【離婚と公正証書・調停調書】よくある誤解を解消!法的効力・使い分け・費用を弁護士が解説
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公正証書と調停調書とは?基本の役割と違い
そもそも「公正証書」と「調停調書」とは?
公正証書は、公証役場で公証人が作成する文書です。一方、調停調書は家庭裁判所において調停が成立した際に裁判所により作成される文書です。
どちらも「合意内容を記録する文書」だが、作成主体と場が異なる
公正証書は当事者が公証役場に依頼して任意に作成するのに対し、調停調書は調停成立という裁判手続きの結果として裁判所が作成します。作成の場と関与機関が異なります。
離婚後のトラブルを防ぐ上で、いずれも重要な役割
いずれの文書も、将来的な養育費不払いなどのトラブルを予防し、証拠として活用できる点で重要です。
よくある誤解|調停が成立したら公正証書を作る必要がある?
調停調書には公正証書と同等以上の法的効力がある
調停調書は裁判所作成の文書であり、確定判決と同一の効力を有します。
誤解を恐れずざっくりとした説明をすると、公正証書より強い文書といってもいいでしょう。
調停調書が作成されたら、公正証書を別途作成する必要はない
調停が成立すれば、裁判所が調停調書を作成します。この調書には強制執行力があります。
しばしばお客様からご質問を受けますが、調停で離婚やその他合意が成立した場合には、その内容について裁判所が調停調書として作成し、これにより強制執行が可能であるため、別に公正証書を作成する必要はありません。
調停後に公正証書を作成するのは例外的ケース(再合意・未記載項目等)
調停成立後に内容を変更する場合や、調停では扱わなかった項目について、後日公正証書を作成することは可能です。
どこで誰が作成する?手続きと関与機関の違い
公正証書は公証役場で公証人が作成
当事者が内容を持ち込み、公証人がその内容を確認・整序して文書化します。
調停調書は家庭裁判所で調停委員が関与し作成
家庭裁判所での調停手続の中で、当事者間の合意が成立した場合に、裁判所が調停調書を作成します。
利用方法の違い
公正証書は当事者が内容に納得している場合に、公証役場に依頼して公正証書という形に残す手続きです。
これに対し調停調書は、そもそも当事者で内容について合意ができていない場合に調停手続きを利用し、調停での話し合いの場で合意ができた場合に裁判所が作成するものであり、想定している状況や利用方法が異なります。
何が決められる?対象事項の違いと限界
公正証書は当事者の合意で作成
公正証書は、当事者の合意に基づき公証役場にて公証人が作成しますが、公共の福祉に反する等の例外的な事情がない限り、当事者の希望をできる限り反映した内容を作成できます。
調停調書はあくまでも調停手続きの中で裁判所が作成
調停調書は裁判所作成の文書であり、申し立てられた調停手続きの中で作成されます。
そのため、該当する調停手続きと無関係な合意は、当事者が希望しても、裁判所の判断で調書には記載しないことがあります。
典型的な例としては、婚姻費用分担調停の調停調書において面会交流に関する内容の記載を希望しても、関連性がないとして記載されないことがあります(裁判官の判断で対応が異なる場合があります)。
面会交流など強制執行の実効性に差が出る
公正証書による強制執行の対象はお金に関することに限られます。これに対して調停調書の場合は、(その文言、内容によりますが)面会交流などの非金銭債務についても強制執行が行えます。
強制執行力の有無とその違い
公正証書は「執行認諾文言」が必要
金銭の支払いについて強制執行可能とするには、「強制執行認諾文言」が文中に含まれている必要があります。
調停調書は当然に強制執行力を持つ
調停調書には裁判所の関与により当然に執行力が認められます。
ただし、文言の定め方により、強制執行ができない場合があります。
どちらも養育費不払い等への対応が可能
いずれの文書に基づいても、支払義務に違反があれば、給与差押え等の強制執行が可能です。
どちらを使うべき?ケース別の選び方
話し合いで合意できているなら公正証書が適する
当事者間で協議が整っている場合、迅速に合意を文書化できる公正証書が便利です。
合意ができていない場合は調停
直接交渉が困難な場合は、第三者(調停委員)の関与がある調停手続を選ぶことで解決が図りやすくなります。
弁護士に依頼するかどうか
交渉や調停をスムーズに進めたい場合は、弁護士の関与を検討すべきです。
弁護士に相談するメリットとタイミング
内容の適正チェックと不利益回避の助言
条項の内容次第で将来の紛争リスクが異なる場合があります。漏れや抜けを回避するためにも弁護士に相談することは大切です。
なお、細かな文言については、公正証書は公証人が、調停調書は裁判所が主体となって作成しますので、内容が決まれば、それぞれ適切な文言により作成してもらえます。
早めの相談がトラブル防止・負担軽減に繋がる
離婚条件の検討段階から弁護士に相談しておくことで、後悔のない合意形成が可能となります。