴訟係属)。

② 第1回期日~

第1回期日で、訴状を陳述します。第1回期日については裁判所と原告で日程を調整するため、被告は出廷しないこともしばしばあります。
第2回目期日以降は原告と被告の双方が出廷し、双方が主張や証拠を提出しつつ、争点を整理していきます。

③ 証人尋問・本人尋問

必要に応じて、証人尋問や当事者本人の尋問が行われます。

④ 判決・和解

判決により離婚が認められるかが決まりますが、審理の途中で裁判官から和解の勧試がされ、和解により終了することもあります。

⑤ 控訴の可能性と注意点

判決の後、判決内容に不服がある場合には、控訴(高等裁判所への不服申立て)ができます。

離婚訴訟で争われる主な事項

離婚の可否

法律が定める離婚原因があるかが争点となります。

親権者の指定

未成年の子がいる場合は、どちらを親権者とするかが判断されます(民法819条2項)。

財産分与・慰謝料・年金分割

離婚とともに請求がある場合には、財産分与や慰謝料、年金分割請求についても審理されます。

養育費

離婚とともに請求がある場合には、養育費についても審理されます。

離婚訴訟にかかる費用と期間

訴訟費用(印紙代・郵券代)

請求内容により印紙代は変わりますが、離婚請求のみなら1万3,000円となります。
また、裁判所が郵送等に使う郵便切手代(又は郵便切手そのもの)を数千円程度予納する必要があります。

弁護士費用の相場

弁護士費用は事務所によりますが、着手金が20~40万円程度、報酬金が40~60万円以上になることが一般的です。

離婚裁判にかかる期間

内容や争点によりますが、1年以上かかることもしばしばあります。

離婚訴訟において弁護士への依頼が必要な理由

訴状の作成

離婚訴訟を起こすためには、訴状を裁判所へ提出する必要があります。
訴状は裁判所に対し、自分が求める内容とその理由(経緯や根拠)を伝える非常に重要なものです。
訴状において自分が伝えたいことを、裁判所にわかる形で伝えるために、弁護士は欠かせません。

法的主張、論点の整理

裁判所は法律に基づいて判断をするため、具体的な事実を法律上の主張として裁判所に伝える必要があります。
法律上の主張を裁判所に適切に伝えるために、弁護士は欠かせません。

離婚訴訟を避ける方法と和解・調停の活用

調停段階での歩み寄り

離婚については双方納得しているが、財産分与などで合意に至らない場合、訴訟になっても調停での最終的な和解案と同程度の内容となることがしばしばあります。
訴訟にかかる時間や精神的負担を考慮し、ご自身が納得できるところで合意することも一つの選択です。

裁判中の和解の選択肢

裁判の審理が進む中で判決について見通しが見えてきます。双方裁判に対する見通しが見えてくると、お互いに納得できる範囲での和解が成立することもしばしばあります。