【離婚と財産分与】対象・割合・タイミングまで徹底解説|弁護士が解説

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。



財産分与とは?基本の考え方

財産分与はなぜ行われるのか?

財産分与とは、夫婦の一方が婚姻関係の解消を原因として、離婚自体を理由として他方に対して財産的給付を請求することを言います。
法律上は民法768条1項に規定があります。

法律上の位置づけとその意義

財産分与は、夫婦が婚姻期間中に得た財産を清算する清算的財産分与、離婚後の相手の生計の維持を目的として認められる扶養的財産分与、慰謝料としての性格を持つ慰謝料的財産分与があります。
一般に二分の一ルールと呼ばれるのは、このうち清算的財産分与です。

財産分与の対象になるもの・ならないもの

共有財産と特有財産の違い

共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して得た財産をいい、財産分与の対象となります。これに対して、婚姻前から有していた財産や、相続・贈与により得た財産を特有財産といい、夫婦が協力して得た財産ではないため、原則として財産分与の対象とはならないと考えられています。(ただし、状況によりいろいろな考え方があります)

預貯金・不動産・保険・年金の扱い

婚姻中に取得した預貯金、不動産、保険などは共有財産として財産分与の対象となります。
厚生年金については、婚姻期間中に形成したものについては夫婦の共同で形成したものと考えられますが、年金分割という別の制度により処理されるため、財産分与という枠組みでは取り扱いません。

結婚前の資産や相続財産はどうなる?

原則として、婚姻前に取得した資産や、婚姻中であっても一方が単独で相続、贈与等により得た財産は特有財産として扱われ、財産分与の対象とはならないと考えられています。
ただし、婚姻前に取得したものであることや、相続・贈与により取得したものであることは、そのことを主張する側が資料等をもって説明(立証)する必要があり、立証がされない場合には共有財産と推定されると考えることが一般的です。

弁護士 中村正樹

財産分与の割合はどう決まる?

原則2分の1?

共有財産の財産分与については、原則として2分の1ずつ分与されます。ただし、財産の形成への寄与の度合い等により、例外的に割合が調整されることがあります。

寄与度に修正が生じる場合

他方の収入が一般的な家庭に比べて非常に大きい場合などに、寄与の実質に応じて割合が修正されることがあります。
ただし、寄与度の修正がされるのは、通常の家庭をはるかに超える財産形成を行った場合に限られるのが一般的です。

裁判所の実務の傾向

裁判所の運用としては、原則として2分の1であるというルールは非常に強く守られており、この割合が修正されることは例外的な状況です。

財産分与の方法とタイミング

協議・調停・審判の流れ

財産分与は離婚とともに協議することが多く、離婚と財産分与について合意ができない(財産分与について協議が整わず離婚に至らない)場合には離婚調停を申し立て、離婚調停の中で話し合いが行われます。離婚調停で合意ができず調停が不成立となった場合には、離婚を求める側が離婚訴訟を提起し、その附帯処分として財産分与の請求がされ、離婚の判決と併せて判断されます。
これに対し、離婚成立後に財産分与を決める場合には、当事者で協議で決めることも可能ですが、協議が整わない場合には家庭裁判所に調停を申し立て、調停での話し合いでも合意ができない場合には審判により決まります。

分与の実行時期(離婚前?後?)

財産分与は離婚とともに話し合いがされ、離婚と併せて決められます。仮に離婚時に財産分与について決めなかった場合には、離婚後2年以内であれば財産分与の請求が可能です(民法768条2項。ただし、令和6年改正により、令和8年5月までに5年に伸長されます)。

財産分与でよくあるトラブルと対処法

財産隠しが疑われる場合

財産を隠している疑いがある場合には、裁判所を通じた調査嘱託等により、開示を求めることができる場合があります(家事事件手続法62条、民事訴訟法186条)。

住宅ローンや借金があるときは?

住宅ローンが残っている不動産については、不動産の処理を含めて複雑になります。特に売却してもローンが残る状態(オーバーローン)の場合には、その取扱いを含めて検討が必要です。
借金については、原則として財産分与において考慮されますが、その借金の目的等により取り扱いが異なる場合があります。
また、両者に共通して、財産分与として債務者(借入をしている名義人)の変更をすることはできず、仮に住宅ローンを引き継ぎたいということであれば、別途金融機関に確認し借換等を行う必要があることに注意が必要です。

財産分与と慰謝料・養育費との違い

慰謝料と財産分与の重複はできる?

財産分与と慰謝料は別の性質となりますので、財産分与と慰謝料はそれぞれ別個に請求可能です。
なお、先ほど、財産分与に慰謝料的性質が含まれるとご説明しておりますが、現在の運用としては、財産分与に慰謝料を含めることはまれです。また、裁判等において財産分与と慰謝料の両方を同時に請求した場合には、当然にそれぞれが別のものとして取り扱われます。

養育費との関係は?

養育費は子の監護に要する費用であり、財産分与と性質が異なりますので、当然別個に請求が可能です。

財産分与に迷ったらどうすればいい?

弁護士に依頼すべきケース

財産額が高額であったり、財産の内容が多岐にわたる場合には、弁護士に依頼してきちんと整理した上で、的確に相手に請求することが大切です。

証拠の集め方と交渉のコツ

財産分与については、預金口座や証券口座の所在、不動産の固定資産税納付書等について、事前の情報収集が非常に重要です。
また、財産分与の話し合いにおいては、感情的な話は避けて、夫婦の財産を確認し整理して主張することが肝要です。

まとめ|後悔しない財産分与のために

財産分与は、夫婦で協力してきた生活の総決算という性質もあり、法的な知識や冷静な対応が常に求められます。
ご自身が財産分与で不利にならないように、事前の情報収集や弁護士の助言を活用しましょう。