調停委員にうまく伝わる話し方とは?離婚調停で役立つ“事実+アイメッセージ”の技術

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調停での「伝え方」が結果に影響する理由

調停は勝ち負けではなく合意を目指す場

離婚調停は、どちらが正しいかや、事実は何かを求める場ではなく、話し合いにより双方が納得できる合意点を見つけることが目的です。
そのため、まずは、自分の考えや希望を正確に調停委員に理解してもらうことが大切です。
また、なぜそのような考え(「離婚したい」など)に至ったのかをきちんと調停委員に理解してもらうため、具体的な事実についてもポイントを押さえて説明することが重要になります。
私が途中から依頼を受けて調停に加わったケースで、しばしば調停委員が事実関係等を正確に把握していないことや、一方の主張に流されているという印象を受けるケースがあり、このような事態を避けるためにも、うまく説明することはとても大切です。

調停委員は、事実と気持ちの両方を聞いている

調停委員は中立の立場で当事者の話を聞いています。
調停委員は、当事者との話を通じて、具体的にどのような事実があったのかや、その結果どうしたいと考えているのかという事実と気持ちの両面を確認していますので、自分の気持ちについても正確かつ簡潔に伝えることは合意形成のためにとても重要です。

調停で信頼を得るための事実の伝え方

感情を交えず「時系列の事実」を整理する

調停委員に事実を伝える事前準備として、押さえておくべき重要な事実関係を確認しておくことはとても重要です。
重要な事実関係を整理し、これを伝えておくことで、その後の説明がとても分かりやすくなり、調停委員の理解を得やすくなります。

調停では、結婚・大きな喧嘩・別居にいたる経緯を具体的に伝える

離婚調停で特にポイントとなりやすいことは、結婚、大きな喧嘩、別居に至る経緯等です。
離婚原因となる出来事(不倫や暴力など)があれば、早いタイミングで伝えましょう。
また、伝える際には、何年頃の話なのかを伝えることを意識しましょう。

「離婚したい」と思った理由を、できごとに基づいて説明する

離婚調停である以上、離婚したいと思った理由を伝えることは必須といえます。
離婚したいと思うに至った理由を伝えるにあたっては、そのきっかけとなる出来事を、離婚したいと考えるようになった出来事と、離婚や別居に至ることになった直接の出来事の2つを意識して伝えると、なぜ離婚したいと思ったのか、なぜ今離婚調停を申し立てているのかが分かりやすく調停委員に伝わります。

弁護士 中村正樹

「アイメッセージ」で感情と希望を伝えるコツ

「私はこう感じた」「私はこうしたい」で話す

事実関係や理由を伝えるにあたって1つだけ意識いただきたいことは、アイメッセージ(自分を主語にして話す)を使うということです。
例えば、相手にこう言われて私は傷ついた、私が育児をしていた、という風に伝えましょう。

相手を責める言い方(ユーメッセージ)との違いとは

相手が悪い、相手が育児をしなかったなどという言い方は、相手に対する非難のニュアンスをどうしても含みます。調停の席でこの発言を繰り返すと、だんだん話のポイントがずれていってしまい、相手を非難することに終始してしまい、実際に何があったのかということがうまく伝わらないことがしばしばあります。
実際、私がお客様とのご相談でご事情をお伺いする際も、相手の言動について熱くお話しされるあまり、実際に何があったのかという点がお話からは十分に分からなかったということもしばしばあり、私の方から追加の質問で事実関係を確認させていただくということがあります。

アイメッセージが調停委員の共感と理解を得やすい理由

アイメッセージにより調停委員に伝えることで、感情を穏やかに表現し、冷静に話をすることが可能になります。
そのため、調停委員にも事実やそのときのご自身の気持ちが伝わりやすく、結果的に希望や立場、経緯を調停委員に理解してもらうことが可能です。

伝え方で避けたいNGパターンとその修正例

「相手が悪い」と非難すると反発を招きやすい

相手を責める発言は、感情的になりやすく、またそれを聞く調停委員に対しても、婚姻中から相手を感情的に責めていたのではないかとの印象を与えかねません。
もちろん、相手方の非を明確に指摘すべき場合もありますが、その場合でも過去の事実の責任追及ではなく、過去の事実により自身が傷つき、そのために離婚を申し入れたとの自分を主体としたメッセージを発信すべきです。

事実を含まない話し方では調停が進まない

ご自身の感想や思いだけを伝えても、調停委員として判断に困る場合があります。具体的事実を交えて自分の思いを伝えることで、調停委員もよりあなたの思いを理解することができます。

事実+アイメッセージで落ち着いた対話に

例えば暴力を受けていたから離婚したいと伝えるだけでは、その状況は漠然とし過ぎてしまいますし、暴力をした相手に謝罪を求めたいと相手を非難するだけでは、離婚調停は進みません。
例えば、過去に暴力を振るわれたことを伝えるのであれば、時期、回数や頻度、暴力の内容等をあわせて伝えることで、実際の暴力の苛烈さが伝わります。
さらに、そのことに対してどのように対話を重ねてきたかをあわせて伝えることで、ご自身がどのように悩み、どうして離婚を決意したのかが、自分の思いだけを伝えるよりもずっと調停委員にも分かりやすく伝わります。

調停に向けた準備で押さえるべきポイント

時系列の事実をメモにして整理する

過去の出来事を時系列に沿って簡単にメモしておくだけで、事実の説明がスムーズに進みます。

感じたことを言語化する

自分の気持ちや希望についても、それぞれの出来事があった際にどう思ったのかを明確にしておくことで、調停の場で迷わず伝えることができます。

弁護士に相談しよう

不安や迷いがある場合には、弁護士に相談したり、弁護士に依頼し調停の場にて同席することもできます。
まずはご自身の置かれている状況をきちんと整理するためにも、弁護士事務所の無料法律相談のご利用をお勧めします。